吸血鬼の喫茶店①

 外は心地良い日差しがさしていたが、私の店『喫茶ブラッドムーン』はぼんやりとしたオレンジ色の光で照らされていた。


「相変わらず、この店は暗いね」


 来店直後から私の店を批判する老人は私の知る限り一人しか居なかった。


「光に満ちた場所で店を出すあなたにはわからないだろう。この暗く落ち着いた雰囲気の良さは」


「君の口の悪さも健在のようで安心したよ」


「コーヒーで良いだろう? 良い豆が入った」


「貰おう」


 私は古き友人の水守という男にドワーフの世界から輸入した豆を使ったコーヒーを淹れた。


「うむ、これは美味い」


「そうだろう?」


「少し分けてくれないか? 私の店でも」


「お断りだ。理由は言わずともわかっているだろう?」


 私の言葉に水守は小さく頷いた。


「冗談だよ。このコーヒーを飲めるのは世界でここだけが良い」


「アナタにそう言ってもらえるのは光栄なことだ」


「心にもないことを」


 水守はお客が来ないのを良い事に長々と話し続け、気が付いた時にはコーヒー一杯で3時間も居座っていた。



2月9日 オレンジ

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