吸血鬼の喫茶店①
外は心地良い日差しがさしていたが、私の店『喫茶ブラッドムーン』はぼんやりとしたオレンジ色の光で照らされていた。
「相変わらず、この店は暗いね」
来店直後から私の店を批判する老人は私の知る限り一人しか居なかった。
「光に満ちた場所で店を出すあなたにはわからないだろう。この暗く落ち着いた雰囲気の良さは」
「君の口の悪さも健在のようで安心したよ」
「コーヒーで良いだろう? 良い豆が入った」
「貰おう」
私は古き友人の水守という男にドワーフの世界から輸入した豆を使ったコーヒーを淹れた。
「うむ、これは美味い」
「そうだろう?」
「少し分けてくれないか? 私の店でも」
「お断りだ。理由は言わずともわかっているだろう?」
私の言葉に水守は小さく頷いた。
「冗談だよ。このコーヒーを飲めるのは世界でここだけが良い」
「アナタにそう言ってもらえるのは光栄なことだ」
「心にもないことを」
水守はお客が来ないのを良い事に長々と話し続け、気が付いた時にはコーヒー一杯で3時間も居座っていた。
2月9日 オレンジ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます