サラの過去③……恩人に報いる決意。そして運命は、交わる……

 サラが自分用として確立させた近接戦法は、それを初めて実戦投入した時から多大な戦果を上げられた。

 最初、何も知らずにチームを組んだメンバーからは煙たがられ、ダミーナイフしか持たずに単騎でフィールドを特攻していくサラの姿を嘲笑う者が大半だったのだが、たった1人で突っ込んでいったサラが相手チームを壊滅に追い込んだという結果に、目の色が変わる。

 ヤラセやイカサマといった噂も飛び交っていくが、サラはそれも気にする事なく戦績を積み重ねていった。

 もちろん、地力のレベルアップも欠かさない。

 自分のEXS性能をもっと高めつつ、使いこなせるようにするトレーニングもこなしていくサラ。

 EXSの形と方向性がきちんと明確になった今、迷いが無くなった彼女を止められる者はいなくなっていく。

 そして、サラが中学を卒業する年の頃……

 サラはその年に開かれたとある大会に、学校のチームで参加した。

 その大会は国内で活躍するサバイバルゲームのナショナルチームも多数参加する規模の大きなもので、中にはアメリカ代表としてWSGCに参戦経験のあるプレイヤー所属のチームもある。

 そこで認められる程の実力を示した者は、年齢を問わずナショナルチームからスカウトされる事もあり、質の高いトレーニングや実戦訓練を受けられるのは言うに及ばず、注目されながら実績を上げる事で代表選手に選ばれる可能性が高まる。

 それだけに、WSGC出場を本気で目指す実力者が集うハイレベルな大会であり、ほとんどがそれら本命チームの 独擅場どくせんじょうだった。

 無名なチームに注目する観客はおらず、実力のある人気チームの勝利が鉄板の予想で、サラのチームメンバーですら結果を残せると思っていなかった。

 その大方の予想を覆し、サラがEXSを遺憾無く発揮し、優勝してしまった。

 ナイフオンリーという異質なスタイルながら、単騎での圧倒的な活躍でチームを勝利に導いて存在感を見せつけ、大会に関わった全ての者を納得させたサラは、いくつものチームからスカウトを受ける事となる。

 実力だけでなく、ルックスも申し分ないとなれば色々な意味で将来有望とも言え、アメリカ代表としてサラが活躍する事になると誰もが期待した。

 しかし、WSGC参戦のインタビューを受けた時の、


「『ワタシ、代表になるつもり無いけど?』」


 というサラの発言が、会場全体に衝撃を与えた。



 ※  ※  ※  ※



「ただいま~!」

「サ、サラ! どういうつもりなんだ!?」

「どうしたの? パパ。どういうつもりって、何が?」


 帰宅早々、サラは慌てた様子のエリックに詰め寄られる。


「さっき、トムから電話があったんだ! 代表になるつもりが無いとか言ったそうじゃないか!?」

「ああ~……もう、トムってば……帰ってきたらワタシが言おうと思ってたのに……」


 サラは困ったように肩をすかせてみせるが、エリックは真剣だった。


「トムは、サラが何も話してくれないと言って、僕なら事情を知っているかと思ったから連絡してきたんだ。僕だって何も聞いてないから驚いたよ」

「そりゃあ、誰にも話してなかったもの」

「サラはWSGCに参戦したかったんじゃないのか!? 今回の大会で評価されれば、強豪のチームに入れてWSGCに参戦しやすくなる……だからこそ大会に出ようと思ったんじゃないのか!?」


 エリックはサラの肩を掴み、真意を聞き出そうとする。

 それが少し痛かったか、サラの顔が僅かに歪む。


「ち、ちょっと落ち着いてよ、パパ! WSGCに出場するつもりが無いとまでは言ってないわよ!」

「な、何だって!? だけど、代表になるつもりが無いって聞いたんだが……」

「言ったわよ。でも、代表にならなきゃ参戦出来ない訳でもないし……そもそも今回の話に関しては、アメリカの代表になるつもりが無いって意味なんだからね!」

「……ア……アメリカの代表に、ならないだって……?」


 真剣な中に厳しさが若干含まれていたエリックの目が、今度は驚きに見開かれる。

 エリックが手を離すと、サラは左右の肩を交互に撫で、腕を回す。

 そして、一息ついて落ち着くと、サラもエリックを真剣に見返す。


「……パパ……ワタシ、日本に行く!」

「……に、日本に!?」

「そう! 日本に行って、日本の中で認められて、日本のサバゲー代表になる! 最初から決めてたのよ!」


 サラは腰に着けたウェストポーチを開け、中身を取り出す。

 そこにあったのは、柄物のハンカチに包まれたダミーナイフ。


「パパは、ワタシがサバゲーをする事になったきっかけ、覚えてる?」

「もちろんさ! サラを救ってくれた僕達家族の恩人を忘れた事なんて無いよ!」

「そうよね、ワタシも同じよ! 今のワタシがいるのは、彼が認めてくれたおかげ……だから、今度はワタシがその恩を返したいの!」


 思い出のダミーナイフを優しく握り、サラは笑顔を浮かべる。


「スペリオルコマンダーと認定されてから今日までに得たワタシの全て……完成したEXS、経験、実績を持って、日本で成り上がるの! 上手くいけば、彼にまた会えるかもしれない! 一緒にサバゲーのチームメンバーになれたら言うこと無いわね!」

「もしかして、今日の大会に参加したのは……」

「うん、ただの力試しよ! WSGC経験してるプレイヤーがいるって聞いたからね! そこで勝てたなら基準も分かるし、それが実績にも繋がるわ! そしてワタシの実績は彼がいてこそのもの……すなわち、ワタシの強さは彼の人徳のおかげだと知らしめる事が出来るもの!」

「ハハハッ! サラは本当に彼が好きなんだね!」


 饒舌だったサラは、エリックから言われて顔を真っ赤に染める。


「す、好きだなんてそんな……! ま、まあ好きか嫌いかのどちらかと言えば……す、す…………好き……だけど……で、でもワタシはただ彼が尊敬出来る恩人って思ってるだけで! それ以前にまずボーイフレンドでもないからどうにもならないというか……!」

「じゃあボーイフレンドにしたいという気持ちはあるって訳だね?」

「うっ!」


 サラは更に顔を強く染めて俯く。

 その様子に、エリックは穏やかに微笑む。


「それなら、日本に行きたいと言うのは仕方ないな」

「お、怒ってないの?」

「元から怒っていた訳では無いよ。僕も納得出来る理由だったからね! 彼には僕も会いたいくらいだし。アメリカ代表として活躍するサラを見られないのは残念だけど……僕はサバゲープレイヤーのサラの一番のファンだからね、応援するよ!」

「パパッ……!」


 自分の考えを認めてくれたエリック。

 それが嬉しくて、サラは涙目でエリックに抱きつく。


「……ごめんね、きちんと言わなくて……言ったら、反対されそうな気がして……」

「いや、良いよ! 何となくそうなりそうな予感はしてたよ。日本語を学びたいと言ってきた、あの頃からね……」


 抱きつくサラの綺麗な髪をクシャクシャと優しく撫でるエリック。

 実際、サラの日本に対する情熱は目を見張るものがあった。

 現在まででサラが話す日本語は発音から何から相当に自然なレベルにまで仕上がっている。

 また、日本で生活するために必要な知識もエリックが知る限りのものは吸収していて、居住したとしても問題は無いだろう。

 最初に訪れた頃を考えれば、別人と言える。


「けど、そうなるとやっぱり、トムが浮かばれないよな」

「……トムがどうかしたの?」

「サラは、トムの事をどう思ってるんだい?」

「サバゲーのチームメンバーの1人でしょ?」

(ああ……やっぱりサラ、トムの好意に気付いてなかったか……不憫だな……)


 サラの返答に苦笑いとなるエリック。

 先ほどから何度か話に出てくるトムというのは、サラの通う学校の同級生で、サバイバルゲームのチームメンバー。

 サラに比べて薄めな印象の金髪に、そばかすと眼鏡がトレードマークの男子で、サラに好意を寄せている。

 本人は公言してはいないが、エリックも含めて周りにはバレており、度々茶化されているのだが、肝心のサラが気付いていない。

 サバイバルゲームの実力としてはそれなりで、いつかサラに認められる実力になってから告白しようという、トムの隠れた野望のようなものもあったりするのだが、叶う見込みはなさそうである。


「……まあ、良いか。とにかく、サラが日本行きを考えている事は分かったよ」

「うん! 中学卒業したら、すぐに日本に行って向こうの高校に入学するつもりなの! 協力してくれる?」

「それは構わないよ! ただ、最初の1年はこちらの高校に通って、夏休みとかに日本に旅行がてら慣らしてから転校する形のが良いよ。実際に行かないと分からない事もあるし、うちは小学と中学が6:2だったから、どっちにしても日本とは入学がずれるよ」


 エリックが指摘しているのは、日本とアメリカで就学状況が違う事を表している。

 日本では一般的に、小学校6年、中学校3年、高校3年と、6:3:3という振り分けで12年の就学時期を過ごす事になるのだが、アメリカではその振り分けが5:3:4、もしくは6:2:4となっており、高校が1年長い代わりに小学か中学が1年短い。

 ちなみに、アメリカの夏休みは3ヶ月で基本的に宿題も無いので、旅行に行くには適している。


「そっか……それじゃ、仕方ないわね……」

「前に行った事もある日本の親戚には話しておくから、慌てないでゆったり調べてくるといいよ」

「うん! ありがとうパパ!」

「可愛い娘のためだからね! もし少年と出会えたら、歓迎するから是非ともうちに連れて来るといいよ! ボーイフレンドとして、紹介出来ると良いね?」

「も、もうっ! パパったら!」

「アハハハッ!」

「マァ~タノしそうコエ、キこえるワね~」


 再び顔を真っ赤にするサラと豪快に笑うエリックのところに、玄関から入ってきたマリアが加わる。


「あっ、ママ、お帰りなさい!」

「タダいマ~カエリましたですよ」

「マリア、まだ日本語がしっくりきてないね?」

「オゥ~ニホンゴ、むつかしいデス……サラ、スゴいことデス!」

「フフッ! ワタシは日本が好きになったもの! でも、ママも上達してきたわね!」


 片言で日本語を話すマリアに、サラも満足げ。

 サラが日本語を上手く話せるようになると、マリアも一緒に参加するようになった。

 最近ではほぼ日本語オンリーになった父娘2人の会話を聞いていて、寂しくなったようだ。

 たった1人の少年との出会いが、異国の少女とその家族にここまで影響を与えるようになったとなれば、奇跡と言えるかもしれない。

 こうしてサラは、中学卒業から1年間は日本現地の情報を得ながら地元の高校に通い、2年目で温かい家族に見送られながら、単身日本へと渡ったのだった。



 ※  ※  ※  ※



「……という流れで、ワタシは日本に来たのよ」


 自身の思い出を交えながら、サラはタクティクス・バレットや女王&兵隊のメンバーに来日の経緯を説明し終える。

 少年に対する好意については、単なる恩人という感じにぼかしながらの説明ではあったが、出来る限りの細かい内容は話して聞かせていた。


「ふわぁ~……凄いですね、女王さん! 恩人さんに恩を返すために、わざわざ日本語を覚えて日本まで来たなんて!」

「ま、まあね! 彼がワタシの才能を見抜いてくれたおかげでここまで来れた訳だからね!」

「サラちゃんが昔の話を聞かせてくれるなんて無かったですから、とても新鮮な感じですね、うふふっ!」

「ち、ちょっと仏田! アンタ気持ち悪い笑いをしてるんじゃないわよ! よ、余計な事言わないでよね!? もう負けたから、クイーンを付けない事に関してはいいけど……」


 女子トークなノリでサラの話を興味津々に聞いている風鈴と仏田。

 気色悪そうにジト目を仏田に飛ばし、コホンと咳払いを1つしてから、


「……と、とにかく! 今話したように、彼は幼い頃から目標が高かったのよ! だから責任感の強いプレイヤーを探しているのよ!」


 サラは改めて、少し偉そうに全体に話を振る。

 聞いていた飛鳥や角華が首を傾げる。


「おいおい……責任感の強いプレイヤーとか、漠然とし過ぎだろうが……外見とか、他に何か特徴はねぇのかよ?」

「名前とか、少しだけでも引っ掛かりやすいものを聞けたら、まだ探しやすかったかもしれないわね……」

「それは私もサラちゃんには言ったんですよね、条件が雑だって……心境が変わる可能性だってあるのに……」

「し、仕方ないでしょ! ワタシだって会ったばかりじゃ日本語もままならなかったし、パパだって無理には聞けなかったんだから! だけど、日本を世界一にするなんて目標掲げる人、そこまでいない気がするって……思ってるんだけど……」


 周囲の反応に不満そうなサラ。

 だが、覚えている内容が少ない事に一番歯痒い思いをしているのは、他ならぬサラ自身なのだろう。


「そうだな。幼い頃の夢は大きくなりがちだが、そこまで明確なビジョンが持てる人間はいないかもしれないな。俺もそんな時から目標持った事は無いが……」


 玉守は頷いた後、何か言いたげにスッと振り返る。

 他のメンバーも同じだったようで、ある1人に視線を集める。

 その先にいたのは……大和だ。

 タクティクス・バレットのメンバーは、大和の目指す目標については聞いていたので、同じ目標を立てている大和の言葉を待っていた。

 サラも同様に大和を見つめ、緊張気味に唾を飲み込む。


(……そう……あの、赤木大和……彼もまた、目標が全く同じ。だから、もしかしたら……!)


 サラがここまで詳しく思い出を語ったのには、大和がその少年と同一人物である可能性を考慮したからだった。

 面影もどことなく少年と重なるような気もしたが、人の思い出というものは曖昧なので断定は出来ない。

 なので、大和に判断してもらうしかなかった。

 その大和はサラへと歩み寄り、目の前で止まる。


「……女王」

「えっと……な、何?」

「ダミーナイフを貰ったという事だけど、まだ持ってるのかな?」

「も、もちろん肌身離さず持ってるわ! シ……シャワーとか試合以外は、ね……それが、何?」

「良かったら見せてもらっても、いいかな?」

「い、いいわよ!」


 サラは自分のナイフを慌ててウェストポーチから出し、大和に差し出す。

 受け取った大和は、柄が色落ちしてところどころが若干ボロボロになったハンカチが巻き付いたナイフをそのまま眺め、考え込むように黙ってしまう。


「……ね、ねえ……そ、そのナイフが、どうだっていうの?」


 沈黙に耐えかねたサラが、今までと違って遠慮がちに、大和に答えを求める。

 やがて大和は、手にしたダミーナイフの鞘に付いているハンカチの結び目をほどく。


「えっ!? な、何を……!?」


 サラからは、大事なダミーナイフを大和が雑に扱っているように見えたので少し慌てた。

 だが気にする様子もなく、大和は鞘からハンカチを外し、鞘をじっと眺める。

 サラも、大和の横からそっと覗きこみ……


「……あっ!!」


 驚きの声を上げる。

 そこには、「赤木大和」と深く名前が彫られていた。


「じ、じゃあ……! やっぱりアンタ……ち、違っ……! アナタがあの時の!!」

「……俺は……昔から特別親しく思った人とか、サバゲーを広げたいと思った時に物を贈るのが癖だったんだけれど……実を言うと、人の顔を覚えるのが苦手でもあったんだ……」


 サラの問いに答えるのとは違うが、大和は少し恥じるように自身の欠点をカミングアウトした。


「千瞳さんの時もそうだった。父さんの仕事の関係もあったけど、少し落ち着いて仲良くなった人がいても、また転校してチームを移動するという事も多くて……だから、というのは失礼なのかもしれないけど……相手を忘れないようにという意味もあって、物を渡す癖がついたんだ」

「そ、そうなのね……でも、まさか鞘に名前彫ってあるなんて気付かなかったわ……ハンカチも含めてそのまま大事に取っておいたから、外すなんて発想がそもそも……って、そうじゃないでしょワタシッ!!」


 思考がまとまらずに混乱気味だったサラ、顔を左右に強く振って気持ちを落ち着けて大和を見つめ返す……つもりが、真っ直ぐ見れなくて、頬を赤く染めて目を逸らしてしまう。


「……えっと……その…………い、色々、話したい事あるけど……まずはこれだけ言わせて? あの…………あ、ありがとう……!」

「礼を言われる程の事はしてないよ。俺はただ、君に輝く才能があるって思ったから、言っただけなんだ」

「それをしてくれる人がいなかったのよ! アナタがワタシを認めてくれたから、ワタシはここにいる……ずっと、感謝の言葉を伝えたかったけど、会えなくて…………会いたかった……!」

「俺の言葉で、そこまで頑張ってくれるなんて思わなかった……でも、それが女王の支えになれたなら良かったよ」

「うん!」


 晴れやかに笑顔を輝かせ、素直に頷くサラ。

 周りの誰もこんな顔のサラを見た事は無く、何人かは惚れ惚れと見とれてしまっていた。


「ハハハッ! 話はまとまったかよ!」


 会話がギリギリ途切れた場面を見計らい、飛鳥が大和の肩に腕をガッシリ回してきた。


「話聞いて、大和なんじゃねぇかとは思ったが、やっぱりそうだったか! まさか女王と知り合っていやがったとは……お前すげぇやつだよ、大和!」

「いえ、自分の言葉はきっかけに過ぎません。実際にここまで研鑽したのは女王自身の努力の結果ですよ」

「ね、ねえ……あの、や……大和…………そ、その……女王っていうのはもう……」

「女王さん! 良かったですね! 私と同じように、大和さんと昔会った事があって、自分を変えてもらえたんですね! 凄く運命的ですよ!」

「むむっ……! 風鈴……ワタシは大和とただ出会っただけじゃなくて、EXSの根本な部分を大和に認めてもらえたんだからね! だからワタシのが大和と深い繋がりがあるといっても過言じゃ……って何ニコニコ嬉しそうにしてるのよ風鈴!? バカにしてるの!?」

「ねえねえ! 良かったら、私達も色々話を聞いても良いかな?」

「「キルギラちゃん達も女王様と話してみたいにょ~!」」


 だんだんとタクティクス・バレットのメンバーが会話に加わり、輪が賑やかになっていく。

 人数が増えてサラも慌ただしくなっていくが、そこには周囲をはねのけるような威厳を出していた女王の姿は無く、感情でコロコロと表情を変える年相応の少女がいた。


(そうか。あれが本来の女王……サラ・ランダルタイラーの素顔なんだろうな。他校のメンバーともああして交流が出来るとは、なかなかいい子じゃないか……だが……)


 遠巻きから玉守は、コミュニケーションを図るメンバー達を穏やかに見守っていたが、


(……だからこそ、最初に会った時のギャップに違和感を感じてしまう……今のサラ君こそが正しいというなら、それ以前は何故あんなに他人を見下し、孤独でいるような態度を取っていたのだろう?)


 ふと疑問が浮かんでくる。

 一方、サラの本来のチームであったはずの女王&兵隊のメンバーは、逆に会話に加われずにいた。

 それは仏田も同様だったが、仏田に関してはどこか安心したような顔をしていた。


「皆さん。ちょっとお願いがありますが、聞いてもらえますか?」


 振り返り、サラを通さずの形、いつもの仏田ユニットのメンバーへと相談を持ちかけた。



 ※  ※  ※  ※



 タクティクス・バレットメンバーと長々と会話をして、何気に遅くなってしまったサラ。


「それじゃあ女王、またいつか会おう」

「女王さん! 楽しかったです! ありがとうございました~!」

「あっ……う、うん……」


 手を振って、明るく帰宅していく彼らを見送る。

 周囲は既に暗くなり、まるでサラの心情を表しているかのようだった。


(……楽しかった、か……ワタシも、こんなに話せたのは久しぶりで……楽しかったかな……大和がワタシの探していた彼っていうのも分かったし……もしもワタシが……)


 その先に望む自身の気持ち……それは、今となっては叶わぬ思い。

 一息でそれを心の奥に押し込み、メンバーの元に向かう。


「待たせて悪かったわね。でも、いつもならアンタ達も勝手に解散してたんだから、先に帰ってもらっても良かったのに……」

「ええ。ですけど、今からサラちゃんと話し合わないといけない事があったので……」

「……仏田?」


 声を掛けたサラはいつもと違う仏田の雰囲気に、眉をひそめる。

 だが、次の仏田の言葉はサラに衝撃を与える事となる……


「サラちゃん。あなたには、この女王&兵隊から外れて頂きます」

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