エルフの焼き鳥屋#10
「ほら、入りな」
「……」
お世辞にも綺麗とは言えない衣服の少女の背を押して店に入って来たのは私の良く知る男だった。
「ダイ、遂に人さらいか?」
「おいおい、アロエのおっちゃんは俺がそんなことをするような男に見えるのか?」
「警察が来たら『いつかやるだろうと思っていた』という準備が出来ているほど人さらいをしそうに見えるが?」
私がそう言うとダイはバツが悪そうな表情を見せた。
「それは心外だ。って、無駄話はこんな所で十分だ。アロエのおっちゃん、今すぐマウの身体を癒やしてくれ」
「真剣な顔で頼んでくるところ申し訳ないが、ダイは看板を見て入って来たか? ここは病院じゃなくて焼き鳥屋だぞ」
「アロエのおっちゃん、病院で済むならここには来ないって。おっちゃんの力じゃなきゃいけないからここに来た。あとは、マウに美味い焼鳥を食わせるために」
「私が出来るのは外傷の回復時間を早めるだけ。焼き鳥を食ったら適切な処置を受けに行くことを約束してもらおう」
「頼む」
ダイが私に札束を渡してきたので私はそこから1枚だけ引き抜いてダイに突き返した。
「治療費と食事代を合わせても多いくらいだが、あまりは私とダイの友達料として受け取って置く」
「好きにしてくれ」
ダイだから許してくれるやり取りを行った私は早速マウとかいう少女の治療を行った。
6月13日 アロエ
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