スライムの宅配便④

「お届け物です」


 毎日、毎日異世界を行き来して宅配を行うわたしだが、一年の内でこの時期ほどこの仕事にやりがいを感じる時は無いと思う。


「いつもありがとうございます」


 この時期は男性に荷物を手渡すと普段の1割増しで嬉しそうにそう言われる。


「これ、よろしくお願いします」


 この時期は女性から宅配の荷物を受け取ると普段の1割増しで恥ずかしそうにそう言われる。


 その理由はこの時期に限って荷物に添えられる小包が関係している。お客様から預かった荷物なので中身を確認することは特別な理由がない限りは行わないのだが、その小包からはチョコレートやクッキーのような甘い香りが香って来る。


 そんないつもとは違う気持ちが込められた荷物を配達するこの時期がわたしにとって充実している時間だった。



2月10日 レッド

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