おかしの駄菓子屋#10

「お、運が良いじゃないか少年。はい、当たりが出たからもう一個」


 一個10円の当たり付きガムの当たりを買ったその場で引き当てた少年に同じ商品を渡していると、ジャックの目を惹くお客さんが来店した。


「いらっしゃいませ」


 ジャックがそう言うと白い縁の眼鏡に白いマスクを着け、不審な挙動をしている見る人が見れば不審者なエンジェル族の女性は小さく頭を下げた。


「ください」


 ジャックが見た限り商品棚から無作為にジャックの駄菓子屋専用の小さな買い物かごに入れた女性はそのかごをジャックが担当するレジへ持ってきた。


「合計で777円になります」


 ジャックは合計金額に驚いた。1000円近くも購入していたからではない。ジャックの駄菓子屋にやって来る大人は意外と1000円以上買って行く人は少なくないからだ。では、何故ジャックが驚いたのか? それは、女性のかごに入っている駄菓子(駄菓子では無い菓子もある)が全て別の種類かつ全て当たり付きのもので777円という金額になっていたからだった。


「丁度いただきます。お客様、こちらの商品は全て当たり付きとなっておりますが、この場で確認いたしますか?」


 女性は小さく頷いて、購入した商品を1つずつ開封して当たりを確認した。


「ご購入された商品すべて当たりが出ましたのでもう1つずつご用意させていただきます」


「あの、当たった商品はお店に居る子供たちに差し上げます」


「よろしいのですか?」


「はい、お願いします」


 女性がそう言うのならジャックはそれに従うのみなので、女性の引き当てた商品は先着順で少年少女たちに1つずつ配布することにした。


「ありがとうございました。明日のイベント頑張ってください」


 ジャックはラックアンラックの運の良い方であるハーフエンジェルのホノカさんにこっそりとそう言った。



6月15日 ジャック・オー・ランタン

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る