第64話 変革者

「変革者……」


 変革——その意味は、何かを変えて新しくすること。また何かが変わって新しくなること。


「変革の意味は、分かるよね。それで何で変革者って大層な呼び名が付いてるのかと言うと、文字通りこの世界に変革をもたらしたからなの」


「……お風呂」


 寄宿舎に泊まったときにさくらが前教えてくれた、檜風呂とシャワーの設備を思い出す。

 確かサムライという人物が広めたとかどうとか。


「そう、よく知ってるね。お風呂もそうだし、他には……ギルドの大まかなシステムも考えたと伝えられている」


 ギルドのシステムとは、一番分かりやすいところで言うと、ギルドカードに付与されているクレジットカード機能だろうか。あれはおおよそ地球の産物と考えても良いだろう。


「それで変革者たちは、良いことも悪いことも何かしらの変革をこの世界にもたらしたとされていて、それを起こせ得るほどの力を持っていたとも記されている」


 異世界転生、転移によく見られるチートと呼ばれる物のおかげだろう。


「だから、急にぽっと出てきた真冬くんがモンスターハウスを乗り越えてきたり、ギルドカードの金に到達する早さが異常だったりしたのをしっかりと覚えてたから、文献を読んだときに間違いないって確信したの」


 金になった時に丁度タイミング良く見かけた赤髪の少女を思い出しながら、


「……でも、ギルドカードのランクに関しては、リリスさんって人と同じような早さなんですよね」


「リリスさんは、剣神に師事されているから当たり前と言えば当たり前なの!」


 剣神……リリスさんでさえ勝てるビジョンが浮かばなかったのだから、その師匠とあらば勝つどころか、相対した瞬間に死を悟るほどの実力の持ち主なのではないだろうか。


「剣神ってどのくらい強いんですか?」


「少なくともリリスさんよりも強者なのは確かだとは思うんだけど……」


 フランさんのその言葉は、先ほどの当たり前のくだりとは正反対に、非常に曖昧で煮え切らないものだった。


「はっきり分からないって事ですか?」


「風の噂では山を一刀両断できるとか、海を真っ二つに切れるとかどうとかーって聞くんだけど、その出所が怪しいし、何と言っても証拠がないと、ね」


 海を切れる云々は、水の性質上、時間が立てば元通りになってしまうので証拠は残らないだろうけど、山に関して言えば、斬った山を見せて貰えれば確かな証拠となり得るだろうけど、それが

 見つからないのであれば、信用出来ないのは仕方あるまい。


「それで、話を戻したいんだけどいいかな?」


「あ、はい。続けてください」


「――どうやってここにこれたの?」


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