何処でも無名なお姫様

チキンスープ

私、有名な無名。

私の朝は、いっぱいのミルクから始まる。一杯なんて足りないわ。お砂糖も頂戴。甘党ですもの。文句おあり?


今日はお休み。家でのんびりするの。最近やたらと言い寄って来る、馬鹿なキツネも放っておいて、好きな時間に好きなように。隙なんて知らない。好き放題、隙放題。時間が余って忙しい。


好きなもの?そんな事聞いてどうするの。…へぇ、私のことが知りたいの。いいわ。そうねぇ……「犬は好き」。でも吠えるのは嫌よ。耳に響いてたまったものじゃないわ。…あとは、ですって?……ぇぇ、み、「水」。…無味なのが好き。でも触れるのはきらい。だって冷たいんだもの。


にしても、お出かけする気にはなれない天気ねぇ。人目も嫌だし。ほら私って有名だから。んん?でも無名でしょ、ですって?…そうねぇ、出かけるのもアリかもしれないわね。

…雨くらい降っていて欲しいものだけれど。水も滴る良い…ってね。

何か言いなさいよ。晴れは嫌いなのよ。


人間は好き。でも見られるのは嫌い。だって近頃の人間って、すぐに、あの、す、すまーとふぉん?…知らないケド、あれでかしゃかしゃするじゃない。見るだけに留めないから嫌いよ。人間は嫌い。


なんだかねむたくなってきたわ…。どうせ用事も無いし、お昼寝しようかしらね。今夜はパーティだから、ごちそうがたっくさんあるのよね。楽しみだわ。毎年、うちの専属シェフが腕を振るってくれるの。目が覚めるような美味しさなのよね。想像したら目が覚めてきたわ。困ったわ…。


…そろそろ時間ではなくて?そうよね、ご苦労様。貴方、なかなか扱いが上手なのね。退屈しなかったわ。機会があれば、また遊んで下さいな。…でも少し触れ過ぎよ。遠慮なさいな。過度な接触は、個体によっては嫌がる子もいるわよ。私は、そうでもないけれど。


じゃあ、お疲れ様。ばいばい。

……んん、名前?

…あぁ、名乗らないまま遊んでもらって悪かったわね。でも、ただ教えてもつまらないから、そうね、約束をしましょうか。


次に会えた時までに考えておいて。


私にはまだ名前が無いの。



さて、吾輩は誰でしょう。

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