第205話 ステ振り ☆
「まずはステータスを調整しましょう」
現在進行形でリリスさんと大鬼が戦っているところが遠目から非常に小さく見えるのだが、二人の動きは僕のステータスでは一切目で追えない。つまり知覚速度よりももっと上の次元で二人は戦っていることに他ならないということだ。
そのため、僕があの場に今すぐ入っていってもリリスさんのサポートは疎か、大鬼の気を一秒にも満たない僅かな時間逸らすことさえもままなら無いだろう。
【ステータスオープン】
名前 神宮寺 真冬
種族 人族
グレード 3
レベル 99
HP 2079/9075
MP 108/4267
STR 2871
DEF 2107
INT 1864
AGI 7009
CHA 1928
LUK 6280
SP 2012
スキル
「どうすれば良いと思う?」
「そうですね……まずは大鬼の動きが追えるまで
ナビー曰く、相手の動きが分からない時点でそれは戦いにすらなく、起こりうる現実は瞬殺が関の山だと言う。なので、僕は任意のステータスを上げられるSPを使ってAGIを、様子を見ながら少しずつ上げることにした。
SP 2012→1900
AGI 7009→8121
「――――」
SPをキリの良いところになるように112使ってAGIに振った結果、AGIが1000以上数値としては上がった。
しかし、遠くで行なわれている二人の戦闘を改めて見てみるが、激しい戦闘の中で二人が止まる唯一と言ってもいい剣同士がぶつかるほんの僅かな間が、大体の予想を交えてやっと認識が出来るようになっただけで、大鬼がどんな風に剣を振っているのか、リリスさんがどう対処しているのか実際の所は全く分からないに等しかった。
二人の超越した戦いに介入するには、これではまだ足りないだろう。
「まだ上げましょう」
SP 1900→1800
AGI 8121→9121
「まだ駄目だ……」
SP 1800→1500
AGI 9121→12121
「――――!!」
AGIがSPを使って上げる前より約2倍となったところでようやく、二人がどれ程苛烈で、リリスさんがどれだけ卓越した剣術を持っているか、それでも綱渡りのようなギリギリの戦いを強いられているかがはっきりと分かった。
しかし、正直なところ最強の敵である大鬼に対してのリリスさんの動きが、どれだけ針に糸を通すような緻密な動きか分かったからこそ、あの戦いに入っていくことに次第に恐怖を覚え始めた。
「大丈夫です、私が付いてます」
ナビーのその声は優しく背中をさすってくれるような声だった。
「真冬、私もいるから」
今すぐにでも最大火力を叩き込めるほど魔力を完璧に練り上げているさくらが横から言った。
「やるしかない、君なら出来る」
ウィルは憑依しているさくらの中から声を出した。その声に疑いなど一滴も含まれておらず、純粋に僕なら出来ると信じて止まないものだった。
「悔しいけどみゃーは今回はお留守番にゃ、でも必ず強くなってご主人を楽にさせてあげるにゃ」
奥歯を噛みしめ、苦虫を噛み潰したような表情でみゃーこは自身の弱さを悔いた。しかし、その目はちっとも死んでおらず、ずっと先の未来を見据えているようだった。
「うん、皆ありがとう」
僕はまだまだ弱い、でもこんなにも信頼できる仲間がいる。だから足が止まりそうになっても前を向けるし、まだまだ強くもなれる。
「――――」
心が温かな物で満たされるこの感じを、自分の弱さから他人の弱さまで、何もかもずっと独りで抱え込んできたリリスさんにも味わって欲しかった。頼るって事を知って欲しかった。
「リリスさん、僕も今行きます」
SP1500→0
STR2871→10371
残ったSPを大鬼に対抗するためSTR、つまり力に全部振り、僕は二人が戦っている場所へ向け地面を蹴った。
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