第36話 大精霊!!?
「ところでさっきから気になってたんだけど、そこの幼い女の子は誰なの?」
「あ、えっーと……」
僕が精霊であるウィルのことについて、その種族的なものを秘匿するか言うべきか、考えあぐねているとウィル本人が口を開く。
「さくらちゃんと契約した、精霊のウィルだよ!よろしくね!」
「え!?精霊様!!?……」
フランさんは、雷に打たれたような驚愕を顔で示した。
「そんなこと気にしなくていいから、仲良くしてね!」
ウィルは人見知りしない性格なのだろう、びっくりしすぎて二の句が継げないフランさんに、人懐っこい笑顔を浮かべながら自己紹介をした。
――って、精霊ってこと隠さなくて良いんだ!?
ナビーがいればそういうことは大概すぐに解決するのだが、ナビーはガンダを倒したあたりから話しかけても一向に返事をしてくれない。
何かしらの理由で消えてしまったか、と思い、焦りながらステータスを確かめてみると
そんな感じに、現況ではどうしようもない物事の物思いに耽っていると、ウィルに声を掛けられた。
どうやら、ウィルとフランさんの自己紹介が両者とも終わったみたいだ。
「真冬くん、今から僕とさくらちゃんは、ギルドマスターに挨拶しに行くんだけど、どうする?もし疲れてるなら、どこかで休んでても良いけど」
なんでも精霊と種族がエルフであるアルフは、種族的に近しい存在であるため親戚みたいな感じらしく、色々と積もる話があるのだという。
「僕も行くよ。お礼したいこともあるし」
「お礼?まあいいか。じゃあさっそく行こ!」
ダンジョン内でウィルと雑談していた内容の一つで、精霊はその力が強大であるが故に、滅多に人の前に姿を現さないのだと聞いた。その力を悪用されないためだ。なので、こうして人里に下りてきて、自分たちの親戚に会えるのは、大変嬉しいことなのだろう。
そのためウィルは何時にも増して足取りが軽く、心做しか楽しそうに見える。
早く早くと急かすウィルに釣られるように足早になっていた僕たちは、ギルドの最上階――ギルドマスターの部屋にあっという間に着いた。
フランさんが部屋のドアにノックすると、中から「どうぞ!」と、アルフさんの声が聞こえてきた。
「失礼します。ギルドマスター、真冬くんとさくらちゃんは無事に帰ってきてくれました。捜索のご助力感謝します」
「礼には及ばないよ。無事に帰ってきてくれたならそれでいいさ!時に真冬くん。君、精霊に好かれてるけ……」
僕に話をしていたアルフさんは隣にいるウィルに気が付くと、声を徐々に小さくしていき、言葉が消えた頃には、関心は全てウィル一点へと注がれていた。
ほんの数秒だけ部屋に静寂が訪れた後、アルフさんは急に床に膝をついて跪き、ウィルに向かって自分の非礼を詫びる。
「すいません、光の大精霊様。気が付かなかった私をどうかお許しください」
高身長イケメンが、まだ年端もいかぬ女の子に跪づくという、なんとも形容し難いシュールな光景が生まれた。
ていうか、今僕の聞き間違えじゃなければ、ウィルのこと大精霊って言ったよね。只者ではないと思っていたけど、まさか大が付くほどの偉い精霊だったとは……。
「おい、フラン!お前も大精霊様の御前で跪づ――「いいよ、気にしなくて。僕、そういう堅苦しいこと嫌いだし。しきたりとか血筋とか気にしないで、普通に接してよ!」」
ウィルはアルフさんの言を遮り、大精霊という名称に相応しい大きい器を見せた。
普段飄々としている分こういうところを見ると、差が激しすぎて驚きや新鮮さなどを感じずにはいられまい。
「それで――「僕の言うことが聞けないの?」」
それでも尚、食い下がろうとするアルフさんに、今度は契約の前に一瞬だけ見せた圧力を帯びさせた雰囲気で、それを封殺した。
「すいませんでした。では、私のことはアルフと呼んでください。大精霊様のことはなんとお呼びすれば?」
ウィルが望んでいるであろう普通の感じにはまだ程遠かったが、これがアルフの生来の性格なのは分かったらしく、これ以上それについて何かを言うことはなかった。
「ウィルって呼んでくれればいいや」
「確か……その名は捨てたはずではないのですか?」
――ん?ウィルっていう名前を捨てたってどういうこと!?
「ウィルちゃん……?捨てたってどういう意味?」
同じ事を思ったはずのさくらが、すかさずウィルにそのことの詳細を聞いた。
「言う必要が無かったから言わなかったけど、聞かれちゃったら答えるよ。僕の本名は――」
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