ドワーフのおもちゃ屋さん⑨
「ダメだ!」
俺の怒声が店の中にこだました。
「マスターアンザン」
「カコウ、お前は下がっていろ!」
「カシコマリマシタ」
怒りから俺はついカコウにまで強い口調でそう言ってしまった。
「ほう、それが噂のアンドロイドですか。旧型とは思えないほどスムーズな動きだ。これはますます」
「何度も言っているだろ! カコウは売り物じゃない、こいつはこの店の従業員だ。いくら金を積まれても売るつもりは無い」
カコウの噂を聞いて俺の店にやって来たらしい魚人族でスーツ姿の男に俺はそう言い放った。
「では、そのアンドロイドを修理したという優秀な技師をスカウトさせていただくとしましょうか」
「セン、センリョクもここの従業員だ! あんたみたいな素性も知れぬ奴に渡すつもりは無い!」
「それは、センリョクさんという方が決めることです。そのアンドロイドを修復するほど優秀な技師なら最先端の設備を用意すれば喜んで引き受けてくれるでしょう」
「最先端の設備ですか。それは良いですね」
どこかへ出かけていたセンは戻って来るなりそう言った。
「センリョクさんですか? 聞きましたかアンザンさん、彼は我々のもとで働くことを望んで……」
「いませんよ。ボクはここが良いので。この最低限の道具だけで良いものを作るこの店が」
「だそうだ。悪いがここにはあんたの求める商品は無いみたいだ。お引き取り願おうか」
男はとても大きな舌打ちをすると俺たちを親の仇のように睨みつけて店から出て行った。
3月15日 アンザン
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