エルフの絵本屋さん#12

「ねぇ、ねぇ、ねぇ~、わたし、わたしこれにする~ おね~ちゃんは?」


「じゃあ、お姉ちゃんはこれにしようかな」


 本日この絵本屋ローゼンに来店された小さなお客様を微笑ましく見ていたワタシはその姉妹に幼き日のワタシとお姉ちゃんの影を重ねていた。


「おね~ちゃん、その絵本お家にあるやつだよ」


「でも、お家にあるやつはもうボロボロだから……」


 妹ちゃんはそう言われてもよく分かっていないような表情をしていたけれど、ワタシはお姉ちゃんが持っている絵本を買いたい理由がわかった。


「お姉ちゃんこのお話好きだから」


「後で別の絵本が欲しくなっても知らないからね~」


「あんたじゃないんだからそんな事言う訳ないでしょ!」


 楽しそうに笑う妹ちゃんと呆れ顔で笑うお姉ちゃんはそれぞれ絵本を持ってワタシのいるカウンターへやって来た。



4月2日 ローズ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る