妖狐のケーキ屋さん#7

「あら、お祭りがあるのね」


 今日も事前に連絡をしてモンブランを大量に買いに来たヴィルゴさんは店に貼ってあるユグドラシル盆祭のポスターを見つめてそう言った。


「出店とか出るのよね?」


「そうですね。ユグドラシルの屋上に毎年いろんな店が屋台を出していますよ」


「という事は、キリ君も出店を?」


「おれは毎年出していないです。今年も出しませんし」


「あら、それは残念」


 ヴィルゴさんは少し残念そうな表情を見せてそう言った。


「でも、良く考えてみればお祭りの間キリ君は暇なのよね?」


「仕事が終われば祭りを見に行こうと思っていますが」


「もし一緒に行く相手がいないのならワタシと行かない? 浴衣なら見繕ってあげる。妖狐には和服が似合うでしょ?」


「では、お言葉に甘えさせてもらいます」


 おれがそう答えるとヴィルゴさんは目を見開いて驚いていた。


「驚いたわ。ワタシったらてっきり断られるものだと」


「折角お誘いいただいたのにお断りなんて出来ませんから」


「キリ君ったら嬉しい事言ってくれるじゃない」


「ヴィ、ヴィルゴさん苦しいです」


 ヴィルゴさんはとても嬉しかったようでおれに激しい抱擁をした。



8月13日 キリマンジャロ

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