第25話 精霊!? ☆
くそっ、どこに居るんだ!誰も反応しないし、連絡も無い。
真冬は何度も通信用の魔道具を開いて確認するが、音沙汰が一向にない。
このままここで何か進展があるのを待つのか、それともカイトかフランさんのどっちかのところに行くのか考えていると、自分の周りをぐるぐると回っている存在に気付いた。
「これは……なんだ?なんか、温かい」
白熱電気の光だけを取り出したみたいに、ほんのりとした温かさと柔らかい光はこちらが存在に気付いてすぐに旋回をやめ、目の前で上下に動き始めた。
それはまるで着いてこい、とでも言っているような動き方だった。
「着いてこいってことか……?」
真冬がそう訊くと、得体の知れない光は2周顔の周りを回ると、ある一方向へと一直線に向かっていった。
「そっちはもしかして――」
光が指し示す方向は、フランさんが向かったアジト疑惑のある建物の方向に思えた。
真冬は、今すぐにでも光を振り切りたいという逸る気持ちを抑えて、大人しく光に付き従って同じ方向を目指した。
???視点――
「親分、上玉が迷い込んできましたぜ」
ボロぞうきんのような薄汚い男が、下卑た笑いを顔に張り付かせながらこちらにやってくる。
「黙れ!そんなもの放っておけば良いだろ。今すぐ返してこい」
親分と呼ばれた男は、とりつく島も無い返事をした。
「でも、親分。こいつ、ギルドの受付嬢ですぜ。このまま返したら……」
「それならそうと早く言え。受付嬢はそこの小娘の隣に縛って置いとけ。手荒な真似はすんなよ?」
この小屋とギルドは距離が近く、この迷い込んだ受付嬢を返してしまうと上位の冒険者、ないしあの最強の魔導師と名高いギルドマスター――アルフを、呼ばれてしまう恐れを親分は危惧したのだ。
中級魔法までを一人で扱うことが出来る者を魔法使いと呼び、上級魔法を一人で扱うことができる魔法使いを、魔導師と敬称で呼ばれる。
なぜ上級が使える者と使えない者で呼び方が変わるのかというと、上級からはそれまでの魔法の難易度とは、一線を画しているからだ。
但し例外が一つだけあり、中級魔法の
話を戻すと、下級魔法で属性の魔力を飛ばす
詳しく説明すると、
それを越え、完全に上級魔法に踏み入れてしまえば、攻撃の指向性から治癒の指向性に魔力の質を変化させたり、下級・中級では足下にも及ばないほどの魔力量を要するものもある。
こういう理由から、上級魔法を発動できる技術を習得するには、たゆまぬ努力を10年ほど、もしくは神から愛されている証――才能が必要と言われているため、魔法使いと魔導師とが線引きを為されているわけだ。
ちなみに、この線引きは冒険者ギルドが決めたわけでは無くて、上級魔法が扱えるようになると身に纏っているオーラがそれまでのものとは一変するため、冒険者同士が実力者とそうでない者を区別するためにつけただけなのだが、いつの間にか定着してしまったため、ギルドも冒険者もそう呼んでいる。
件のアルフは魔導師といろいろな方面から呼ばれているので、少なくとも上級は扱うことが出来る。よって、男からしたらアルフはお呼びではないのだ。
「あともう少しで目的が…………」
はやく――を殺さねば。
――男はその人物を待ち続けている。
真冬は光を追って、再度屋根の上を走っていた。
屋根の上は人がいることの方がずっと少ないから見られる心配が無いと思い、ステータスを確認することにした。
【ステータスオープン】
名前 神宮寺 真冬
種族 人族
グレード1
レベル97
HP 1840/1840
MP 1420/1420
STR 782
DEF 512
INT 601
AGI 1005→3045
CHA 314
LUK 880
SP 204→0
スキル
ナビーにどこに振るのが良いのか聞いたところ、
AGIにSPを振り終えた瞬間――
ドガンッ!!
真冬は消えた。
――否、急な加速によって消えたように見えただけだ。
真冬は前方を走っていた光を抜かしてしまったかと思い、急いで後ろを振り返る。
「――ッ!……いない?」
真冬は、とりあえずと何の考えも無しに進行方向を見る。
前方には何事も無かったかのように、先ほどと同じく光が前に浮いていた。
「――な、なんでだ!?」
(真冬さんの力が増幅するのを感じたから、僕も同じくらい加速したんだよ!)
突然頭に響いたその声は、響き方こそナビーのそれと類似していたが、響いた声の方は似ても似つかなかった。
(お前は……誰だ?)
不思議と敵とは思えないので、声の主に正体を聞いてみた。
(あ!申し遅れました、僕は光の精霊です。以後お見知りおきを)
再度聞いてみると、その声は幼い子供のような声をしていた。
……子どもか?それに精霊ってなんだ……?
(お前はなん――(説明はあと!もうすぐ着くよ))
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