ドワーフのおもちゃ屋さん①

 ユグドラシルは楽しい場所だ。


 そんな当たり前のことを改めて実感したのは昨日契約した部屋の前に懐かしさを感じさせるおもちゃが落ちていたからだった。


 そのおもちゃを拾った僕はユグドラシルで唯一のおもちゃ屋でありドワーフ族のアンザンさんが店主を務めるおもちゃ屋アンザンに向かった。


「アンザンさん」


 僕は手作りのおもちゃが並ぶ店内を見渡しながらその制作者であるアンザンさんを呼んだ。


「誰かと思ったら世渡じゃねぇか。どうした?」


「おもちゃの落とし物を拾ったので、このお店で買われたものではないかと思って立ち寄ったのですが」


「その手にあるのがそうか? ちょっと見せてくれ。……。おっ! これは俺の試作品じゃねぇか。試遊している時に無くしちまって、大樹にでも引っかかったのかと思っていたが見つかって良かった」


「試作品ですか?」


 僕の手の中にあるその試作品のおもちゃはどこから見ても竹とんぼだった。


「作りが悪いのか、全然思い通りの方向に飛ばないのが問題でな」


「きっとじいちゃんなら思い通りに飛ばす方法を知っていると思いますよ」


「奏吉さんが? 確かにあの人は昔からいいアドバイスをくれたな。世渡の言う通り奏吉さんに聞いてみるとするよ。わざわざ届けてくれてありがとうな」


 仕事を終えてこの話をじいちゃんにすると、アンザンさんは人間界に疎いわりに人間界で昔流行ったおもちゃを一から生み出す能力に長けていて、最近の子供たちにはその懐かしいおもちゃが一周回って新鮮なものに感じられるようでユグドラシル周辺に住む子供たちの間で懐かしいおもちゃが流行しているのだと教えてくれた。



1月11日 不知火世渡

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る