エルフの焼き鳥屋#6

「さて」


 店を閉めようと『閉店』と書かれた札を店の外へ出しに行くと、店の前にぼんやりとした人影が立っていた。


「君か。店を閉めるつもりだったが、入るだろう?」


 彼がコクリとうなずいたので私は『閉店』の札の裏に書かれている『貸切』を表にして店の扉に掛けた。


「注文はいつもので良いか?」


 彼がじっくりと深く頷いたので私は彼がいつも食べているカワ串2串、モモ串1串、ポンジリ串1串、ネギマ1串を冷蔵庫から取り出して炭火の上に置いた。


「今日は随分と機嫌が良さそうだな」


 彼にそう尋ねると彼は首をかしげていた。


「いつも通りなのか? そうか、それならそれで良い。深く詮索するつもりは無い」


 久しぶり、というほどでもないが十数日振りにやって来た彼との会話は串が焼きあがるまで途切れることなく続いた。


「また来てくれ」


 私は常時満足そうにしていた彼が夜の闇と混ざり合って見えなくなるまで見送った。



5月16日 アロエ

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