スライムの宅配便⑨

 太陽が沈むくらいの時間。僕ら人間が日々住んでいる人間界とエルフ族や魚人族が住む異世界を繋ぐゲートの役割をしているユグドラシルの根元に僕はいた。


「待っていたよ」


 僕はやって来た男にそう言った。


「ユグドラシルのオーナーともあろう人物がこんな所でサボっていていいのか?」


「心外だな。僕はちゃんと今日の分の仕事を終えてからここに来ているというのに」


「そうか、それは失礼した」


 僕らはそんなやり取りをしながら笑い合った。


「待っていたという事は、わたしに何か用事か?」


「よろず屋に来た時に渡そうかとも思ったのだけれど、仕事中に個人的な荷物を渡すのは迷惑だと思って」


 僕はレッド兄にある方々から預かった荷物を渡した。


「これって?」


「ラックアンラックのお2人が先週たまたま仕事中のレッド兄を見かけたみたいで、デビューの頃から応援してくれているからってレッド兄にサインをプレゼントしたいと言われて……聞いている?」


 レッド兄は早速袋の中からラックアンラックのお2人がレッド兄の為だけに書いてくれた全異世界に1枚だけのサイン色紙を見つめて恍惚とした表情を見せていた。



3月17日 不知火世渡

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