スカッシュ鶏


「私、さっぱりしたいの。分かる?」


風呂上り。濡れたをタオルで拭いた奏恵は、黒のキャミソールに通気性の良いショートパンツ姿で、食卓に偉そうに座り込んで言い放った。


これがただの嫁なら、"ひやむぎ"で義彦は済ませるだろう。しかし目の前にいるのは夫であるはずの自分を完全に敷物にしている奏恵という女なのだ。


気を揉むのは嫌いではないが、ここで慎重に考えるのは骨が折れる。


ふと、大学の講義で習った"ゲーム理論"を義彦は思い出す。


経済学の話だ。自分にとって最も利得となる動きをするために、相手の行動を何通りか予測したりと、いわゆる"先読み"の話。体育会系で勉強が苦手だったうえ、経済が専門ではない義彦からすればちんぷんかんぷんである。


…その時から、"人生は打算ではなく人情で生きるもの"と思うようになったのだろうか?否、それよりも前に柔道部はそういう男の集団だったからだろう。



ここで義彦は、奏恵に何を作ってやれば喜ぶか、”夫婦としての経験”に裏打ちされた経験という名前の理論で考える。


まず、ビールはあまり奏恵は飲まない。そもそもハイボールが好きだし、汗が酒臭くなるのが嫌なのであまり風呂上りに飲みたがらない。


そして、"炭酸水"。最近は美容に良いと言うそうで、奏恵は好んで飲んでいる。



単純な義彦は、ここで考えるのをやめた。


そして"炭酸の持つ効果"に気づいたのであった。


__________


*スカッシュ鶏


材料(2人分):

鶏もも肉…300g

塩コショウ…5ふり

すだち…2個

ポン酢…小さじ2杯

鰹だし(ミツカン追いがつお2倍濃縮)…大さじ1杯

炭酸水…150㏄


道具:

蓋つきフライパン

袋(小さいビニール袋を推奨)

包丁

まな板


※すだちはレモンで代用可。使用する場合は1個で。


__________


「奏恵ちゃん、炭酸水使っていい?」

「いいけど…、炭酸水で何するのよ?」


「鶏肉を蒸し焼きにする。」


「あっそう…。って、炭酸水じゃなくてもいいじゃない。」


奏恵が言うのも無理はないんだが…


「炭酸は肉を柔らかくするんだ。」


__________


*作り方

①鶏もも肉は一口大に切っておきます。

②下ごしらえした鶏もも肉に塩コショウをまぶし、袋に入れてよく揉んでください。

よく揉んだら、すだち1個半を絞ってまたよく揉み、5分間寝かせます。

③漬け込んだ鶏もも肉を温めたフライパンに入れ、炭酸水、ポン酢、鰹だしを注ぎ蓋をして蒸し焼きにし、様子を見ながら裏返したりをして竹串が詰まりなく貫通するようになれば完成です。すだちを絞ってお召し上がりください。

__________


「肉の軟らかさと、塩がきいてるのにすだちの渋みと酸味があって美味しいわね。それに蒸し焼きだから脂っこくなくて食べやすいわ。」


奏恵は、満足そうであった。



「ところで、すだちって絞る以外に使い方あるの?」

「無いと思った方がいいな。ただ絞れば万能だ。」


焼きさんまに絞るのはポピュラーだが、徳島の人は徳島ラーメンにも絞ったりする。レモンの酸味ほど酸味っぽくなく、少し渋みも入っており料理の味を邪魔しない。


「"おはしカルボナーラ"にも、絞ったら美味しいそうだ。」

「想像できないわね。」


意外とチキンラーメンに絞っても美味しい(実話)


これをみた読者の方も是非、すだちをお試しあれ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る