エルフの絵本屋さん⑦

 ユグドラシルが開店して1時間が過ぎた頃、ワタシはお店を一時閉店して多目的ホールに向かった。


「赤い色の影は言いました……」


 多目的ホールでは絵本屋ローゼンの従業員であるサクラちゃんがユグドラシルへやって来た保育園児たち数十人に絵本の読み聞かせを行っていた。


「今日も4色の影たちはわたしたちの世界を守ってくれているのです。おしまい」


 サクラの声で物語に引き込まれていた園児たちは、物語が終わり現実に引き戻されると小さな両手でとても大きな拍手をした。


「ふふっ」


 いつまでも鳴りやむことのない園児たちの拍手を聴いて無意識に微笑んでいたワタシはこの笑顔を生み出すために絵本作家を目指し、自分の手で絵本を売っているのだと改めて感じた。



2月26日 ローズ

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