龍人の料理店⑤

 お客様のランチタイムを終え、ボクたちは遅めのランチタイムを送っていた。


「理科さん」


「な~~~に?」


「理科さんはいつもボクの作るまかないをとても美味しそうな表情で完食してくださいますが、苦手な食べ物というのはあるのでしょうか?」


 苦手は克服するに限るが、お仕事の休憩時間中まで苦手なものと向き合うのは嫌なはずなので、ボクはそんな質問を投げかけてみた。


「う~~~ん」


 理科さんは随分と首をかしげて考えていた。


「言われてみたら、理科って嫌いな食べ物ってないな~~~」


「苦手なものがないなんて珍しいですね」


「そうかな~~~? ソルトさんはある?」


「恥ずかしながら。人間界の食材で、パクチーと呼ばれる食材が苦手ですね」


 何度か克服しようと口にしてはいるのだが、どう調理してもあの食材だけは美味しいと感じることが出来ない。


「あんなに美味しいパクチー料理を作れるのにパクチーが嫌いなんですね~~~。ところで、どうしていきなりこんな話を?」


「特に深い意味がある訳ではないです。理科さんに嫌いな食べ物を無理矢理食べさせていたとしたら申し訳ないと不意に思ったので」


 咄嗟についた嘘にしてはそれなりに真実味のある物ではないかとボクは心の中で思った。


「そうですか~~~」


 理科さんは何も気づいていないようで食べ終えたお皿をキッチンへ持って行った。


「好きな食べ物なら、お肉ですよ~~~」


 尋ねてはいないが、その情報は3月3日に予定している理科さんの誕生日パーティーに出す料理の参考になりそうだった。



2月16日 ソルト

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