第4話 新たなる仲間
「アナベル様。ケニヤやセネガルに行くなら案内をつけるし、ケニヤ、セネガル政府や軍に通達しておく」
何か決心するアルミン。
「本当ですか?」
目を輝かせるアナベル。
渋々うなづくアルミン。
「それは心強いです」
破顔するツアーロとギルム。
指を鳴らすアルミン。
部屋に入ってくる数人の男女。
「Tフォースや魔術師協会の隊員も混じっているみたいね」
海江田がスペイン軍兵士や黒人がいる事に気づく。
「ここにはフランス軍だけでなくセネガル人技術者もいる。魔術師協会やTフォース支部もある」
アルミンが答える。
「Tフォース支部に赴任しているスペインのアルバロ・デ・バサンと融合するパブロ・ミチェリオです」
スペイン人将校は名乗った。
「確かアルバロ・デ・バサンはイージス艦だよな」
あっと思い出す香川。
「はい。そうです」
後ろ頭をかくパブロ。
「え?」
香川がタブレットPCで画像を見せる。日米のイージス艦と違い船橋とイージスシステムを収めた機器がある構造物が分かれた構造をしている。だから船橋の後ろに仏塔のような構造物にシステムが収まっている。
「それは心強い」
目を輝かせるツアーロとギルム。
「フランスから来ましたライエンとマドレスです」
男女のフランス人将校が名乗った。
「ミラージュ戦闘機とユーロファイター2000戦闘機だ」
ツアーロが目を輝かせる。
「私はベレッタ」
フランス人女性保安官が名乗る。
「フランスの巡視船で沿岸警備隊チームに入っているのを聞いている」
香川がわりこむ。
「私は南太平洋の異変で一緒になった」
うなづくベレッタ。
「私はべノワ。魔術師協会支部に赴任しています」
黒人女性が名乗る。
「あなたは客船と融合しているのね。船名は「シーボーン・ソジャーン」シーボーンクルーズは超高級クルーズで有名だし、その中の「シーボーン・レジェンド」は映画「スピード2」に出た事で有名よ」
それを言ったのはアナベルである。彼女は画像を見せた。
シーボーン・ソジャーン。
シーボーン・オデッセイ級の2番船で、二〇〇九年六月、イタリアのマリオッティ
造船所で竣工。六月二十四日にヴェネツィアで行われた命名式ではデビュークルーズの乗船客全員が命名者となり、就航した。
客室数は二二五室でオールスイート、うち九〇%はベランダ付きである。
その後同型の二番船が二〇一〇年、三番船が二〇一一年に建造された。
「私はこの二隻の客船を探しに来たの」
べノワは写真を出した。
「この二隻は上陸部隊を連れてやってきた」
あっと声を上げる香川とギルム。
「ホーランドラインが所有するフォーレンダムと中国のスカイ社が所有するゴールデン・エラと融合しているのがこいつ。呉燕鄭がゴールデンエラでアメリカ系中国人。フォーレンダムがステニスというアメリカ人。二人とも運び屋で武器商人でもあり部品買いや人買いもやる連中よ。リベルタに何回も出入して武器取引をしているから調査していた」
ベノワは説明した。
「我々サルインの税関も何度もその名前が挙がっていて捜査していました」
フラムがわりこむ。
「警察も中国人運転手と中国の貨物船の動きを捜査していました」
カルルがあっと声を上げる。
「僕達も海保と協力して金流芯達を調査していました」
ギルムがわりこむ。
「つながったわね」
ベノワがうなづく。
「俺達は時空の亀裂の原因になるエネルギー放出があったから調査していた」
エンリコが名乗り出る。
「原因はリベルタです」
フィンが答える。
「物流の動きから補給路を断てるかもしれない」
ひらめく香川。
「え?」
「リベルタは内陸国だ。補給路も陸揚げして車両を使わなければ補給できない。それに空からは航空機を使う。ただ大量に輸入ができない。補給を絶てば当然士気は下がる」
海図を出して説明する香川。
「中国軍は補給路を断たれて士気が落ちてすごくやる気がなくなった」
海江田がふと思い出す。
「それはどこの軍隊もそうだろう。補給路は生命線だ」
パブロは納得する。
「自衛隊は飛び石作戦で中国軍の補給部隊を襲って作戦指示書や補給をけっこう奪ったんだ。カメレオンも同様に士気が落ちた」
香川は海図の航路を指でなぞる。
「それならその作戦は有効だろう」
うなづくアルミン、マドレス、ライエン。
「戦車は戦闘機の攻撃の的になる。巨大戦車の子分戦車を攻撃してみる価値はあるな。光線の他にどんな攻撃をするのかが見えてくると思う」
ライエンがうなづく。
「そうすると周辺国の協力が必要ですね。アフリカだけでいい」
難しい顔をするギルム。
「それなら臨検や捜索をかけて中国人運転手やバイヤーやブローカーを逮捕してしまっても有効だろう。フランス政府にかけあってみる」
アルミンはポンと手をたたく。
「それならセネガルやガボン、コンゴ政府にコネがあります」
それを言ったのはヴィドである。
「私もガーナやアンゴラ、南アフリカ政府にコネがあります。部品も調達できます」
ハザリがひらめく。
「ここは古代遺跡に行くチームと海上で臨検や検査するチーム。戦車に威力偵察をするチーム。アフリカ各国の政府にかけあうチームに別れよう」
アルミンは言った。
ヘリポートに出てくる香川達。
フランス軍のヘリコプターが着陸する。
「さすがに自衛隊と米軍のとは違うな」
香川と海江田がうなづく。
「これはNH90だ。NATOの汎用ヘリコプターである」
アルミンが答えてタブレット端末を渡す。
香川と海江田はタブレット端末でNH90の説明やスペックをのぞく。
「アナベル様。気をつけて行ってください」
ヴィドは笑みを浮かべる。
「行ってきます」
ハグするアナベル。
はにかむヴィド。
「軍事作戦は初めて?」
マドレスが聞いた。
「訓練や演習は参加したのですが実戦は初めてです」
ツアーロはうなづく。
「イラクやシリアの作戦に参加した事がある。そこにはカメレオンはいないがイスラム過激派の拠点を空爆していた。今回はカメレオンの巨大戦車と子分戦車の群れだ」
ライエンはイラクやシリアの地図を見せる。
「本当なら特命チームに参加している戦闘機と戦闘艦のミュータントに参加してもらいたいけど太平洋にいるじゃ無理ね」
マドレスが口をはさむ。
「自分達でやるしかないですね。パイロットや残存兵力があればいいのですが」
視線をそらすツアーロ。
「だからコンゴ、ガボンや周辺国に妙な通信がないか協力してもらっているし、フィンも連れていく。
パブロがわりこむ。
ツアーロはうなづくと輸送ヘリに乗り込む。
エンリコ、海江田、フラム、カルルとアナベルは二機目の輸送ヘリに乗り込む。
香川、ギルム、パブロ、ベレッタ、ベノワが三機目の輸送ヘリに乗り込んだ。
一時間後。
アナベル達を乗せた輸送ヘリはセネガルのヴェルデ岬上空を飛んでいた。
セネガル共和国は西アフリカ、サハラ砂漠西南端に位置する共和制国家。北東にモーリタニア、東にマリ、南東にギニア、南にギニアビサウと国境を接し、ガンビアを三方から囲んでいる。西は大西洋に面する。首都はダカール。フランスと関係が深く、フランコフォニーに加盟している。
首都ダカールはかつてのパリ・ダカール・ラリーの終着点として知られている。また、領域にアフリカ大陸最西端のヴェルデ岬を抱えている。
カルルとフラムは揺れる機内で古代遺跡のパンフレットを見ている。
「ニュース速報を見たけどアフリカでの出来事だと思われている」
不満を言うアナベル。
衛星TVで各国のニュースを見たが巨大戦車の事はアフリカの西海岸だけ。ヨーロッパやアジア、アメリカやカナダ、ブラジルではやっていない。
「どこの国も複雑な事情を抱えていたりするからみんな巻き込まれたくないだけ。尖閣諸島の戦いでもそうだった」
海江田が遠い目をする。
「日本の立場は私達だってわかっている。大西洋の向こう側にあるアメリカはアフリカには無関心。スレイグが関心を持っているのは発掘される宝石だけ」
不満をぶつけるカルル。
「ここで負けたらアフリカ大陸がカメレオンの巣にされてしまう。それだけは防ぎたい」
何か決心するフラム。
「そんな巣にされてたまりますか。駆除するわ」
アナベルは視線を空に移した。
同時刻。ギニア湾
ギニア湾は、西アフリカ中央部にある大湾。ニジェール川、ヴォルタ川、コンゴ川などが注ぎ、湾内に緯度0度・経度0度の交差点がある。沿岸部ではかつて、ヨーロッパとの貿易商により奴隷・金・象牙・穀物などが取り引きされた。一九八〇年代に石油資源が発見され、以後盛んに開発が行なわれていた。
ギニア湾海域に接近するスペインのイージス艦「アルバロ・デ・バサン」その艦橋ウイングから顔を出す香川、ベレッタ、ギルム、ベノワ。
小島の島影に隠れるアルバロ・デ・バサン
「いろんな船舶がいるな」
香川が感心する。
航行する船舶の中に中国船もいるだろう。それよりも協力してくれる艦船や船舶がいれば一隻でも戦力はほしい。
「二十キロ先のナイジェリアの港に中国船と港外に運び屋の客船二隻がいる」
パブロが報告する。
「金流芯一味も一緒にいそうだ」
ギルムがつぶやく。
「中国船のいる場所には常に海警船がいる」
パブロがわりこむ。
「近づいて捕まえましょ」
ベノワは身を乗り出す。
「そのまま行けばワナがあるわ」
鋭い声に振り向く四人。
船体ごと向きを変えるパブロ。
接近してくる大型客船二隻と艦船二隻とイタリアの巡視船がいた。
「リヨン」
ベレッタが声を上げた。
「イザベラとイレーヌじゃん」
ベノワがあっと声を上げる。
「知り合い?」
香川、ギルム、パブロが声をそろえる。
「僕はリヨン。沿岸警備隊チームに入っている。今回はアフリカの内陸国で大量の上陸艇を購入しているというウワサがあって捜査していた」
リヨンが名乗った。
「私はイザベラ、妹のイレーヌ」
クリスタル・シンフォニーは妹のセレニティを紹介した。
「ナイジェリア軍のコリントです」
「南アフリカ軍のマービンです」
フリゲート艦「アラドゥ」「ヴォラー」が名乗った。
「シンフォニー。ここにいない飛鳥Ⅱと一緒のアルビノの三姉妹なんだ」
プロフィールを見て驚く香川。
クリスタルシンフォニー。全長二三八メートル。五万総トン。
クリスタルセレニティ。全長二五〇メートル。六八〇〇〇総トン。
飛鳥Ⅱと融合するケインとこの二人は三姉妹。飛鳥Ⅱが日本郵船が所有で横浜船籍になっていて日本やアジアを中心にクルーズを行っている。妹二人はクリスタルクルーズ社の所有である。元は日本郵船の子会社だったクリスタルクルーズを香港の船会社に売却したが質の高いサービスを提供している。
「私達はTフォースの依頼でこの中国客船を追っていた」
映像を見せるシンフォニー。
「中国の船会社スタークルーズの所有する
「スーパースターヴァーゴ」がアフリカにいるのか?」
声をそろえる香川とパブロ。
送信してきた画像に上海の港でフォーレンダム、ゴールデン・エラ、ヴァーゴが一緒にいる映像やコンテナを渡す映像があった。
「その三隻は傭兵を集めていた。そのお金はマネーロンダリングしていくつかの国を経由して中国企業に支払われている」
コリントは不透明な帳簿を送信した。
「北朝鮮を囮にしたり詐欺グループを使って大規模な詐欺をやらせていたのはこの三人が原因だ」
マービンがいくつかの映像を出す。
「裏で手を引いているのはリベルタにいるこいつ」
ダーラムの写真を送信するセレニティ。
「そいつはクーデターを二年前に起こした。彼はエトス大統領を国外追放して自分が大統領になった。彼の一族は政府高官や財界に多くのコネを持っている」
マービンが説明する。
「だから上陸艇や傭兵をたくさん集められたんだ」
納得する香川達。
「この一族は中国政府の高官にサブ・サンを紹介しているし、歴史的な事件や戦争にも関わっているしその時の権力者に時空侵略者を紹介したり時空遺物の捜索をそそのかしている」
ベノワがわりこむ。
「南アフリカ政府もナイジェリア政府も不思議に思ったから俺達が派遣された。パンサーアイに参加したい」
マービンが声を低める。
「参加する船は多い方がいいわ」
ベレッタがうなづく。
「なんで内陸国で最貧国で失敗国家のリベルタがあんな兵力と武器を手に入れて巨大戦車がやってきたのか。それはダーラムがサブ・サンの仲間か他の時空侵略者を入れたにちがいない。ダーラムの仲間には大金持ちや大企業の社長もいるし政治家もいる」
コリントが説明した。
「だから今、中国船を断ったり、中国人運転手や労働者を拘束しているし、口座を凍結したりしているんだ」
マービンが口をはさむ。
「巣なんか作られてたまるか」
コリントがたんかをきる。
「港がない内陸国が海路を絶たれると大量に補給も輸入もできない。陸路が先細りになれば輸入が少ない空路に頼るしかなくなる。空港を整備したとしても空爆されれば使えなくなる」
マービンが自慢げに言う。
「でもワナがあるってなんでわかる?」
ギルムが聞いた。
「ゴールデン・エラとフォーレンダムは中級の魔術師の資格を持っているけどヴァーゴはかなりの高レベルの魔術を使う。魔法陣を航路に仕掛けておくのが得意なの。引っかかると魔物や仲間がやってくる。金流芯だってやってくる」
シンフォニーが説明する。
「なるほど」
香川、ギルム、パブロが納得する。
「臨検を明日やるんだ。国連軍の軍服を貸すよ」
コリントが言った。
その頃。
アナベル達を乗せた輸送ヘリはストーンサークル群が見える空き地に着陸した。
機外に降りるアナベル、海江田、カルル、フラム、エンリコ。
「セネガンビアのストーンサークルに手がかりがあればいいわね」
周囲を見回す海江田とカルル。
アナベルはストーンサークル群に足を踏み入れる。
世界遺産のセネガンビアのストーン・サークル群は、セネガルとガンビアの両国にまたがる、紀元前三世紀~紀元後十六世紀に亘り造られた集団墓地である。西アフリカのガンビア川沿いには、一〇〇〇以上もの石柱が、長さ三五〇キロメートル、幅一〇〇キロメートル渡って広がっており、ストーンヘンジなどのように巨大な建造物ではないが長い年月を経て造られた神秘を感じられるスポットだ。
世界遺産のセネガンビアのストーン・サークル群で最大の大きさを誇るものは、ガンビア共和国にあるワッス周辺にある五二の環状列石で、一〇〇〇を超える巨石が使われている。セネガンビアのストーン・サークル遺跡群は、大きさ、密度、複雑さにおいて世界的にも類がなく、独特の広大な景観の中に高度な石工文化を伝えるものとして、二〇〇六年に世界遺産に登録されている。
対象となっているのは、シネ・ンガエネ、ワナール、ワッス、ケルバチの四ヵ所です。墓の上に墓標として建てられたもので、十~二四個の石でそれぞれの環が形成されている。この石は、ラテライトで作られており、高さは一メートルから二・五メートル有り、重いものでは一〇トンに及ぶものまである。
形は、鉄器でほぼ完全な円筒形や多角形に削られているのも特徴で高度な組織社会が長年に亘って繁栄してきたことを語ると共に、
この地で行われていた埋葬習慣を知る上で貴重な存在となっている。遺跡の総数は一九六五ヶ所で、一六七九〇基の石碑や石柱が並んでいる。中にはたった一つだけ儀礼の場が造られているのも発掘されている。未だこのストーンサークルが持つ目的や理由は謎のままである。
「おかしいわね。セネガルの護衛がいない」
カルルは銃を抜いた。
「先客がいたようだ」
エンリコは片腕を機関砲に変えた。
「死んでる」
アナベルとフラムは石柱の影に倒れている人影を見つけ思わず声を上げる。
石柱や石碑の背後に五人のセネガル兵が倒れていた。全員、背中や首にナイフが突き刺さっている。
海江田は銃を抜く。
エンリコは振り向きざまに蹴りを入れる。
蹴られて石柱に激突する大型のサル。
どこからともなく集まってくる男達。手にはナイフや猟銃を持っている。
「密猟者だ」
フラムが気づく。彼は折りたたんだロッドを取り出す。
男達がつかみかかった。
早打ちガンマンのような銃さばきで撃つカルル。正確に五人の密猟者の胸や頭に命中。
鋭い蹴りを入れる男。
海江田は身をかわすと鋭い爪で引っかき、数人の男のパンチやナイフを間隙を縫うようにかわして石柱や木を飛びまわり、かかと落としをいれ、掌を弾き、そこにいた男の腕をつかみ背後に回り、持っていた銃で近づいてきた男達を撃っていく。
撃たれて五人の男達が倒れた。
呪文を唱えるフラム。力ある言葉に応えて氷の槍が襲ってきた男達に突き刺さった。
密猟者の一人がライフル銃を連射。
エンリコの胸甲で銃弾は弾かれる。彼が動き、その足元には数人の密猟者達が倒れていた。いずれも首が不自然な方向に曲がっている。
「アフリカ各地から集められたようですね」
死んでいる密猟者達を見ながら言うフラム。
「たいした集客力ね」
感心するカルルと海江田。
心配そうに見ているアナベル。
エンリコは振り向きざまに殴った。
大木に激突するサル。サルは起き上がる。
「ゲラダヒヒ?」
「ゴリラ?」
カルルとフラムが声を上げる。
身長は五メートルで外見はゴリラ。顔はサルである。毛は生えていなくて岩のようにゴツゴツしている。それが一匹ではなく五十匹以上の群れでいた。
「地球上にいるサルじゃないしゴリラじゃない」
アナベルが正体に気づく。
「まさかエイリアン?」
海江田は死んだ密猟者からライフル銃をつかみ撃った。
岩のような皮膚に銃弾は弾かれた。
「銃が効かないわ」
海江田が驚く。
「レイ!!」
フラムは呪文を唱えた。
虚空から数十条の青白い光線がサルたちの体を貫いた。サルたちはよろけ倒れた。
エンリコは噛みついてきたサルの頭部をプロテクターと化した拳を振り下ろす。不気味な音がして倒れた。
サルは腕を振り下ろす。
カルルと海江田は飛び退く。
サルが吼えた。せつなカルルは銃を連続で撃つ。
三匹のサルの口に銃弾が命中。サルたちはのけぞり目を剥いて倒れた。
つかみかるサル。
海江田は地面を蹴り岩柱から木を蹴って背後に飛びうつり、密猟者から奪ったショートソードで口に突き刺した。サルは目を剥いて倒れた。
岩柱に隠れるアナベル。
ふいに誰かに腕をつかまれ振り向く。
ニヤニヤ笑うライフル銃の男。
「嫌っ!!」
アナベルはもがいた。しかし男の力は強く振り払えなかった。彼女はナイフを出して男の太ももを突き刺す。
男は嗚咽を上げて思わず放す。
すると別の男に羽交い絞めにされて押し倒された。
別の男が三人現われた。服装からして密猟者である。
「悪いなあ。あんたを売り飛ばせば一生楽して暮らせるんだ」
ヒゲを生やした男はニヤニヤ笑い、胸に手を伸ばした。
顔が引きつるアナベル。
その時であるライオンが飛びかかりヒゲを生やした男の首にかみつき押し倒して石柱が乱立する場所へ引きずっていく。
「わああ!!」
三人の男達が尻もちをつく。
三頭のライオンが飛びかかり首を噛まれ草むらの奥に引きずられていった。
アナベルは呼吸を整えた。
「大丈夫か?」
手を差しのべる男。頭に牛の頭蓋骨をかぶり、民族衣装を着ていた。
「数が多い」
フラム、海江田、カルルはサルの群れに囲まれていた。
エンリコは機関砲を連射。青い光線は別のサルの胸や腹を貫通した。
サルの群れのリーダーとおぼしきサルが舌なめずりした。せつな、いきなり黒い槍を持ったマサイ族の男がわりこみ、その槍で突き刺し、なぎ払った。民族衣装といい風貌はマサイ族だがその男の体はメタリックな金属に覆われている。
エンリコは機関砲を連射。
サルたちの体を次々と貫通した。
「すごいわ」
絶句するフラム達。
マサイ族の男とエンリコが振り向く。
足元にはサル達の死体が転がっていた。
マサイ族の男の肌が金属から肌色に戻る。
「助かった」
ため息をつくフラム。
「パンサーアイが召集されるというのを聞いた」
牛の頭蓋骨をかぶった男が口を開いた。
「あなたは?」
アナベルがたずねた。
「トゥグル・エレレ。タンザニアのゾルタ族の呪術師だ。軍隊に入隊しているけどね」
牛の頭蓋骨をかぶった男は名乗る。
「私はボンゴ・イル・バル」
マサイ族の男は名乗った。
「パンサーアイに入れてもらえないか」
トゥグルは真顔で聞いた。
「それはありがたいわ。今は一人でも多くの人材がほしい」
カルルははっきり言う。
「そのために我々は来た」
ボンゴはうなづく。
「まず時空の亀裂を閉じないと」
アナベルは渦巻き模様がついた石柱に王家の鍵を差し込んだ。すると空中にフワフワ浮いていた光の塊が吸い込まれるように消えた。
「時空遺物を操れる者を初めて見た」
感心するボンゴとトゥグル。
「それにしてもこのサルは地球上にはいないね。皮膚は岩のようで身長が五メートルなんて」
フラムは死んだサルをまじまじと見る。
「異世界から来た生命体よ。でも亀裂は閉じたからもう入って来ない」
アナベルは真剣な顔になる。
なぜかわからないがこの亀裂を作った者が入れた。入口を作ったのもそいつで密猟者達はエサだった。
「証拠に一匹持っていく」
エンリコは死んだサルを担いだ。
アナベルは歩き出す。
「どのストーンサークルか見分けがつかないな」
トゥグルが周囲を見回す。
彼らはアナベルの後をついていく。いくつかのストーンサークルを通り過ぎてひときわ大きい石碑についた。その石碑は象形文字や動物の絵が刻まれている。
アナベルは躊躇することなくヒョウの絵に王家の鍵を差し込んだ。
なんで選んだかわからない。直感である。
すると石碑の祭壇の扉が開いた。
琥珀玉と歯車を取り出すアナベル。
「次の遺跡へ行こう」
アナベルは琥珀球を見ながら言う。
「輸送ヘリの乗員はさっきの襲撃で死んでいるのを見たがどうやって操縦する。それに日が暮れてきた」
ボンゴが聞いた。
「俺が操縦するし、Tフォース支部に寝泊りする」
エンリコが言った。
同じ頃。
アメイラ沖上空に接近するミラージュ戦闘機、ユーロファイター戦闘機、サーブ39グリペンの三機。三機ともコクピットに二つの光が灯っている。
「こちらラファイエットとサカール。マドレス、ライエン、ツアーロ応答せよ」
「こちらマドレス。あと十分で接近」
ユーロファイター2000戦闘機に変身しているマドレスが答える。
通信に入ってきたラファイエットとサカールはフランス軍の駆逐艦である。二隻ともマシンミュータントで駐留軍にいたがアルミン司令官の指示で一緒に行動している。
「もうすぐアゾレス発電所だ」
ツアーロが報告する。
アゾレスはアメイラの隣町である。貨物ターミナルと発電所がある。
「あれは?」
ライエンが気づいた。
発電所のそばにトーチ状の物体がそそり立っている。高さは十階建てのビル位の大きさがある。
「あれは・・テレポートアンカーだ」
ジェットパックを装着して飛行していたフィンがあっと声を上げる。
「テレポートアンカー?」
三人が聞き返す。
「全部、地球で調達できる物資で造られている。たぶん中国製で、内部のコア装置を破壊しないリベルタ兵士や兵器、魔物をリベルタから呼ばれてしまう。一本しかないのを見るとこれは受信用で送信用はリベルタだ」
フィンが分析する。
「コア装置はたぶん魔光石だ。それを代用に使っているかもしれない」
マドレスが推測する。
「いた。カメレオンの戦車だ」
ライエンが口をはさむ。
大通りに道路四車線分を占拠する巨大な戦車が鎮座している。その周囲には普通の大きさの戦車や高射砲群があった。
周囲の戦車と高射砲からいっせいに砲撃が始まった。
「上空離脱」
三機とフィンは上昇してその空域を離れる。
「ラファイエット、サカール。高射砲と普通の戦車を攻撃を頼む」
マドレスが指示を出した。
すると対地ミサイルが飛来してきた。数十発のミサイルは高射砲や戦車に正確に命中して吹っ飛んだ。
巨大戦車の三門の砲口が火を噴いた。
太い三条の赤い光線をかわすマドレス達。
マドレス達はミサイルを発射。
フィンは片腕を砲身に変えて撃った。
正確に次々に命中したが何もなかったようにそこにいる。おまけに損傷もない。
戦車の砲塔部分が二つに開き機関砲がいくつも出てきていっせいに連射。
その間隙を縫うようにかわすフィン達。
フィンは片腕の砲身を機関砲に向けた。片腕が青く輝き、青い光弾を放出した。
戦車の砲塔に命中するといくつかの機関砲が吹き飛び、部品が飛び散った。
砲塔から別の発射機がのぞいて連射される。
四方八方に放射されたそれはそばにあったビルの壁という壁を穿ち、なぎ払った。
三門のうち真ん中の砲身から火炎が放射されてそれがだんだん紫から赤色に変わる。
フィンは着弾地点をラファイエットとサカールに送信した。
砲身が上に向けて赤い光線を放射しながらなぎ払うように光線を放出した。放出しながら海に向かって発射した。そして爆発。いくつかの大きな水柱が上がった。
しばらくの戦車の沈黙。
「チャージに時間がかかるみたいだね。あの機関砲を出した時が内部に攻撃できる」
フィンは冷静に報告する。
「戦車側面のハッチから何かがたくさん飛び出した。
「ドローンだ!!」
ライエンが叫んだ。
ただのドローンではなく機関砲を装着した戦闘ドローンである。
バルカン砲を連射をする三機。
数百機ものドローンを次々撃墜した。
フィンは片腕を機関砲に変えて撃墜する。
「離脱しよう」
マドレスは指示を出す。
ドローンを撃墜しながらマドレス達はその上空から離れた。
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