第11章 神器捜索 編

249話 開催『世界会議』


「世界各国の代表の方々、本日はお集まりいただき大変ありがとうございます。本日は不肖ながらこの私、魔導師ギルドマスターリオウ・ラクシャラスが進行役を務めさせていただきます」


 ここはヴォリンレクス城のとある一室。その中で長丸型の机を囲むようにこの地へ集まった各大陸の各国の代表達が座り、その後ろには護衛や補佐の者が立っていた。

 これまで私が関わってきた多くの大陸主要国家をはじめ、これまで息をひそめていた多種多様の小国もこの場に集まっている。

 そう、今日こそが新しい世界の在り方を決めるために定められた『世界会議』開催当日である。


 進行役は魔導師ギルドマスターとなったリオウ。そしてアドバイザーという形でこの私が補佐に入っている。


「まず最初の議題といたしますのは、各国家間における和平条約の提携です。国家同士への侵略行為を許さず、同盟条約を結んだ国家同士で争いが起きればすべての国家で問題を解決するため動く……というものです」


 さて、第一の問題はこれまでもこの世界で幾度か問題視されていた国家同士の侵略、争いに関するものだ。

 この世界でそういった争いというのは、主に旧ヴォリンレクス帝国による領土拡大のための侵略行為、そして新魔族の進行が大部分ではあったと思うが、それは大局的な視点での話でしかない。

 大小問わず領土や政治的な問題で国と国がぶつかり合うという問題は起きていたのだ。今世では私があまりそういった場面に立ち会わなかったから見えていなかっただけ……というよりたった一年しか冒険してないのだからそういういざこざに立ち会う方が珍しい話である。

 実際、私がアステリムに召喚される前にもどこからしらで争いは起きていた。


 今回定める条約はそういった争いが起きた、あるいは起きようとしている場合にすべての国家でその問題に介入し平和的解決を図ろうというものだ。


「しかし、それでは力の弱い小国はこれまで以上に立場が弱くなるのではないかな? 我らの住まう第三大陸は元が矮小であるがゆえにこれまで多くの小競り合いが起き、今の二大王国に落ち着いた。だが此度の条約によって領土拡大における発展が見込めなくなるとなれば、いざという時に……それこそこの条約が機能しない事態にでもなれば我々はただ蹂躙されるだけとなるであろう」


「なるほど、アレス王の言葉の通りだ。確かに我々は同盟という形で成り立ってはいるが、その中でも国家ごとのパワーバランスには明確な差がある。特にギルドを所有してる立場にあるヴォリンレクス帝国とメルト王国は武力、政治どちらにおいても頭一つ抜けている」


 今回の議題に最初に疑問の声を上げたのは第三大陸のアレス王だ。そしてその声に同調するようにお隣のトレス王国の王様が条約の問題点を指摘してくる。

 そしてその指摘は的確だ。だがこの説明だけでは国家として劣る彼らが不安を口にするのも当然と言える。


「アレス王、トレス王、お二人のご指摘はごもっともです。確かに現状この条約に納得していても、この先その均衡が崩れないとは言い切れないのは事実」


「うむ、余としてはこの先も同盟国の不利益になるような国家にはせぬと言い切りたいが……余が亡くなってから先のことなど何一つ保証できぬしのぅ」


 ディーオの言う通りだ。"国"というものは世代によっていくらでも変化していくものであり、何世代も先の自分の国を動かす権力者がどんな思想を持つかなど誰にもわかりはしないのだから。

 だからこそこの『世界会議』はそういった問題をどう解決していくかというのを提案していく場でもあるのだ。


 いち国家の暴走を他の同盟国すべてで協力し対処するとはいうものの、裏で大国同士が手を組んでいたという事態になれば手を付けられなくなる可能性も否定できない。


「ですので今回我々・・がご提案するのは、国家同士の協力以外に設けるもう一つの"抑止力"の提携です」


 リオウの言葉に会場にどよめきが起こり始めていく。

 それも当然だ、"抑止力"などという穏やかでない表現をするからには自分達の国家に不利益をもたらすものなんじゃないかと不安にもなるだろう。


「今回の条約と共に我々四大ギルドは新たに『ギルド同盟』の発足を発案いたします」


 会場のどよめきがさらに勢いを増していく。

 『ギルド同盟』……その字面から大方の予想はつくとは思うが、具体的な内容に至るまでではない。会場の代表達はその詳細を知ろうと誰もが視線と意識をリオウへと集中するのだった。


「そう難しい話ではありません。『ギルド同盟』とは文字通りの意味、これまで行ってこなかったギルド同士の連携を強めこの世界会議のような各国の橋渡しとなること。そして……特定の国家が暴走し蛮行に走った際にすべてのギルドが全国家との関係を考慮せず一つの組織となり鎮圧に当たる。というものです」


「そ、それはつまり、仮にヴォリンレクスやメルトが侵略行為に走ったとしてもギルドはそれを諫めるために動くと。そういうことなのか?」


「ええ、たとえ支援国家であろうと国家間の秩序を乱していると判断すれば我々ギルドは一組織となりその国を正すために動くでしょう」


 どこかの小国の代表が発した疑問にリオウはためらいなく宣言する。

 他のギルドマスター達もリオウの言葉に異を唱える様子はまったくない。すべて了承のうえでということだろう。


「ふむ、反論はないようですが。この件に関してはヴォリンレクス、メルト双方同意あっての話とお見受けしてよろしいのでしょうか?」


「我々は事前に各々が支援しているギルドのマスターより詳細を聞かされ了承している。これは今後の世の中に必要な措置であると。ディーオ殿もそうであろう?」


「ぬっ!? そ、そうであるなー……確かにそんな話も聞いたような……」


「はい、我々ヴォリンレクスも先日リオウ殿とヒンドルトン殿より詳細を伺っておりました。此度の同盟の発足は将来的にも均衡の大きな助けになると陛下もご納得されました」


「うぬ! そうそう、そうであったな!」


 ディーオのやつ……仮にも主催国家の代表なんだからもちっとしっかりしてくれよ。パスカルさんのナイスなフォローでどうにか難は逃れたみたいだが。

 まぁあいつもあれで頑張ってはいるからキツくは言えないけど。今日は後ろに控えてるサロマとパスカルさんに大分お世話になりそうだな。


 さて、第一の議題もここまで進んで大分具体的な内容になってきた。不安を抱いていた多くの国家代表も補佐や隣の代表らと意見を交わし合っているが、まだ大きな問題点や不満の声は上がっていない。

 多少不安は残るだろうがこのまま各内容を決定事項とし次へ……。


「確かに、国家の暴走を収めるためにギルドの結託は大きな影響を与える……それには納得しました。ですが、あなた方『ギルド同盟』が野心を持ちわたくし達に牙をむく……そういった事態もあり得るのではなくて、魔導師ギルドマスターさん?」


 とは流石に簡単にはいかないか。声を上げたのは第四大陸の大国家セレスティアルの代表……ラフィナだ。

 誰にも得があり説得力のある言葉には特に疑ってかかる……か。流石に用心深いというか何も信じてないご様子で。……ちょっとは私のせいでもあるけど。


 しかし、彼女の言葉にも一理あると多くの代表がその表情に不安の色を示していく。

 ギルドすべてが一つの組織となればその辺の小国よりも大きな力を持つことは明白だからな。


「確かにその不安ももっともです。ですが、もし万が一そのような事態が訪れたのであれば、その時は同盟国家すべてでギルドの暴走を抑えればいい。ギルドにどれだけの力があろうと、協力した国家に攻められれば維持することはできないでしょう」


「すべてのギルドが壊滅してもいいということですか?」


「それが必要とあらば構いません。ギルド壊滅後、国家で協力し新たな勢力を発足すればなにも問題はない。ご納得いただけましたでしょうか……ラフィナ王女?」


「……すべてに納得してはいません。ですが、今は妥協し受け入れましょう」


 ふいー、リオウの的確な対応のおかげで何とかこの場は丸く収まったみたいだな。

 しかしなんかリオウとラフィナの応対はどこかとげとげしいというか……お互いに挑発的なように感じたんだが、気のせいか? この二人ってどこかで会ってたっけ……。


 まぁ細かい事情は今は置いておこう。

 とにかく、これで本当に問題点や不満を指摘する声がなくなったな。


「では次の議題に移りましょう。今日まで我々の共通の"敵"という認識であった……『新魔族』に関する問題です」


 そう、とにもかくにもまずは新魔族関連の認識を世界規模で改めさせなければならない。

 新魔族は敵……これは今現在世界中の誰もが共通して持つ認識として歴史の中に刻まれてきた。


「すでにいくつかの主要国家の代表方はご存じとは思いますが、我々はその認識を改め新魔族……いえ『始原族』をこの世界の新たな種族の一員として受け入れる方針を進めております」


 リオウの宣言に再び会場にどよめきが起きる。

 あまり新魔族と関わりのなかった小国には初耳だろうし、そもそもヴォリンレクスや第五大陸の国家以外ではピンとこない者の方が多いだろう。

 例外としては近年関わりのあった第三大陸アレス王国、第四大陸セレスティアルなどの私も関わった国がほとんどだな。


「しかし新魔族を受け入れるとは……」

「知識としては理解していても実際にこの目で見たことのない我々には不安がありますね」


「皆様、不安になることはありません。そのためにこの会議にはその彼らの代表もお呼びしているのですから」


 その衝撃的な一言に会場のどよめきが一層強まる。そしてリオウの視線の先にいるであろうその"代表"へと周囲の視線も集中していく。

 そんな周囲の視線が集まった先にいる人物は……。


「……んがっ!? ふあ~退屈過ぎて寝ちゃってたぞー。 あー? なんだお前らじろじろこっち見てー?」


 ディーオの隣の席で眠りこけていたルイファンが目を覚まし呆けた顔で辺りを見回していた。

 仮にも代表がこんな調子でいいのかと疑問にも思うだろうが、新魔族で今一番権力を持ってる人材というと彼女なのだから仕方がない。

 ちなみに今日ばかりはルイファンも露出の少ない正装でこの場に座っているぞ。


「あれはねーさまに服従を誓おうと躍起になってるいやらしい愚民の視線なのです」


「違うよミカーリャ。ルイファン様、あれは皆この世界で僕達と仲良くなりたいけど緊張して口に出せないって顔ですよ」


 ルイファンの背後からフォローするように前に出てきたのは妹であるミカーリャと、私にとっては懐かしのあの船で出会った馬面さんだ。

 ただ、どちらもあまりフォローになってないのが不安なところだが……。


「なんだそういうことかー。ハハハー! 安心しろー、アタイはディーと約束して始原族の皆がこの世界で暮らせるよう努力することにしたぞ。ただ、まだまだ血気盛んな連中がいないこともないんだー、流石のアタイでも一人じゃ面倒見切れないからなー」


 そう豪語するルイファンに誰もがあっけに取られていく。中にはこんな幼女が新魔族の代表だとまだ信じきれてないのもいるだろうな。

 新魔族としてわかりやすい馬面さんのおかげでルイファン達が新魔族グループだと主張はされているが。


 とにかく、あっけに取られているだけでは話は進まない。


「彼女の言うように彼らの中にはまだこの世界に敵対心を持つ過激派も少なくありません。ですが、正式な長を持つ団体はこうして我々の意思に賛同していただいております。つまり過激的な新魔族への対策も今後の我々が向き合わねばならない問題ということにもなるのではないでしょうか」


 その言葉に同調を示す者、未だ不安を感じる者と反応は様々だがこれも大きな反対意見は出てこない。だが、大半は不安の方に傾いてるといった感じだな。

 そんな空気の中、一人の男が立ち上がり……。


「皆さん新魔族を受け入れるというのは不安があり同意できない問題であるのは確かな事実です。しかし、それは他の多くの他種族にも言えることではないでしょうか?」


 そう意見を述べ始めたのは第二大陸レインディアの王リオンだ。

 あの国はすでに新魔族であるサティを受け入れていることもあり事情に精通しているため選ぶ言葉も適格だな。


「現在我々の世界は多くの国で人族以外の受け入れを拒む傾向にあります。その理由の大半は彼らを理解できないからだといいます。つまり、現在我々が新魔族に抱いている感情はそれと大差ないのではないでしょうか」


 リオンの言葉に多くの代表が思い詰めるように顔をしかめていく。

 長い歴史の中で人族と他種族の中には深い確執が生まれ、それが今日まで続いている。


「ならば、我々がまず行うべきは他種族を受け入れるための意識改革だと私は意見を述べさせていただきます」


 流石他種族であるリアを王妃として迎え入れようという王様だ、意気込みが違う。

 まぁその件についてはさておき、今はなかなかにいい意見だ。会場の意識も"新魔族への不安"から"他種族"の受け入れにシフトしつつある。


 となれば、議題は次へと進んだ方が話は早いだろう……と私はリオウへ目くばせし、リオウもそれに賛成したように頷くと。


「リオン王、貴重なご意見どうもありがとうございました。まさに我々の世界が抱える問題の一つに『他種族との確執』が存在します。なので、次の議題はその意識改革に関する問題と……『人族主義』について、となります」


 この議題は……多くの代表達も気にしていたことだろう。なぜなら今回世界会議に集まった代表達の中に人族主義が主体の国家の人間はいない。

 その本丸ともいえるシント王国が参加していないのだから当然ではあるが、そうなると今度はそのシントをどう扱うかが議題に挙がってくるわけだ。


「他種族との確執は何も自然に深まったわけではありません。その背景には必ずといっていいほど『人族主義』の存在がありました。そしてその主体であるシント王国、さらには“女神政権”こそがその悪意を助長してきたのではないでしょうか」


 長い歴史の中、他種族迫害の陰にはどこを見ても人族主義の存在が見え隠れしていた。しかしそれは巧妙に隠され疑問に思う者も少なく、昨今に至るまで勢力を伸ばし手が付けられないほど強大な組織となってしまったのだ。

 そしてその母体である“女神政権”はこの世界会議への参加を拒み今もなお自分達の主張を掲げている。


「確かに、今までは彼らの影があったからこそ我々はその主張に無意識に乗せられていた……」

「まるでその主張が世界の当たり前というように浸透していましたからな。“女神政権”の影響力はそれほどまでにすさまじかったということだ」

「加えて旧ヴォリンレクスのように彼らの主張に異を唱えない強大な国家も増え我々は声も出せずにいましたからな」


「その通りです。しかし、今の彼らの主張に以前までの力はありません。そもそも、“女神政権”を抱えるシント王国がなぜあれほどまで強大な国家となり得たのか皆さんはご存じですか?」


「それは……そう、まさに“女神”の存在だ。遥か昔、歴史の始まりに現れた女神が力と技術を与え繁栄し強大となった」

「その“女神”は悠久の刻を生き、今もなお彼らに繁栄をもたらしているという。“女神”の存在がある限り彼らの安寧は続くだろう」


 そう次々と飛び交う女神政権のこれまでの実績に代表達の表情はさらに不安のものへと変わっていく。

 今までどれだけの国家が“女神政権”の人族主義に異を唱えようとその主張は長くは続かなかったことは歴史が証明してしまっているからだ。

 どれだけの大国が手を組もうと、いずれは“女神政権”に飲み込まれてしまうんじゃないか……と。


「皆様、静粛に! 何も不安になることはございません。すでに女神政権はその力を失っております」


 リオウは代表達を安心させるよう真実を述べていくが、それでも不安がすべて取り除かれるわけではない。中にはやはり"信じられない"という声も上がっている。


「これは偽りではありません。女神政権はその中核となる“女神”を失い、今は以前までの威厳を保とうと必死に体裁を取り繕っているだけなのです」


「“女神”を失っただと? そんな話は聞いていないが……」


「彼らにとっては死活問題ですから、どうにか隠ぺいしようと躍起になっているのです。つまり、今こそ古き『人族主義』を撤廃し、我々は新たな主張を掲げるべき時ではないでしょうか」


 この言葉も信じる者、信じない者と多く意見が割れいていくが、やはり“女神”という存在自体彼らにとっては曖昧な存在なため主張を決めかねているようだ。


「リオウ殿、本当に女神が彼らの手から失われたという証拠はあるのか」

「そうだな、確たる証拠でもあれば我々も納得はするが……」


「証拠……ですか。それは……」


「そこは私から説明させてもらおう」


 論より証拠を出せ、と言われるとリオウではもう対処できないだろう。だからこそここはこの私が満を持して登場させてもらうとしようじゃないか。


「まず自己紹介させてもらおうか。私の名は-魔導神-ムゲン、この『世界会議』開催を提案させてもらった者だ」


 子の場こそ私が真に“魔導神”として世界に認知される晴れ舞台……なのだが、まぁ当然のごとく誰もピンと来てなくて疑問を頭に浮かべているな。


「魔導神?」

「魔導神とはいったい……」


「そうだな……簡単に言えば、“女神”に代わるこの世界に新しい影響を与える存在。みたいなものとして認識してくれればいい。あとは……証明ってわけじゃないけど、まずは私がどんな存在か認知してもらおう」


 その言葉と同時に私はこれまで人の目には映らないようにしていた『世界神の枷』を誰にでも見えるよう可視化させる。

 すると……。


「む、ムゲン殿……それはいったい……」


「なんという圧倒的な……先ほどまで以前出会った頃とそう変わらぬ雰囲気であったのに」


 この広い会場を埋め尽くすような圧倒的存在感に誰もが口で表現できずに声を出せないでいる。以前私と出会ったことのある代表達もその雰囲気の変化に圧倒されているほどに。

 まぁこれくらいにしておこうか、一般人にアレイストゥリムスの神気は刺激が強すぎる。


 そんじゃ本題に入らせてもらいますかね。


「実は、先の戦乱で私が“女神”と対話を交わしすでに女神政権との縁を切りこちら側についてもらったというわけだ」


「なんと、“女神”と交渉を?」

「本当に実在したというのか……」


 これも未だ半信半疑な者がほとんどだが、先ほど私が見せた人ならざる気に当てられ完全に虚偽ではないと感じてはいるのもあるだろう。


「信じられないのも無理はないが、女神が我々と手を組んだのは事実だ。そしてそれは、今後の脅威に対抗するためのものでもある」


 まだ理解が追い付いていない代表達だが、私はお構いなしに話を進めていく。

 こういうのはいちいち理解してもらうより先にすべての事実をぶちまけた方が後で冷静に対応できるものだ。


「すでにほとんどの者が周知のことだとは思うが、先にの戦乱で第五大陸の中心からやや南西の上空に現れた巨大な空間の裂け目はご存じだろうか」


 その裂け目とはもちろん終極神が生み出した事象の亀裂だ。この遠く離れた中央大陸からでも確認できるその亀裂はここに集まった代表達も当然全員確認しており、その不気味さから得体のしれない恐怖を与えている。


「あ、あれの情報は聞かされていたが……本当なのか、あの中からこの世界を滅ぼす存在が現れるというのは……」


「本当です。それこそが次の議題であり最も重要な問題……『終極神による世界消滅の危機』なのです」


「うむ、今後の世界の在り方や意識改革、相いれない国家への対応も重要だが、すべてはこの脅威を乗り越えぬことには始まらぬのだ」


 "世界の脅威"という途方もない議題だが、ヴォリンレクスをはじめとした多くの大国が同調を示すことにより小国の代表達もその信憑性を理解しはじめていく。


「この脅威は新魔族や女神政権も関係ない……この世界に生きとし生けるすべての共通の敵だ。詳しくは手元の資料に詳細を記したページがあるが、この脅威に対抗するためにはまず世界各国の協力が必要不可欠となる」


 いちいち全員に口頭で説明していくのも面倒くさいし時間もかかるので、新魔族が以前に住んでいた世界と終極神に女神とこのアステリムへの影響をまとめて配っておいた。ちゃんと目通しとけよ。


「しかし、協力といっても何をすれば?」


「そこまで難しいことを要求するつもりはないが。まずは災害への対策を強め、敵対者が現れた際の防衛強化も必要だ。ヴォリンレクスやメルトからも支援はあるだろうが、最悪自分の国は自分達で守ってもらう必要があるからな」


 私達が助けられるのはあくまで私達の手が届く範囲に限られる。全知全能のアレイストゥリムスと繋がってる身ではあるが、悔しいことに私自身が全知全能となったわけではない。

 手が届かない範囲というものは必ず存在する。


「そしてもう一つが、私を含む七人の英雄達にできる限りの支援を行ってほしい、というものだ。おそらく、これからその者達が各世界を巡ることとなるだろうからな」


「英雄?」

「魔導神殿、その英雄というのは……」


 そう、今この世界の代表が集結する場で私達の存在を明らかにしておかねばならない。

 彼らが終極神に対抗するための"力"を手に入れるため、円滑にことを進められるように。


「では今こそ紹介しよう……。私と共に終極神の脅威への最前線に立つ英雄達を」


 見ていろ終極神……ここからが私達の反撃だ!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る