魔女見習いの占い#12

「チョコ、そこに座ってくれないかな?」


 開店の数十分前、クッキーくんはお客様用の椅子を指差しながらチョコにそう言った。


「クッキーくん、占いでもするの?」


 冗談っぽくそう言ってみるとクッキーくんは随分と真剣な顔をしていた。


「占わせてくれないかな? 僕の占いが当たるかどうかわからないけれど」


「メトロノームで働いているなら当たる占いをして欲しいけど」


「僕に占いの魔法の素質は無いのは知っているだろう。とりあえず過度な期待だけはしないで聞いてもらえるかな」


 そう言うとクッキーくんは師匠から届いた水晶に気を集中させた。


「……」


 お店の名前の由来になっている古いメトロノームが88往復するとクッキーくんは顔を上げてチョコにこう言った。


「3人」


「3人?」


「そう。チョコと……と2人の手をぎゅっと握る小さな子が見えた」


「クッキーくん、チョコと小さな子ともう1人はなんて言ったの?」


「そ、そろそろ開店時間じゃないかな? さあ、今日も頑張ろうか」


 クッキーくんは顔を真っ赤に染め上げながらそう言っていた。



4月3日 チョコ

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