龍人の料理店⑨

「今日は随分と店が寂しいね」


 店内は満席であるというのに常連のお客様はボクにそう言った。


「随分と久しぶりに今日はボク1人だけですからね」


 今日は理科さんもミリンさんもどうしても外せない用事があるという事で休暇をとっているのでインフィニティは2ヶ月ぶりくらいにボクたった1人で接客から調理までこなさなくてはならなくなっていた。


「すいません」


「はい、ただいま。では、ごゆっくりどうぞ」


 ユグドラシル初代オーナー不知火奏吉しらぬいそうきちさんの時代から2ヶ月前までの数十年間、ボクはたった1人でこなせていた。


「お待たせいたしました」


 だというのに2ヶ月という僅かな期間で1人での仕事に限界を感じてしまっている。


「ありがとうございました」


 ボクがどれ程2人に依存をしていたのか。そして、僕にとって2人がどれ程頼りになる存在であったのか。今日はそれを知る良い機会となった。



3月16日 ソルト

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る