悪魔の洋服屋#7

 ずっと店を留守にしているのも申し訳ないと思い、久々に顔を出していると可愛らしいお客様が来店した。


「無理だろ。無理、無理、無理。こっちの趣味じゃないんだよ」


 金髪の少女は小さな声でそう呟きながら、辺りをうろうろと見渡していた。


「お客様」


「ひぃっ!」


 オレが金髪の少女に声を掛けると少女はエルフのように美しく輝く金髪を逆立てるほど驚いた。


「驚かせてしまい申し訳ございません。お洋服にお悩みのようでしたらご相談に乗りますが?」


「えっと、その、ひ、ヒラヒラが少なくて、水色の入った、こっちに似合いそうな服があれば試着させてほしいです」


「かしこまりました。少々お待ちください」


 2つの条件はともかく、見た目の印象だけで少女に似合いそうな服を探すのは中々に難しい注文であったが、オレは10分以内に発見してきた。


「あ、あ、ありがとうございます。ちょっと試着して良いですか?」


「どうぞ」


 誰かに言わされているかのように棒読みでそう言う少女にオレは微笑みを見せながら試着室へ案内した。


「あの」


 数分後、試着室から顔を覗かせた少女の顔は真っ赤になっていた。


「いかがいたしましたか?」


「悪くなかったです。だから、えっと、取り置きしてください。近いうちに買いに来るので」


「ありがとうございます」


 オレが満面の笑みでそう言うと少女は苦笑いを見せた。



5月22日 ユースケ

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