244話 集いし英雄達
一方、外の世界ではムゲンが飛び込んでいった『世界の中心』へと繋がる穴の前で二人の女神が静かに佇んでいた。
「ムゲン……大丈夫よね」
「あの人なら、きっと戻ってきます。それとも、あなたはゲンさんのことを信じていないのかしら?」
「んなっ!? そんなことないわよ! あたしはムゲンのこと世界中の誰よりも信頼してるんだから!」
と、二人のこの論争ももうお馴染みというもので、そんな微笑ましい(?)光景を犬はその後ろから見つめていた。
「ワウ……(また始まっちゃったっす。ご主人、早く帰ってきてくだ……)」
ゴォン!
「きゃっ!?」
「なに……この衝撃」
その時だった……大地が揺れると同時に、世界の中心へと続く穴から物凄いエネルギーが放出されると、それは天へと伸び一本の柱のような形を作り出す。
そしてその柱の中心、尋常ではないエネルギーの中にうっすらと……一つの人影が浮かび上がる。
その正体とは……。
「ねぇ、もしかしてあれって……!」
「ええ、間違いありません」
「とうっ! ただいま! セフィラ、クリファ! 約束通りちゃーんと戻ってきたぜ!」
そう! その正体とはみんな大好き最強魔導師ムゲンさ! 世界神の試練を乗り越えようやくここへ戻ってくることができた。
ほら、セフィラとクリファも喜びのあまり涙を流して私に抱き着こうと……してこないな。
「「……」」
というか二人とも私の姿を見てなぜか唖然としているようだ。まぁそりゃこんな突然帰ってきたらビックリもするか。
「いやー、驚かせて悪かった。だが安心してくれ、私は正真正銘キミ達の大好きな超イケメン魔導師ムゲン君だぞ。だから遠慮せずに……」
「あ、そうじゃないのムゲン。私達が驚いてるのは……」
「その……後ろのモノはなんなのでしょうか……」
後ろのモノ?
二人が何のことを言っているのかわからないので、とりあえず二人の視線の先、私の背後に振り向くと……。
『……』
「ってなんじゃこりゃ!?」
そこには謎の物体……いやこの形は、よく見れば世界神の顔だこれ! の、ミニサイズ版がなぜか私の背後にふよふよと浮遊しているじゃありませんか!
しかも、何やらその顔から六本の鎖のようなものが伸びており、それが繋がっている先は……。
「うおおおい! なんか私の体と繋がってるんですけどー!?」
両腕と両足に一本ずつ、そして背中に二本と私の肉体に埋め込まれるようにそれは繋がっていた。しかし私は鎖の重さも繋がっている感覚もない。
こんな大層なものと繋がってるっているのに何も感じないって逆に怖いぞおい。
とにかくまずは……。
「えーえーこちらムゲン、応答せよアレイストゥリムス。この状況を説明しやがれくださいコノヤロー」
事情に一番精通してる……というより当事者に話を聞くのが一番手っ取り早いだろう。
[それは枷であると同時に最後の試練でもある]
お、返信きた。ここに戻ってくる前、アレイストゥリムスとその存在を重ね合わせはしたが全然実感が湧かないが、もしやその枷とやらが関係しているのか?
「そういえば、戻ってきてから事象の流れが全然感じられなくなったような気もするぞ」
[※※と存在を重ねた今、キミはこの世界すべての事象を司ったといってもいい]
[しかし急激な変化は同時に崩壊をもたらす]
確かにその通りではあるが、私は別に事象の力をむやみやたらに使おうとも思っていない。それでも必要なことなのだろうか。
[キミは元来事象の内側の存在]
[事象の因果力を内側で使用する際に加減をする方法を知り得ない]
[すべての力を枷で抑えられながら管理者としての力を使いこなす術を見出していく]
[それがキミの役目であり最後の試練となる]
「なるほどね。ま、確かに私も自在に圧開けるほどこの力の詳細を把握してるわけじゃないからな。実験しようとしてとんでもないことにでもなったら目も当てられないってことだ」
「よくわかんないけど、なんかすごいってことね」
と、これもまた終極神に対抗するための修行の一環だということでセフィラ達も納得はしてくれたみたいだが。
「理由は納得したけど……結局どうにかできないのそれ? そんなの浮かべてる人とあんま近くで歩きたくないかも」
「それに、一緒にいるとずっと見られてるみたいで落ち着きませんね……」
ちょっと待ってくれ、このままでは私の愛しいヒロイン達が半径3メートルに近寄ってくれなくなり、ヒロインがちょっと離れた位置に立っている主人公というとても悲惨な状態になってしまう。
「これがずっと出っ放しだと私が悲惨な目に遭ってしまうので今すぐ改善を要望する!」
[キミの意思で自由に移動と姿を消失、復元は可能だ]
[それでも見える者には見えてしまうがな]
そんなことできるなら先に言ってくれ。
てなわけでちょちょいと背後のミニ世界神に意識を向けて……はい消えろ!
「あ、なくなったわよムゲン」
「よかった……これで最悪な結果だけは逃れられたぜ」
[今回は解説のためこうして対話に応じたが、通常※※が試練に干渉することはない]
[今後応答を受け付けることはないということを念頭に置いておけ]
まぁいつまでもアレイストゥリムスにおんぶにだっこなんて、世界の救世主としてカッコ悪いよな。
神様から貰った力を雑に使うだけで勝手に世界が救われるなんて甘い話じゃないからな、私の物語は。
「よし、とにかくここでの目的は果たしたわけだが……そういや結局、私が穴に飛び込んでからどんだけ時間が過ぎたんだ?」
あの空間での試練はどれだけの時間を費やしたのか感覚があやふやになってしまった。第二の試練は数日戦っていたような感覚もあるし、第一の試練に至っては体感数億年といったところだ。
セフィラ達は特に時間を気にした様子もなく私を迎えてくれたので実際は驚くほど日数は経っていないと思うのだが。
「大丈夫よゲンさん。あなたが穴に飛び込んでからまだ数時間も経っていませんから」
「え、そんだけ? てっきりもう数日は経ってるような感覚だったんだけどな。そんなにズレてたか」
「ワフ(なんすかご主人、ついに脳がボケてきたっすか)」
「んなわけあるか。精神は一度じじいを過ぎたこともあるが、今の私はピッチピチの若者脳だ。それにお前だって一緒にあの空間にいたんだから……っと、これは違ったか」
「ワウ?(変なご主人っすね?)」
あの空間に現れた犬はあくまで別の事象から移された仮の存在にすぎない。だからここにいる犬があの戦いのことを覚えているはずもない。
なるほど、確かに事象の外側を感じられるようになった私の感覚は内側とのズレがまだ大きく生じている。
管理者としての力を使いこなす……最後の試練、やってやろうじゃないか。
「それで、これからどうするの? ここでやることは終わったんでしょ?」
「おっとそうそう、これで私達の用事も終わりだからな。一度ヴォリンレクスまで戻るぞ」
これ以上ここに長居する必要もない。どうやらここの封印が終極神の進行を妨げているという話でもあるようだし、私達も早くここから去り、再び不可侵の領域として誰の手にも届かない聖域に戻すべきだろう。
それに、順調に事が進んでいればもしかしたらあいつらも戻ってきてるかもしれないしな。
「というわけで……行きと同じ方法で結界の外に出るぞ。術式展開、『
と、行きと同じ要領で魔術を発動させようとするが……。
「……
「え……? 入るって……その中に?」
セフィラもクリファも浮かない顔でこちらを見ている。何か問題でもあったのかと発現させた魔術を見てみると……。
「ってなんじゃこりゃ!? ちっさ!?」
そこにはサッカーボール程度の大きさしかない小さな空気の球体が浮かんでいるだけだった。
流石にこれに入れというのは無理がある。
「ゲンさん、大丈夫? やっぱり疲れてるんじゃ……」
「いや、そんなことはないんだが……。いや待てよ……まさか」
まさかと思い私はさらに力を籠めて『
「あ、大きくなった。なんだ、最初からやりなさいよ」
「違うんだセフィラ……これでも精一杯やってるんだ。ただ、以前より体の魔力コントロールがものすごく複雑になってるだけで!」
ここまでやってようやく理解した、これ絶対世界神が施したあの"枷"とやらのせいだろ。
事象の力が私の魔力回路に複雑に絡み合ってるせいで魔力が思うように流れていかん!
「ちょっとー! ヘルプヘルプ!? アレイストゥリムスさん、ちょっとだけ力の使い方教えてもらってもいいですかね! このままじゃ帰れんくなる!」
……が、呼べど叫べど一向に返信は来ず。
「チクショウ! あのヤロウ本当にこれ以上応答する気ねぇな!」
「ど、どうするのムゲンムゲン!? あたし達このままここに置いてけぼり!?」
「だ、大丈夫だ! 大丈夫……。この程度の問題などこの私にかかればすぐに解決してやるさ! だから……ぬおおおおお! 安定しろ私の魔力ううううう!」
「が、頑張ってゲンさん。わたしには応援しかできないけど」
「あ、あたしも応援するわよ! そうね……帰ったらチアリーダーの服も着て応援してあげるから!」
「よっしゃー!」
ここを脱出した後に応援しても意味なくね? とも思うが二人のチア姿はそれはそれで見てみたいので、何が何でも脱出してやらぁ!
「ワフゥ……(まだまだ前途多難っすね……)」
その後……数日かけて私達は無事ヴォリンレクスまで戻ってくることができた。
……いや、無事と言っていいのかどうかはわからないが。
「いやー、あれから散々な目にあったな……」
『最果ての地』からヴォリンレクスまでの帰路において、たまの野営で魔物と遭遇することがしばしばあったのだが……。
「まさかムゲンがあんなにポンコツになってるなんてねー」
「くっそ、セフィラにそう言われるのはものすごい屈辱だが事実なので言い返せん」
そう、脱出からここまでまともに魔術が発動されず、窮地に陥る場面もしばしば訪れてしまうほどに私はまともに魔力を扱えずにいた。
幸い帰路にはヴォリンレクスの兵士が付き添い、そこそこ強い魔物でも犬が『
「ゲームで言えば強制的にレベルを初期段階に戻された気分だ……」
「そう気を落とさないでゲンさん。たとえ魔術が使えなくてもあなたには他にもいいところが沢山あるんですから」
おおクリファよ……どれだけ私がダメダメになっても支え続けてくれるヒロインの鑑だよ。
「私のいいところというと、例えば?」
「えっと……どんな時でも楽しそうなところ、とか?」
なぜ疑問形なんだ……。
「とにかく! こうして無事ここまで戻ってこれたんだ! まずはディーオのところに向かおう」
帰りの途中、ブルーメの魔導師ギルドにも寄りはしたが、ヴォリンレクスで行われる『世界会議』に出席するためギルドマスターであるリオウもこちらに来ていて会えなかったし、おそらく皆この地に集まっているだろう。
まずは市民街を抜けて王城のある貴族街まで……。
「お、そこにいんのは……もしかしてムゲンか!?」
おっと、この武骨ながらも威勢のいいワンワン声は……。
「カロフか! それにリィナも……もう帰ってたんだな」
「ま、おれにとっちゃ楽勝な仕事だったぜ。ちと暑かったことを除きゃあな」
「ムゲン君達もおかえりなさい」
二人だけか。今日はアリステル達とは別行動なんだな。
まぁ彼女も今やディーオを支持するヴォリンレクス貴族家筆頭だし忙しいくもあるか。
「しかし今日はどうして市民街まで降りてきたんだ? 確かお前達の国からも王族が『世界会議』に出席するからてっきりそっちについてると思ったんだが」
「そうなんだけどよ……ちょっと面倒な案内役を頼まれちまってな……」
「案内役?」
いったい何を案内しているのかと疑問を投げかけようとしたが、それはカロフ達の後ろから走り寄ってきた一人の巨漢によって私はすべてを察っすることとなった。
「おおおおお! 盟友ではないかー! 貴殿とこうしてまた出会えるとはこれもまた一つの奇跡! 我はこの再会をとても嬉しく感じるぞ!」
「相変わらずだなぁ」
人族の姿をしているが、この男は紛れもなく私が第一大陸で出会った龍族の青年……アポロだ。
こいつらの捜索はカロフ達に任せていたからもしやとも思ったが、やはりそうだったか。
「久しぶりね。元気そうで何よりだわ」
「ミネルヴァも、アポロと仲睦まじそうでなによりだ」
どうやら出会った時の擦れた感じもなくなってあの頃よりも全然生き生きとしてるな。
あれからミネルヴァなりに生き方を見つけたってことだ。
「ねぇムゲン。その後ろの人達は……」
「ん? ああ、セフィラとクリファのことか」
二人は初対面だしなここでバッチリ紹介しておこう。
「ふっふっふ、彼女達は私の生涯のヒロイン! もうお前達のことを羨ましがるだけの私じゃないぜ!」
「なんと!? つまり盟友の伴侶ということか! これは名も名乗らずに失礼した! 我はアポロニクス・タキオン・ギャラクシア。栄光ある龍皇帝国の……」
「はいはいそういう長ったらしい挨拶はいらないの」
ミネルヴァに口上を止められしょんぼりするアポロ。そして紹介されたウチのヒロイン達は。
「ま、永遠のヒロインって意味では伴侶っていうのも間違ってないかしらね。セフィラフィリスよ、よろしくね」
「あら、わたしは伴侶でも全然問題ありませんけど? 真のヒロインであることに変わりはないですし。わたしはクリファリエス、よろしくお願いしますね」
「ちょっと、何よ真ヒロインって」
こっちはこっちでいつもの調子だな。
ただ、そんな私達の様子をミネルヴァは意味深に見つめてきて……。
「私達がどうかしたのか?」
「どうやら、あんたもその悲しみを癒して一緒に進める女性に出会えたんだなって」
「お前……その言葉は」
それは……忘れすはずもない。その言葉はあの日ミネルヴァとヘヴィアの呪いを消し去った際に夢の中でヘヴィアが私に語った……。
「あの最後の瞬間、一瞬だけあいつの気持ちが流れてきてたの。あんたの幸せを願う……あいつの気持ちがね。だから、一応あいつの分まで言っとくわ、おめでと」
そうだったのか……。
世界神に与えられた第一の試練、そこで私はヘヴィアとの幸せな世界の可能性を見た。だがそれを選ばずこの道を選んだ私にとって、ミネルヴァの祝福は一つの救いでもある。
「して盟友よ、此度は我の力が必要だということだが? 必要とあらば今すぐにでも力を貸そう! さぁ、遠慮なく申してくれ!」
「気持ちは嬉しいがそう焦んなって。物事には順序があるんだからさ。まずはこの国の王様に帰還報告しないといけないしな」
「うむ、確かにその通りであるな! 我としたことがことを急いてしまった! では早速向かおうではないか!」
「ったくこのオッサンは……。ま、どうやら再開の挨拶も済んだみてぇだし、皇子さんとこ行くなら俺らもついてくぜ」
「そうだね、『世界会議』出席国の代表も着々と集まってるって話だし。私達もこれから忙しくなるよカロフ」
こうして私達はカロフとリィナ、そしてアポロとミネルヴァを加えてディーオ達が待つであろう王城へと向かうこととなった。
そのまま思い出話や第一大陸でのカロフとアポロの激闘などなど、語りつくせぬ話をしてるうちにもう城門前までたどり着いてしまった。
というかなんでお前ら本気で
「次はぜってぇ負けねぇ……」
「うむ、我はいつでも挑戦を受けて立つぞ」
まぁその話はまた置いといてだ。どうやらディーオ達は会議室にいるということなのでそこに通してもらうこととなり、扉を開けて中に入ってみると。
「む? おお、ムゲンではないか!」
「ムゲン様、セフィラ様、クリファ様。ご無事で何よりです」
すぐ手前にいたディーオとサロマがいち早く私達に気付きこちらに近寄ってくる。
「よくぞ戻った! むむ、カロフ達と……第一大陸の"龍帝"殿も一緒であったか。余の帝国はお気に召してもらえたかの?」
「うむ! 流石は今の世を代表する大帝国と言うべきか! 大変参考にさせていただいた。ヴォリンレクスの皇帝にはこのような機会を与えてもらい誠に感謝の至りである!」
「それはよかったのだ! 規模が大きくとも小さくとも、これからは同じ王として手を取り合うことが大切だからの!」
どうやらアポロとディーオは出会って間もないというのにすでに有効な関係を築けているみたいだ。
まぁこの二人は出会う以前から気が合いそうとは思っていたけどな。
と、そんなことを考えている間にディーオ達の奥からまた人影が表れ。
「こうして戻ってきたということは、お前の用事も終わったということだな、ムゲン」
「セフィラとクリファもお疲れさん。怪我もないみたいで安心したよ」
「レイ、サティ。お前らも戻ってたか」
第四大陸へと向かった二人もこうして戻ってきた……ということはだ。
「久しいな、限。お前のことだからとっくに日本に戻っていると思っていたが」
「おひさし……です」
「おおーゲンちゃんだー! おひさおひさー!」
レイ達の後ろからさらに現れたのは、第四大陸で私が出会った異世界人……佰手星夜。この世界に戻ってきて初めて出会った日本人ということで印象深い人物だ。
そしてその傍らに寄りそうドワーフ族のミーコ、精霊族のフローラも相変わらず一緒で安心した。
「いやー、一度日本に戻ることは戻ったんだけどな。ちとこの世界でやり残したことがあったもんでな」
「そうか、まぁお前らしいといえばそうなんだろうな。しかし、一度でも戻ることはできたんだな」
「ええ、わたしの力で」
「クリファはもともと時空を超越する力を持っててな。とまぁその辺も踏まえて話したいことは山ほどあるんだ。アステリムと地球じゃ時間の流れが違うとか、お前やケントがテレビのニュースで報道されてたりとか」
あれを見たときは正直ちょっとびっくりしたな。まぁおかげでまた気持ちがアステリムへと向いたきっかけとも言えるが。
「そうか……時間の流れが。あちらの世界への未練は捨てたつもりだったが、こうして現状を知る者から話を聞くとやはり気になるものだな」
「せや……さま。こきょ……恋し……です?」
「戻りたい……というわけじゃないさ。オレはお前達と生きていくと決めているからな」
「もー星夜ったら、また自然にそうやって嬉しいこと言ってくれるんだからー」
星夜やケントはもうこの世界で生きていくと決めた身だからな。ただ、やっぱ故郷ってのは捨てられないものだよな。
私だって日本で15年過ごしたが、アステリムを完全に過去のものとすることはできなかったものだ。
というか、故郷というとそういえば……。
「ヴォリンレクスは、確かミーコの……」
前皇帝の時代の話ではあるが、ミーコの故郷はヴォリンレクスに滅ぼされた。
その仇の国にこうして足を踏み入れるというのはあまりいい心境ではないんじゃないだろうか。
「だじょぶ……です。いぱい……謝罪された」
「う、うむ……前皇帝時代のこととはいえ余の帝国が武力で彼女の国を取り込んだのは事実なのだ。そのことについて余は責任を取らねばならぬと考えておるし、奴隷問題も早急に解決していくと彼女に謝罪させてもらったのだ」
「みな……元気だた。ゆくりで……いです」
「ミーコちゃんも久しぶりに故郷の人達に会えたし、結構元気にしてたからそれ見て安心したんだって。だからヴォリンレクスの王サマもそんなに深く心病むことないよー、って言ってるんだよ」
フローラによるミーコの通訳も相変わらずか。こいつらもなんだかんだいいメンバーだよな。
「し、しかしそれでは余の気が……」
「ヴォリンレクス皇帝、恐れながら申し上げさせてもらいますが。今我々が最優先すべき事項は限の言う"世界の危機"。それを解決するまでは他の案件に手を回す余裕はない……そうではないでしょうか」
「た、確かにその通りではあるが」
「だから……おわてからで……いです!」
「ミーコもこう言っています。なので、まずはやるべきことを……」
「ディーオ様、彼らの言う通り我がヴォリンレクス帝国は今後世界の危機に立ち向かうための中心国となります。ここはありがたく受け入れるべきです」
「う、うむ……サロマにまでこう言われてしまっては仕方がない」
星夜とミーコの圧に流石のディーオもタジタジのようで、最終的にはその熱意に負けたか。ディーオ的にはまだわだかまりを感じてそうだけどな。
「失礼します。陛下がこちらにいらっしゃると聞いて……って師匠!? カロフ兄ぃ達も……というかこの大所帯はどういう状況なんですか!?」
「あら、なんだか賑やかですわね」
「セフィラさん、クリファさんもおかえりなさい」
「あ、シリカ、エリーゼ。ただいま、今戻ったばかりよ」
おっと、ここでレオン達も登場だ。この様子を見る限り、歩けるようになるまで回復したみたいだな。
しっかし、レオンの言う通り本当に大所帯だなこりゃ。
なんだかまだまだ関係がぎこちない面々もいるようだが……ま、そこはリーダーで主人公たる私の手腕の見せ所ってところだな。
これが世界を救う最終メンバー。この広いアステリムにおいて私が見定めた、新時代の英雄達なのだから。
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