268話 天空の巨島へ


 ふわふわと、揺られながら進んでいる。

 ここはアステリムの事象の外、流れの始まりから無数に枝分かれする世界を観測を行う管理者のみがたどり着ける領域。

 そんな領域へ私は精神のみを飛ばし漂っている。なぜこんなことをしているかというと……。


(ダメだ、事象の分かれ道が複雑すぎる。一つひとつ調べてたんじゃとてもじゃないが私の事象力が足りない)


 今、私は先の流れにおいて終極神が仕掛けてくるであろう事象を特定するためこうしてアステリムの事象ツリーを観測しているのだが……未だに終極神が潜伏させた事象は見つからない。

 これが見つけられなければ私達は完全に後手に回ることとなり、事象の内側への終極神顕現は避けられないものになる。そうなれば……アステリムは終わりだ。


ジャラ……


(っと、もう限界か)


 さらに深く事象の奥へ潜ろうとしたが、体から生える鎖が私を引き留める。

 私の背後にあるこのミニ世界神は私への試練であると同時に事象力の限界を知らせてくれるストッパーの役割も兼ねているらしい。

 まだまだ管理者として初心者マークな私に無茶な事象の使い方をさせないための処置なんだろうな。


 仕方がない、今回はここまでにしておこうか。どうやら精神の抜けた私の体へ呼び掛けられてるっぽいし。

 さぁ、ここからは……私の物語だ。






-----






 そんなわけでどーも皆さんこんにちは、私はこの物語の主人公である無神限ことムゲンだ。

 なんだか最近ぜんぜん出番がなかった気がするからここらで本来は誰が主役なのかハッキリさせておかないとな。


 そう、そしてあたしがそんなムゲンが主人公な物語のヒロイン、セフィラフィリスことセフィラよ。


「っておい、なに勝手に私のモノローグに割り込んでるんだ」


「ふふーん、今回の旅はあたしがヒロインとして華々しく活躍するエピソードになるはずなんだからちょっとくらいいいでしょ」


「別にセフィラが活躍するって決まってるわけじゃないからな」


 だがまぁここまでセフィラがはしゃぐのも無理ないか。これまでのセフィラの出番といえば、それこそ冒頭でちょろっと出てきただけか、私がヒロインとして連れだして逃走中の場面がほとんどだ。

 前回の最果ての地へはクリファも一緒だったし、出番といって私の無事を願っててくれてたくらいだもんな。


 その気合も相まってか衣装も動きやすいものに新調したくらいだ。

 これまでのドレスのようなひらひらしたものとは打って変わってピチッとしたフィット感が強調されている。上は肩や胸元を露出させながらも他の部分はキッチリと覆われたセクシーかつ可愛らしい装いだが、注目すべきはやはり下半身の方か……。


「なによムゲン、そんなにあたしのことジロジロ見ちゃって。この新衣装に包まれたセフィラちゃんに見とれちゃったかな~」


 そういうとセフィラは立ち上がってくるりと一回転。そんな中でもやはり目が行くのが下半身……かなり短めのホットパンツに膝上あたりまでを覆うニーソ、そしてその間から覗くむっちりとした太ももが男心をくすぐるぜ!


「ああ! 太もも最高! 流石私のヒロインだ、私の喜ばせ方を心得てるな!」


「ふっふっふー、でしょでしょ。今の時代は胸よりも脚よ。冒険にもピッタリだし流石あたし、コーディネートはバッチリね!」


 まったく女神の力や世間の情勢には疎い癖にそういう知識はどこで仕入れてくるんだか。

 ただ、やっぱりこのお気楽さはセフィラのいいところだ。ムードメーカーを自負する私ではあるが、終始おちゃらけてるわけじゃない。

 そんな時は代わりにセフィラが場を明るくしてくれると考えると、私との相性はバッチリなんじゃないかと思えるな。


「なんで腕組んで無言で頷いてるの?」


「うん、やはり私にとってセフィラは最高のパートナーだなと思ってな」


「当たり前でしょ。ムゲンの物語のメインヒロインはこのあたしただ一人なんだから」


「いや、メインヒロインと考えるとやっぱクリファも同列一位なのは変わらないぞ」


「まったく強情なんだから。まぁいいわ、このエピソードであたしがバリバリ活躍すればヒロイン株が爆上がり、そして大衆の意見もあたし一人がヒロインにふさわしいと傾くはずよ」


 いやどこの大衆だよ。

 しかしクリファ本人がおらずともセフィラの対抗意識は相変わらずだな。

 先ほどセフィラは私の代わりにムードメーカーを務めてくれるといったが、別にシリアスな雰囲気じゃなければ当然私もお騒がし役になるぞ。


「楽しそうねあんた達……。わたし達って今は世界の危機だかをどうにかするために活動してるはずじゃないの?」


「はっはっは! まぁいいではないかネルよ、なんであれ旅路は愉快な方が良い!」


 そんな私達の向かい側で呆れたような視線を向ける女性とその隣で豪快に笑う大男。新米“龍帝”アポロとその嫁“龍妃”ミネルヴァの英雄メンバーペアの二人だ。

 そしてこの場に居合わせてる英雄メンバーがさらにもう一人。


「魔導師ギルドの寮にいたころからお二人はとても仲がよかったですよね。こうして仲睦まじい様子がまた見られて僕は嬉しいですよ」


「う……そ、そうね! あの時からあたしとムゲンは大の仲良しだったから! さっすがムゲンの一番弟子、よくわかってるじゃない!」


「ワウン……(冷や汗が凄いっすよセフィラさん……)」


 今世における私の一番弟子に当たる少年レオンだ。

 この中では犬を除けば私とセフィラの関係を一番知っている人間だ。……まぁちょっと鈍いところがあるせいで未だに勘違いしてるところもあるようだが。


 てなわけで、そんな私達『神器“テルスマグニア”捜索メンバー』の五人と一匹は現在、中央大陸からの海路を越え目的地である第五大陸を馬車で移動中である。


「しかし陸路しか使えぬのは不便だな。中央大陸のように我が皆を乗せて飛べば数日もかからぬ距離だというのに」


「仕方ないでしょ、第五大陸の国家は『世界同盟』に非加盟なとこがほとんどなんだから」


 そうなのだ。第五大陸の国家はどこも人族主義が根付いている国ばかりで、"すべての種族を平等に"を掲げる世界同盟とは仲が悪い。

 そんな大陸にアポロが飛んで上陸しようものなら侵略行為と捉えられ無益な争いが起きる可能性は大いに高いといえるだろう。

 加えて、私個人の意見としてあまり亀裂に近づきたくないというのもある。終極神が生み出した第五大陸上空の亀裂は今もなおゆっくりと広がりを続けている。


「ホント、人族主義ってくだらない連中。どうしてあんなのが生まれたのかしら」


「うぐっ……。ご、ごめんなさいミネルヴァ、あたしがもっとしっかりしてればこんなことには……」


「あ、ごめん。別にセフィラを責めたつもりじゃないから」


 ちなみに英雄メンバー全員にはセフィラが人族主義の中核である『女神政権』の“女神”であったことは伝えてある。

 中には難しい顔をする者もいたが、私や事情を知るメンバーのフォローによりなんとかすべてが彼女のせいではないとわかってもらうことはできた。


「ま、女神政権は瓦解するのも時間の問題だ。そういう政治的なことはそういうのが得意な人達に任せてけばいいさ」


 “女神”を失ったことで初代最高司祭のいいつけを破り指針も失った。

 女神政権も人族主義もそもそもがすべて終極神顕現のため“虚飾”の使徒が整えた舞台装置でしかない。使徒がすべて失われ、終極神自らが事象の内側へ顕現する準備をはじめた今、それ以前に用意された策もすべて意味を失ったといっていいだろう。


「それにゆっくり進むのも悪いことばかりじゃないさ。私も事象の外側で終極神が仕掛けた事象を暴く時間が必要だからな」


「そういえばさっきも目ぇ閉じてたけど、あれって寝てたんじゃないの?」


「まさに探ってた最中だったんだよ。まぁ結局限界がきて見つけられじまいなまま戻ってきたわけだが」


 私が管理者として未熟であるのもたどり着けない理由の一つだが、何よりも終極神の事象力の隠し方が巧妙すぎる。


「なんか指針でもあれば話は違ってくるんだがなぁ」


「ふーん、ないのそういうの?」


「……まぁ……ないな」


 ……実はないこともないんだが、支払う犠牲が大きすぎるのが問題だ。

 終極神はベルゼブルの体で顕現した際に自身の事象のカケラを集めていた。今もそれは変わらず、もしカケラが解き放たれようものならすぐさま奴はそれを取り込むだろう。

 その軌跡の先には必ず終極神が潜んでいるであろう事象にたどり着くはずなのだが……。


(現在終極神が取り逃しているカケラは……“七大罪”の残り、“七美徳”すべて。そして……二つの“女神”だ)


 カケラが解放されるということは、所持者の死を意味する。

 だが今の私は所持者の誰も死なせるつもりなどない。皆この世界で生き抜くことを決めた大事な仲間。そして……。


「うむむ~……なんかこう、突然あたしの女神の力が覚醒して終極神が何しようとしてるのか受信できたりしないかな」


「ワフゥ(望み薄っすね)」


 なによりやっと巡り合えた大切な存在を犠牲にするようなやり方など今の私が目指すべきハッピーエンドからは程遠いものだ。

 だから、私からこの方法を提案することは……絶対にありえない。


「な、なんだか難しい話ばかりでよく分かりませんけど……とにかく今は師匠の言う神器を回収することが優先。で、いいんですよね?」


「その通りだレオン。終極神の企みもすぐ実行されるわけじゃない。だからこそ私達全体の戦力増強の余裕が生まれたわけだからな」


 カロフや星夜達は上手くやっているだろうか。あちらは所有者が私の前世からの知り合いということもあってそこまで心配することはないとは思うのだが。


「で、わたし達はその神器を回収するために“天空神”がいるはずの空の島に向かうって話だけど……それはどこにあるのかしら? 何度空を見上げてもそれらしいものは一切見当たらないけど」


「それなんだがな、いろいろ情報を集めてみた結果空に浮かぶ島は現れたり消えたりするらしい」


 ヴォリンレクスに貯蔵されていた七神皇の資料や第五大陸出身者の話をまとめ、ここにたどり着くまでの行く先々で細かいすり合わせによって得られた最新の情報だ。

 なんでも天空の島は第五大陸北部方面に現れるという共通点以外は現れる時間も消えてる時間も見たことのある人間にとってバラバラで一見法則性などない……かに思える。


 だが、これまでの情報で私が見つけたもう一つの共通点によりその謎は解明された。


「おそらく天空神は雲を隠れ蓑にしている」


 天空の島を見たことがあるという者達は、その誰もが観測したその日は"雲一つない快晴だった"と語っていた。

 島が上空を移動するのと同時に雲を集めていたとするなら一定の場所に留まらない理由にも納得がいく。そうすれば一般人にはただ巨大な雲が移動してるようにか見えないからな。


「え? でも雲って重力で操れるものなんですか?」


「雲は水蒸気の塊ってだけで重力の影響を受けないわけじゃない、ただ軽すぎて私達が日常的に感じてる重力程度では落ちてこないってだけの話だ。テルスマグニアの強力な重力エネルギーを用いれば不可能じゃないさ」


 しかし巨大な島を浮かせながら大気まで操作できるコントロール精は完全にテルスマグニアのすべてを理解していなければ成し得ない熟練度だ。

 本当にあの島に君臨している“天空神”は何者なんだ?


「今日の天気は……快晴ってほどじゃないけど雲もそれほど多くないってところね」


「ああ、だからすでにヴォリンレクスや魔導師ギルドなどの各所協力者に上空を観測して雲の密度が異常に濃い場所を定期的に連絡し合ってもらってる」


 本当は快晴の日を狙うのが一番いいんだが、天気も地域によって一定ではないだろうし運よく快晴の空に島が現れる可能性もそれほど高くない。

 だったら、こちらから探してしまうのが一番手っ取り早いってなもんだ。


「で、その密度の濃い巨大な雲を見つけた人員の情報から移動進路を予測した結果導き出されたのが……」


キィ……

「皆さま、目的の場所に到着いたしました」


 街道の途中で馬車が止まり、御者がそう告げてくる。

 その上空を見上げると、他と比べると異常に発達した雲がゆっくり……ゆっくりと近づいている光景が誰の目にも映っていた。


「この場所だ。今から私達はアレに突っ込む」


 それは積乱雲の何倍もあろう超巨大な雲の塊。まるで何かを覆い隠すかのようにいくつもの雲が渦を巻きながら流れている。


「な、なにアレ……。薄々想像はしてたけど「ラ〇ュタは本当にあったんだ」そのものじゃない」


「うん、私も同じこと思ったな」


 現代日本知識があるとまずそれを想像しちゃうよな、あんなもん見たら。


「よぅし! ではここからは我が皆を乗せあの中へと向かえばよいのだな! 早速行こうではないか、ぬん!」


 言うが早いか馬車から降りたアポロは早々に人化を解き見慣れた真紅の龍へと姿を変える。

 まぁそのために連れてきたから正しい行動なんだが、本当にアポロは何を前にしても臆することがないというか猪突猛進というか。


「ちょ……ちょっと僕はまだ心の準備が……。今度はアポロさんから振り落とされないようにしなきゃ、それに重力魔術の用意も……あわわ」


 逆にレオンはちょっと落ち着きがなさすぎだなこりゃ。

 行きにアポロの飛行速度を経験させようとした時に一回落ちかけたしビビるのも無理ないだろうけど。


「この機を逃せば次はいつどこで巡り合えるかわからない。この一回で必ず突破するぞ! 皆アポロの背中に乗り込め」


「よーーーし! やったるわよー!」


「ワウーン!(行くっすよー!)」


 まぁ突入に関して頑張るのは私とアポロとレオンの三人なのでお前らが頑張るのはしがみつくことだけなんだがな。

 そんなわけで重力をコントロールするために私とレオンはアポロの肩の辺りにライドオン。残りの二人と一匹は後ろだ。


「皆準備はいいな! それじゃ……頼むぜアポロ!」


「うむ! では行くぞ、しっかり掴まっていろ……『龍翼爆走(フェイブースト)』!」


 アポロが翼に魔力を込め空高く飛び上がる。そのままスピードはぐんぐん上がっていき、アポロ自身の魔力によって緩和されているはずの風圧もそれを突き抜けるように私達に押しかかってくる。


「雲の中へ突入する!」


 最高速のまま渦巻く雲の中へ突入し、視界さえ不安定な状況へ引き込まれていく。

 やはりと言うべきか案の定雲の中では雷鳴が絶えず鳴り響き、風も滅茶苦茶な方向に吹き荒れている。この状況でアポロから振り落とされでもすれば瞬く間に暴風の荒波に呑まれ命はない。

 だがそんな状況でもアポロのスピードは落ちることなく真っ直ぐに雲の中を突き抜けていく。


 このままアポロの力のみで抜けられるのではないかとも思えるほど順調な道のりだが……。


「……!? 盟友! 我が龍鱗(ドラゴンスケイル)に何か押し返されるような違和感がのしかかり始めたぞ!」


「来たか! レオンっ!」


「はいっ!」


 私にも感じられる、これは紛れもなくテルスマグニアの重力エネルギーだ。このままでは失速して雷雲の中へと閉じ込められてしまう。

 そうなる前に……私達の魔術でこのエネルギーを緩和する!


「力の押し合いでは絶対に勝つことはできない!」


「流すように波長を合わせる! でしたよね!」


「ああ! いくぞ! せーのっ!」


「「『重力流線(グラヴィティウェーブ)』!!」」


 こちらに降りかかる重力のみに集中し、アポロが影響をものともしないGになるまで外に流してやればいい。

 ただ……その負担は結構こっちにのしかかってくるのがキツイんだけどな!


「くっ……そ! 私の方はこれ以上出力を上げられないぞ……っとと!?」


「わわっ! ちょっとムゲン、なにバランス崩してるのよ! 危ないでしょ!」


「さ、サンキューセフィラ! ちと無理しちまった」


 世界神の制約のせいで魔力の使用に制限がかかっているところを無理に引き出そうとしたからか精神に負担をかけてしまった。

 セフィラが支えてくれてマジで助かった。さっすが、私の運命のヒロインだな。


 だが、このままでは重力の壁を突破することが……。


「大丈夫です師匠! 僕がやり遂げてみせます! これが……僕が皆さん英雄の仲間として再出発するための第一歩なんですから!」


 そう言いながらレオンは私の抜けた穴も埋めるかのように重力の魔力を巧みに操り、まるで海を割るかのように重力の壁を引き裂き後方へ流していく。

 左腕の魔導アームを軋ませながらも寸分狂わないその精密さはまさに完璧だ。


(そうかレオン、お前はずっとその腕を重力魔力で操れるよう努力していたんだな)


 新しい腕を得た日から、テルスマグニアの捜索メンバーに選ばれたその日から常にその腕を精密に操ることに執着していたのはこのためだったんだな。


「もう僕の力不足で誰かを悲しませたくない! アポロさん、そのまま進んでください!」


「うむ! よい覚悟だ少年よ! 我もその情熱に応えようではないか!」


 レオンが切り開いた道をアポロがさらに速度を上げて抜けていく。その速度にもはや暴風も雷鳴も追いつけない。


 ……そしてついに、重力の壁を総べて突破したと感じられた瞬間。


ボフゥン!

「抜けたあああああ!」


 分厚い雲さえ突き抜けついに私達はその中心へとたどり着くとができた。

 その眼下には、地上からは見ることができなかった天空の島の雄大な大地が広がっている。


 ただ喜ぶにはまだ少々早いようで……。


「ぬおっ!? 急に体の重しが消えバランスが……!」


「ってちょっとー! なんかグラグラして……落っこちてるー!?」


「アポロ! 早く体勢立て直して!」


「そうしたいのは山々なのだが……!」


 幸い落下しそうな地点はすでに島の上なので上陸はできそうだが、アポロ以外がこの高さから地面に叩きつけられてしまったら相当なダメージになってしまう。


「うおお……このくらいの魔術なら大丈夫のはず、『空気柔盾(エアクッション)』!」


「きゃ!」


「ワウッ(うわっす)」


 間一髪、地面に空気のクッションを設置することで落下の衝撃だけは免れることができた。重力壁で活躍できなかった分ここで名誉挽回だな。


ドズゥゥゥン!

「ぐおっ!?」


 あ、ただアポロだけはクッション用意してやれなかったけど。

 流石にあの巨体を包み込めるほどのものを生み出すのは今の私には無理だ。まぁアポロだし大丈夫だろ。


 しかしここが天空の巨島か。位置的には端っこのとこだろうがどんな島かまだ分からない以上慎重に行動を……。


「む?」


「あんたも気づいた? 周囲の視線……わたし達を見てる」


 ミネルヴァも感づいたように周囲からいくつもの魔力反応がこちらに近づいている。

 私とミネルヴァ以外はまだ体勢を立て直せていない。もし敵意を持つ存在なら私達が真っ先に対処しなければならない……そう、思っていたのだが。


「……うそ」


「これ……は……」


 そこに現れた者……いや、現れた者達・・に私とミネルヴァは言葉を失ってしまう。


 なぜなら私達に視線を送るその人々は、その誰もが青い皮膚をしており、頭部には同じような形状の角が生えていた。

 その姿は、私やミネルヴァにはとても印象深い……。


「旧……魔族」


 その島は……失われたと思われた旧魔族の生き残りが住まう、天空の楽園だった。


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