天使の洋服屋#6

「こんにちは」


「ナギサさん、お忙しいのにわざわざありがとうございます」


 数日前に悩みに悩んだ末に一着のデザインを書き上げたボクは撮影用の服を仕立てるためにナギサさんの忙しい時間の合間に採寸を行いに来てもらっていた。


「あの、デザインってもう決まっているんですよね?」


「普段はゴシック・アンド・ロリータなんてデザインしないので書き上げるまでに随分と時間が掛かってしまいましたけど」


「そのデザインを見せてもらうことは出来ますか?」


「そ、それは」


 普段から自分の書いたデザインを人に見せるなんて事はしないのだが、ナギサさんのキラキラとした目に僕は押されていた。


「見てみますか?」


「是非!」


「どうぞ」


 ボクがデザイン画を渡すとナギサさんはデザイン画に穴が開くのではないかと思うほどじっくりと見つめて呟いた。


「着てみたい」


 実を言うと今まで書いてきたデザイン画の中で最も自信の無かったその画に対してそう言ってもらえたことに僕は密かにガッツポーズを決めた。



5月14日 ゼバ

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