アンドロイドの靴屋さん#12
敷地面積559,004平方メートル、商業施設面積192,776平方メートルを誇る超大型商業施設ユグドラシルから次元も時間も超えた地点で製造された我々アンドロイド9283型は主たる存在であるマザーコンピューターの命令によりユグドラシルの一角で生命体の足首からつま先までを保護する防具の生産、販売業務を行っている。
「生命体反応あり。足音からナンバー110ヒト族と断定。声音を確認。声音からユグドラシル前オーナー不知火奏吉と断定。距離50、40、30……」
「いらっしゃいませ」
以前までこの世界においてマザーコンピューターと同等のマスター権限を所有していた不知火奏吉を迎えた我々はプログラム通りにそう告げた。
「頼んでいた物は出来上がっているかな?」
「はい。こちらにご用意しております」
「少し履いてみても良いだろうか?」
我々から革靴を受け取った不知火奏吉はおよそ1年3カ月と15日履き続けた革靴を脱いで我々が不知火奏吉の精密なデータから不知火奏吉に合わせて生産した革靴に履き替えた。
「やっぱり、ここの靴は履き心地が違うね」
「ありがとうございます。不知火世渡様も同じようにおっしゃられておりました」
「流石は私の孫だ」
楽しそうに笑いながらそう告げると、不知火奏吉は我々の仕事に見合うだけの報酬を差し出した。
「またよろしくお願いするよ」
不知火奏吉はそう告げ、我々の店を後にした。
9月21日 アンドロイド9283-01
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