吸血鬼の喫茶店#5

「これは冷やかしなのか?」


「わっからないな~~~」


 ユグドラシルでその名を知らないものはいない加工不可能と言われたエルフのチョコレートでチョコレートパフェを作り出した旋風理科という女性はわざわざ私の店を訪れて常連客でも注文しないパフェを頼んで食べていた。


「普通のパフェなんて食べておいしいと感じるのか?」


「普通だからこそい~~~の! それにこのパフェある一点を除いたら普通に美味しいよ。ある一点を除いたら~~~」


「ある一点?」


 理科が妙に強調して言っているが、思い当たる節の無かった私はそう聞き返した。


「わからないかな~~~? 値段だよ。ね~~~だ~~~ん」


「値段?」


「こ~~~んな普通のパフェに850円は高すぎだよ。高くても400円。350円が妥当って所かな?」


「今の値段の半分以下じゃないか!」


 私がそう言うと理科は店の隅から隅まで聞こえるほど大きな溜息を吐いた。


「取りあえず、来週の木曜日までパフェを350円に変更すること~~~!」


「わかったよ」


 売れていない商品が値段程度で売れる商品にかわるとは思えないが、試しに数日間だけ理科の提示した値段でパフェを販売することにした。



5月12日 オレンジ

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