忍びのパン屋さん#7
「さてと」
「頑張りましょう!」
今日のお仕事が終わり、お店を閉めたわたしたちはお店の奥の工房でユグドラシル盆祭に出店する出張店で提供する限定パンの試作品を作っていた。
「アキちゃん、これはどうかな?」
「美味しいですけど、お祭りで食べるかと言われると……」
「そうですよね」
「う、ウチのパンはどうですか?」
「新鮮さはあるけど、これもやっぱり」
「お祭りらしさは無いですよね」
わたしたちは頭を抱えながら試作品のパンをかじった。
「ちょっと気分転換でもしようか」
「はい……」
わたしが気分転換にアキちゃんに手裏剣術でも教えてあげようと手裏剣をちらつかせるとアキちゃんはパンをかじったまま固まった。
「アキちゃん? お~い。大丈夫?」
「それです! それですよ!」
「び、びっくりした。いきなりどうしたの?」
「手裏剣っ! 手裏剣ですよ!」
アキちゃんはそう言うとパンの生地をこねて手裏剣型を作りそのパンを焼き上げた。
「急ぎだったので中身は無いですけど、どうですか? このお店らしさが出ますし、子供受けもすると思います!」
「確かに」
思い返せば忍者であるわたしが営んでいるパン屋に忍者を連想させるパンは一つもなかった。
そう考えればアキちゃんの作った手裏剣型のパンはユグドラシル盆祭で出す限定パンとしては画期的だと思った。
「アキちゃん! アキちゃんには新しいパンを考える才能があるよ! ユグドラシル盆祭の限定パンはこれにしよう!」
「は、はい! ありがとうございます!」
アキちゃんは嬉しそうに、そして驚きながら頭を何度も下げながらそう言った。
8月12日 シャープ
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