第二十七話 妖を宿す宝器
撫子達は、宝器を手にする。
そして、七大将軍も。
七大将軍が手にした武器は、なんと、宝器だ。
全員、宝器を所持していたようだ。
「あれは、全部、宝器なんだな」
「うん。昔、皇城家から贈られたものらしいんだ。あの宝器は、代々帝と将軍に受け継がれてきたんだよ。この宝器のおかげで西の都は、滅ばずに済んだらしいんだ」
「そういう事か」
彼らの武器を目にした柚月は、それが、宝器だと一目で見抜き、朧が、説明する。
なんと、昔、皇城家から贈られたらしいのだ。
現在、西地方で宝器を手にしているのは、帝と七大将軍のみ。
だが、その宝器は、協力であり、聖印能力がなくとも、妖を退けることができる。
ゆえに、西地方は、滅びることなく、今日まで、栄え続けてきたのだ。
朧の説明を聞いた柚月は、納得していた。
「行きましょか、みなさん」
「はい!」
撫子達は、構える。
妖達は、唸り声を上げ、撫子達をにらみつけていた。
それでも、彼らは、動じることはない。
やはり、それほどの実力があるようだ。
「皆、帝に続け!」
濠嵐の号令の元、七大将軍が、地面を蹴り、一気に妖達と距離を縮める。
妖達は、濠嵐達へと向かっていき、襲い掛かろうとしていた。
「こいつらが、あたしの獲物のようだな。全員、皆殺しだ!」
先陣を切ったのは、意外にも、春見だ。
春見が握りしめている宝器は、薙刀。
名を
そして、春見は、水無月を勢いよく振り回し、妖達を薙ぎ払っていた。
「おらおらおらぁ!!」
春見は、威勢よく、薙刀を振り回し、妖達を切り裂いていく。
だが、彼女の実力は、これだけではない。
春見は、水無月の力を発動すると、なんと、水無月から、巨大な金魚が現れたのだ。
これこそが、春見が発動できる技・
水無月から、巨大な金魚を召喚し、妖を討伐していく技であった。
金魚は、妖達を丸呑みし、消滅させた。
「春見は、おっとこ前だねぇ。真似できないよ」
金魚と共に豪快に妖達を討伐していく春見を見て、篤丸は、やれやれとあきれた様子を見せている。
あの豪快さは、男よりも、たくましいが、女性らしさにかけてしまう。
それゆえに、あきれていたのだろう。
最も、そのことに関しては、春見は、気にしていないのだが。
篤丸が手にしている宝器は、大幣。
その名は、
篤丸は、挑発するかのように、月光をひらひらと動かした。
「はいはい、僕は、ここだよ。来るなら、来なよ」
篤丸は、本当に、挑発しているようだ。
挑発された妖達は、怒りを覚え、篤丸に襲い掛かっていく。
だが、篤丸は、すぐさま、技を発動し、月光から、空懸ける馬が召喚された。
技の名は、
その名の通り、月光から空懸ける馬を召喚し、妖を討伐していく技だ。
篤丸は、馬に乗り、馬は、駆けていき、妖達を蹴散らしていった。
「いざ、推して参る!」
続いて、満英が、拳一つで、妖達を吹き飛ばしていく。
彼が見に着けている籠手こそが、宝器だ。
その名は、
重く頑丈だが、満英と相性がよく、次々と妖達は、吹き飛ばされていった。
「どうした!お前達の実力は、こんなものか!」
満英が、いつにも増して、声を荒げる。
まるで、人が変わったかのようだ。
だが、満英は、真の力を発揮していない。
まだ、技を発動していないのだ。
挑発された妖達は、一気に、満英に攻め込むが、ここで、満英は、不知火から、鳳凰を召喚する。
これこそが、満英が発動できる技・
不知火から鳳凰を召喚し、妖達を討伐することができる技。
満英にとっては、鳳凰はよき相棒と言ったところであろう。
鳳凰は、空を駆け抜け、炎で妖達を焼き殺した。
「君達が、僕の相手ですね……」
藤代は、ぼそりぼそりと呟くが、その目は、殺気を帯びている。
まるで、暗殺者のような目だ。
それもそのはず。
藤代は、暗殺を得意としているのだ。
それゆえに、藤代は、息をひそめて、短刀で、妖達を切り裂いていく。
彼が、手にしている短刀の名は、
藤代は、襲い掛かろうとする妖に対して、護摩木を突きつけた。
「覚悟しておいてください……」
藤代は、ぼそりと呟くと、技を発動し、護摩木から、蜥蜴が召喚された。
その技の名は、
護摩木から、召喚された蜥蜴は、暗殺のごとく、一瞬で妖達を討伐していくことができるのだ。
大群の妖を相手にしても。
それゆえに、藤代にとっては、相性が良かった。
「ほらほら、どうしたの!?早く、逃げないと、俺に殺されちゃうよ?」
蛍は、余裕の笑みを浮かべながら、くないで妖達を切り裂く。
くないの名は、
重さは、軽いほうではあるが、殺傷能力は上級だ。
ゆえに、蛍は、軽々と舞うように、妖達を切り裂くことができた。
「ふーん、逃げないんだ?じゃあ、しょうがないね」
逃げることなく襲い掛かる妖達に対して、蛍は、仕方がないかと残念そうにつぶやく。
だが、言葉とは裏腹に表情は、楽しそうだ。
蛍は、技を発動し、金木犀から、多数の蝶を召喚し始めた。
技の名は、
金木犀から多数の蝶を召喚した後、蝶が妖達を食べつくす技だ。
しかも、一瞬で。
召喚された蝶達は、妖達を食べつくし、消滅させた。
「ふん、こんな雑魚相手、僕一人で十分だったんだけどね」
世津は、嫌味を言ってのける。
それは、撫子達に対してなのだろうか。
今、撫子達は、交戦中の為、世津の言葉を聞いていたかは、定かではない。
それでも、世津は襲い掛かる妖達に対して、弓矢を放つ。
彼が持つ弓矢の名は、
世津の命中率は百発百中だ。
飛ぶ妖でさえも、正確に射抜くほどに。
「でも、仕方がないから、手伝ってもらうよ」
次々と妖達を矢で射ぬく世津だったが、それでも、妖達は、召喚し、世津の前に現れる。
世津は、ため息をつきながら、寂光土から大蛇を召喚した。
これこそが、世津が、発動できる技・
寂光土から召喚された大蛇は、薙ぎ払い、妖達を切り裂く力を持つ。
そのため、世津は、妖達を距離を保って、弓矢で妖達を射抜くことができたのであった。
「ここは、通さんでごわす!」
濠嵐は、刀を手にし、次々と妖達を切り裂いていく。
彼が持つ刀の名は、
七大将軍の中で彼だけが、宝刀を手にしていたのだ。
妖達を討伐してく濠嵐であったが、それでも、妖達は、すぐさま、召喚されてしまった。
「まだ、来るか。いいでごわす!かかってこい!」
召喚されても、濠嵐は、ひるむことなく、構える。
そして、濠嵐は、日輪から、獅子を召喚したのであった。
それこそが、濠嵐が、発動できる技・
獅子から、獅子を召喚し、獅子が、容赦なく妖を切り裂いていく。
獅子の上に乗った濠嵐は、獅子と共に駆け抜け、妖を切り裂いた。
一気に討伐されていく妖達であったが、ついに、撫子の前に、妖達が召喚されてしまったのだ。
彼女を守ろうと、前に出ようとする柚月と朧であったが、ここで、撫子が、二人を制止させる。
彼女の宝刀である
「もう一度、やりましょか?」
撫子は、すぐさま、技を発動した。
すると、神薙から、あの龍が召喚されたのだ。
技の名は、
撫子が、舞を踊り、神薙から龍を召喚する技だ。
その龍は、妖達を吹き飛ばしながら、討伐していったのであった。
「これが、帝と七大将軍の実力……」
「やっぱ、何度見てもすごいよ……」
柚月達は、撫子達の戦いぶりを目にして、圧倒されている。
各々が、強いからだ。
もし、これで、連携をとったら、さらに脅威となるであろう。
「しかも、妖を宝器に封じ込めていたとは……」
柚月は、初めて、妖が宝器に封印されていた事を知る。
それほど、彼らの宝器は、特殊だったのだ。
彼らは、聖印一族ではない。
ゆえに、強力な力が必要であった。
そのために、皇城家から妖が封じ込められている宝器を授かったのだ。
だが、その妖を扱うには、強い力を持つ者がい必要である。
そうでなければ、逆に妖に命を奪われてしまうからだ。
撫子達は、それほど、強い力を持っているということになる。
柚月は、改めて、彼らの強さを思い知らされた。
「兄さん、俺達も!」
「ああ」
柚月も、朧も、再び、地面を蹴り、妖達へと向かっていく。
何度も、妖を切り裂き、何度も妖が召喚されたが、撫子と七大将軍達の圧倒的な力の前に、妖達は、なすすべもなく、討伐され、ついには、妖達が召喚されることはなくなったのだ。
そうとなれば、妖達を一気に討伐できる。
柚月と朧は、連携を取り、妖達を光と炎で討伐したのであった。
こうして、妖達は、全滅し、柚月と朧は、怪我を負うことなく、聖印能力を解除することができたのであった。
「全部、倒せたみたいだねぇ、良かった良かった」
「ちっ。まだ、殺し足りないんだがな」
「こ、これ以上は、困りますよ……」
篤丸は良かったとつぶやき、背伸びをし始める。
だが、春見は、まだ、殺し足りないと舌打ちをするのであった。
そんな春見に対して、藤代は、困惑した様子で、反論した。
「何はともあれ、一件落着ってところ?」
「そのようだ」
「まだだよ。まだ、終わりなわけないでしょ?」
蛍は、戦いは終わったのか確認するように尋ね、満英は静かにうなずく。
だが、世津曰く、まだ、戦いは、終わっていないようだ。
何かを感じ取っているのだろうか。
「帝」
「わかってます」
濠嵐が、撫子を呼び、撫子は、うなずく。
どうやら、二人も、まだ、戦いは終わっていないと感じているようだ。
「そろそろ、出てきたら、どうです?もう、知ってますよ。あんさん方が、妖を召喚した事は」
撫子は、目を細めて、じっと前を見据える。
だが、撫子の視線の先には、誰もいないはずだ。
そう思っていた柚月達であったが、突如、術が発動され、何者かが姿を現した。
「お前は……聖印寮の人間か!?」
柚月は、驚愕する。
なんと、彼らの前に現れたのは、男性隊士だ。
だが、撫子の紋を身に着けていない。
しかも、聖印一族の人間ではないらしい。
つまりは、この男性は、聖印寮の人間であり、一般隊士であった。
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