龍人の料理店①
今日もユグドラシルの仕事を無事に済ませた僕は今夜の夕飯について悩んでいた。というのも、いつもは家で夕飯を作って待ってくれているばあちゃんが、今夜はじいちゃんと出かけるという事で夕飯は外食で済ませて欲しいと言われていた。
そこで僕はユグドラシルのある店に向かった。
「いらっしゃい」
数多くの店が集まったユグドラシルの中でも一番人気のお店インフィニティ。その店は龍人のソルトという男性がたった一人で営んでいる料理店で聞いた話ではわざわざ遠くの地方からここの料理を食べるためにユグドラシルへ訪れるお客様もいるらしい。
「こんばんは、ソルトさん。ご飯を食べたいのですが」
「今の時間はユグドラシル従業員に料理を提供する時間となっております。オーナーであるあなたも例外ではありません。さぁ、お好きな席へどうぞ」
いつもは多くの人でにぎわっているインフィニティの店内だが、一般のお客様に料理を提供する時間は終わっているため、今は僕一人だけだった。
「さて、何を食べようかな」
「今夜の人間界は冷えると聞きました。温かいビーフシチューをご用意しておりますが如何でしょう?」
提供される料理は全て一流の味と言われているインフィニティだが、特にソルトさんが自らおすすめした料理はその日提供される料理の中で一番美味しいと噂されていることを僕は耳にしたことがあった。
「じゃあ、ビーフシチューを」
「かしこまりました」
ソルトさんはそう言うと厨房へ向かった。料理を待っている間、僕の耳には厨房の調理をしている音が聞こえて来た。ただその中にソルトさんの溜息のような音も聞こえた。
「お待たせいたしました」
噂通りこれ以上のものは無いと断言できるほど美味しいビーフシチューを堪能した僕は帰り際にソルトさんにこう言ってみた。
「余計なお世話かもしれませんが、もしも僕にお手伝いが出来るようなことがあれば気兼ねなく言ってくださいね」
僕の言葉を聞いてソルトさんは優しい笑顔で、
「ありがとうございます」
そう言ってくれた。
1月12日 不知火世渡
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます