吸血鬼の喫茶店#6

「またか」


 今日一日で幾度となく思ったその言葉が遂に私の口からこぼれ出てしまった。


「マスター?」


「い、いや。なんでもない。パフェだな?」


 私は慌ててそう言った後、お客様の注文を繰り返した。


 先日パフェの値段を大幅に変更してから私の店では喫茶店という場所において主役であるコーヒーよりも売れ行きが良い。


 それだけなら良かったのだが、今日に限ってはコーヒーが1杯たりとも売れていなかった。


「マスター、パフェください」


「はいよ」


 私はそう答えながらお客様に気付かれないように鼻息で溜息を吐いた。



5月17日 オレンジ

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