235話 魔神の意を継ぐ者VS精霊に選ばれし勇者


 なんだ……こいつは? 体に張り付くように密着した白い衣服に、あれは兜……でいいのかわからないが頭部を覆い表情は口元からしかわからない。

 だがそれよりも気になるのは奴の乗る異様な兵器だ。ヴォリンレクスの魔導鎧とも違う、馬車のものとは異なる車輪を前後に備え付け常に低い音を唸らせ躍動するあれはなんだ。


 ともかく、こいつから感じる気迫は先ほどの雑魚魔導師とはわけが違う。久方ぶりの強敵……ということか。


「なんだいレイ、ビビっちまってるのかい。確かにすごい気迫だけど、アタシらはもっとすごいものを沢山見てきただろ」


「……ああ、その通りだ」


 何を弱気になってるんだ俺は。そうだ、こんなものベルフェゴルや終極神に比べればなんということなどない。

 そいつらを超えると誓った俺がこんなところで怖気づくわけにはいかない!


「……お前達、この村の人間か?」


「違うよ。でもそんなことは関係ないよ、あんたがこれ以上先に進もうってんならアタシらは容赦しないよ!」


「そうか……ふむ」


 謎の男は体制を変えることなくじっくりと俺達を観察している。いや、口の動きを見るからに何かを呟いてるようだが……。

 それになんだこの気配は? サティは気づいてないようだが、俺には奴の乗るあの物体から何か別の気配を感じる。あれの中に循環する魔力のせいで上手く感じ取れないが。


「どうやら今のお前達はその村を守ること以外考えられないようだな」


「だったらどうだってんだい?」


「頭を冷やすため……少しやり合おうか」

キュィィィイイイイイン……!


 あの兵器の魔力循環が強まった!?


「サティ! 来るぞ!」


「ああ! どっからでもかかってき……!?」


……ゴォン!


 ッ……なんだ今のは!? 奴が迫ってくると認識した瞬間にはもう目の前まで近づかれていた。俺もサティも飛び退くのが一瞬遅れていたらやられていただろう。


「なるほど、この程度の一撃なら避けられるか。ならこれでどうだ?」

ギャリリッ!


 前後の車輪で円を描くように回転し方向を俺の方へ定めてくるか! どうやら方向転換のスピードはそこまで早くはないらしいが、今の俺はまだ体制が……。


「いくぞ……『零戦ゼロインパクト』!」


 魔力を帯びた兵器が加速して突撃してくる!? 避けられない……なら!


「守れ、“神器”アーリュスワイズ!」


 咄嗟にアーリュスワイズを球状に変化させ全身を守るよう対応する。いかに奴の攻撃に威力があろうと不滅の神器を貫くことは……。


ガァン!


「なっ!? この……衝撃は……!」


 俺はその衝撃に耐えられずそのまま吹き飛ばされ、覆っていたアーリュスワイズも変化が解除され通常の状態へと戻ってしまう。

 確かにアーリュスワイズは貫かれず傷一つついてはいない……だが、奴の攻撃のショックによる負荷は内部に守られていた俺にさえ届き吹き飛ばすほどだというのか。


「レイ! この……!」


「むっ……」


 サティの攻撃は当たらない。奴の直線の動きは早すぎる、普通に切りかかっただけではまず当たらない。


「大丈夫かいレイ!」


「なるほど、そのエルフを助けるために避けられるとわかってなお俺に切りかかったということか。だがあまり賢い行動とは思えないな。もしオレが反撃する術を持ち合わせていたらどうするつもりだった?」


「そんなもんは、されてから考えるよ。アタシはあんま考えて戦うのって好きじゃないからね」


 くそっ……なんてザマだ。アーリュスワイズの力を過信し、俺が守るべきサティに結局守られてるなんて……。

 なぜだ、何が足りない。どれだけ必死になろうとも求める領域には達せず、神器に認められることもない。どうして俺は……こんなにも弱い。


「そこのエルフ。お前……自身の持つ力を使いこなせていないな」


「ッ……! 黙れ! 貴様にそんなことを言われる筋合いはない!」


 奴がどれだけ早く動けようがそれは直線距離だけの話だ! だったらそれを制限すればいいだけのこと!


「術式構築、構成属性 《風》《闇》! 覆い尽くせ、『暴風結界ストームフィールド』!」


「これは……結界魔術か」


 俺の魔術によって構成された黒風は俺達と奴を囲むよう吹き荒れ半球体を形成していく。

 これでもう奴は逃げられない。この黒風を無理に突き抜けようとすればたちまち絡みつきその動きを拘束する術式を組み込んでおいた!


「サティ、直線攻撃を避けることに集中するんだ! なんなら奴自身の攻撃の勢いを利用して背後の結界に突っ込ませてもいい!」


「さっすがレイ! よーし、どっからでもかかってきな!」


「……なるほど、そういうことか」


 流石に奴もこの結界の中では迂闊に動くこともできず立ち尽くすだけ……いや、なんだこの気配は。先ほどもそうだが、奴の周囲を何か別の魔力が飛び回っている。

 それに、結界の魔力にも何か干渉された気配が……。


「お言葉に甘えて好きなように攻めさせてもらう」


「なっ……!? なんのつもりだい!?」


 サティが驚くのも無理はない。あの男、俺達に背を向けそのまま走り出そうとしているのか!?

 詳細を知らないとはいえ俺が逃がさないためにこの結界を張ったのは奴とて承知のはず。まさか、無理やりにでも突破する気か!


(だがこの結界はそれも想定済みのつくりになっている)


 この結界の一角を破壊して抜け出すことはできないこともない。だが抜け出す際に飛び散った黒風はわずかでも必ずその体にまとわりつく。そうなれば俺がそこからさらに術式を追加し直接拘束するだけだ!


ギャルルルルル!


 走り出した! このまま突っ込めば奴は終わり……。


「自身の勝ち筋しか想定して戦えない者は、得てしてそれが敗北の鍵にもなるものだ」


「バカな! まさか、『暴風結界ストームフィールド』のを走るだと!?」


 こんなことが予測できてたまるか! あろうことか奴は俺の作り出した結界を逆に利用し立体的な動きで俺達の頭上へと近づいてくるなど! 触れれば即拘束するはずの黒風も奴のスピードについていけず捉えることができていない!

 そのまま奴は俺達の頭上を通り過ぎ、あっさりと背後を取られ……。


「そう簡単に何度もやられないよ! ハァアアア……『獄炎破ゴクエンハ』!」


「これは……流石に近づけないか」


 サティを守らねば……そう考えていた瞬間にはすでにサティは新魔族の力を解放し、噴き出す炎によって奴の動きを抑えていた。


「その姿、新魔族か」


「そうだよ、なんか文句あるかい?」


「……その姿を晒すことで不都合が起こるとは考えなかったのか? もし村の住人がこの戦いを覗いてでもしたら大事になんじゃないかと」


「あるかもね。でも……そうやってためらって、そのせいで大切な人が傷つくくらいなら迷ってる暇なんてないよ。アタシはもう失わない……失わせないって決めたんだからね」


 サティの決意が、想いの強さが伝わってくるようだ。そんなサティが俺にはとても大きく、頼もしく感じられる。

 だがなぜだ、そう感じれば感じるほどサティの存在が……遠ざかっていくように思えるのは……。


「そうか……お前の覚悟は本物のようだな。ならば……エルフの少年、お前はその想いにどう応える」


「ど、どういう意味だ!」


「彼女の決意を目の当たりにしてまだ理解できないのか……。なら! わからせてやるまでだ!」


 この気迫っ! 奴はこの俺だけに狙いを絞っている!


「離れろサティ! 奴の狙いは俺だ!」


「まだわからないか! 自分の意思を自分で縛り付けていることに!」


 また『暴風結界ストームフィールド』の壁を利用し俺達の背後を取る気か! もうそれはさせてたまるか!


「狙いは……そこだ! くらえ、『烈風狙撃ウィンドスナイプ』!」


ガギッ!


「ッ……!? ホイールと車体の間に何か挟まれたか!」


 あの兵器の特徴はだいたい理解した。車輪を自動回転させ動きを加速させる構造ならばそれを止めれば動きも止まる! 石を削り出した杭を撃ち出し車輪のストッパーにさせてもらった!

 どうやら黒風に捕らえられぬよう咄嗟に壁から離れたようだが、あとはこのまま地に落ちるだけだ!


「流石だねレイ! 今度はアタシがいくよ!」


「待てサティ!? お前は迂闊に近づかないでも……」


「そこだ! 穿て『爆炎突バクエントツ』!」


 先ほど勝ちを確信して油断を取ったばかりだろうが。だが、これが決まれば奴は……。


「[wall]システム起動!」


「なっ!? あの状態から防ぐのかい!」


 どんな原理かはわからないが、飛来するサティの炎は奴が発動したあの兵器を覆う膜によって防がれてしまった。だが、奴はそのまま地面へと墜落し頼みの加速も行えない。俺達の勝機であることには変わりはな……。


「魔導エンジンのオーバーフローだ、修復を頼む」


「りょかい……です」


 なんだあの小さいのは!? 奴の後ろからひょっこり出てきたぞ!? しかもそのままあの兵器を修理し始めた。

 いや、確かに奴は常に何かを背負ってはいたようには見えたが。……しかし違う、俺が今までに感じていた違和感はあれでもない。


「オレは単独で出る!」


 なにっ!? あの兵器のおそらく操縦桿であろう部分が外れ、奴の腕にそのまま装着されただと。


「ありゃもしかしてドワーフ族かい? ま、突然のことでビックリしたけど、そいつを直されると厄介だから止めさせてもらうよ!」


 よし、あの男の標的はあくまで俺。サティがあの兵器さえ押さえればこいつの主力武器はなくなる。

 あの小さいのには悪いが少し眠ってもらう。サティのことだから子供に無茶な真似はしないだろう。


「ミーコとフローラに手は出させん! 『多目的兵装ダブルオーセブン』、銃撃バレットモード!」


「ちょっ、あぶなっ!? ま、魔導銃かい……でもいったいどこにそんなもの」


「腕のそれに仕込まれてるのか!」


 ただの操縦桿ではないとは思っていたが……だとしたら外部に飛び出るほどに突き出たあの長い杭の役割は……。


「モード突貫杭パイルバンカー。答えは出ないか、エルフの少年」


 やはり近接戦闘用の武装か。だが俺とてすでに身体強化の魔術は発動済みだ。さらにアーリュスワイズを駆使すれば近接戦闘でも後れを取ることは……。


「残念だが、お前の甘い考えは手に取るようにわかる」


「なん……だと……」


 気づいたときは奴はすでにアーリュスワイズの反応では追いつかいないほどの位置にまで近づかれ、そのまま俺は何もできないまま……。


「そのセリフを言うやつは大抵負けるから今後は使わない方がいいぞ」


ズンッ!


「がっ……はっ……!?」


 突然の腹部への衝撃に俺の体は立っていることもままならない。奴の武装の杭が俺の腹へとめり込んでいる。貫通はしていないが……この衝撃により俺の魔力は乱され結界を維持することもできない。


「レイ!? こっっっのやろおおおおおおおお!」


「むっ……くっ!」


 サティが戦っている……。俺を……守るために。

 守るのは俺の役目のはずだというのに。どうして俺はこんなにも惨めで、情けなく、弱い人間なんだ……。


「せや……さま!」


「安心しろミーコ。俺なら大丈夫だ」


「オラァどうした! かかってきなよ! アタシがレイの痛みを100万倍にして返してやるよ!」


 意識が飛びそうだ。目も霞んできた……。

 結局俺はあの時と何も変わっていないのか? 姉さんを助けられなかったあの時のように今度はサティを守れずに終わってしまうのか……。

 強くなったと、強くならねばとこれまでがむしゃらに走ってきた。すべては……大切なものを守るために……。


「なぜ気づかない、お前が強さを求めるあまり自分から大切なものを遠ざけていることに。なぜ、共に強くなろうとしない」


「共に……強く?」


 俺の隣には……サティが常にそばにいてくれた。そうだ、なぜ俺はそのことから目を背けていたんだ。

 ……違う、あいつのそばに共にいたいと最初に願ったのは俺だ。なのに俺はサティのことを守りたいと言いながら大事な宝物でもしまっておくかのように扱って……。


「レイ!? 無茶するな! ここはアタシに任せて……」


「違うサティ……共に、戦おう」


 俺はとんでもない思い違いをしていたようだ。サティのために強くなりたいのではない、俺はサティと共に強くなっていきたかったんだ。

 強さを得るために神器に認められるのではない……揺るがぬ強さを持ち得るからこそ神器を扱う資格を得るのだと。


―――――――


(……! 今……アーリュスワイズを通じて何かが俺に語り掛けてきた)


 そうか、これが……。

 だが俺にとっての真の強さというのはサティと共につかみ取るもの。それこそか……俺の進むべき道だ!


「どうやら、理解したようだな……」


 あの男はすでに修復された兵器の上に跨り兜の奥から真っ直ぐこちらを見定めている。

 おそらく、次の一撃が最後の衝突になるだろう。


 俺はゆっくりと、サティの手を握る。


「サティ……俺を信じてくれるか」


「あったり前だろ。どこまでも一緒だよ……」


 二人の魔力が重なりあう。サティの炎が俺の風でさらに勢いを増し、空へ空へと舞い上がっていく。

 もう、何も恐れるものはない。


「いくよ、アタシの全力を乗せて……『魔王怒爆炎斬マオウドバクエンザン』!!」


「大気に集いし暴風よ、その身を龍と化し我が敵を薙ぎ払え! 全開術式魔術『神風龍槍ブラストドラグーン』!!」


 そして……俺達の想いの力は一つになる!



「「合成魔王剣! 『魔神ノ息吹ゴッドブレス・ノヴァ』!!」」



 さぁ! 貴様も全力を見せてみろ!


「これがお前達の本気の想いか。ならば、俺もそれに全力で応えるのが礼儀というものだ!」


 奴の乗る兵器から膨大な魔力が溢れ出し、まるで星の輝きのように舞い散っている。それが奴自身の魔力と同調し……その手に集っていく!


「スターダスト、オーバーブースト! 魔力エンジンシンクロナイズ! システムオールクリア! GO! アクセラレーション!!」


 目にも留まらぬ加速が一筋の流星のような輝きを描き、俺達の作り上げた魔術へとその拳を……。



「  『流星拳シューティングスターナックル』  !!」



 赤き龍と流星の輝きの衝突によって巻き起こされたその衝撃は……あたり一面を消し飛ばし、お互いの力を飲み込みながら消滅していく。


ギャリリリリ……!

「相打ちか……」


 奴も機体と共に弾き飛ばされ、互いの力の消滅を確信していた。だが……!


「まだだっ! 俺は……貴様を討つ!」


「なに!? すでにオレの前に……。あの力の衝突の中を潜り抜けるなど不可能のは……いや! その衣は!」


 気づいたな! 俺はあの衝突の最中にアーリュスワイズで自信を包み、サティにここまで投げ飛ばさせていた!

 あの状況で貴様に近づく方法はこれしかないからな! これで……。


「今度こそ、決着……がっ!?」


 なんだ……急に視界がぐらついて……。いや違う……これは……。


(俺の体はもう……限界だったのか)


「レイ!?」


 俺は奴の目の前で倒れ、力尽きてしまう。……だがまだ決着ではない。俺はまだ死んでいない、そしてサティもまだまだ戦える。ここからでも俺達は……。


「……ここまでだな、お前達の強さはよく理解できた。流石は限が信頼するような人物だな。いや、お前達にはムゲンといった方がよかったか」


「なっ……!?」


「ハァ!? ちょ、ちょっと、今なんて言いやがったんだい!? ムゲンってあんた……」


「とぉーう! はーい、こっからはあたしが説明するよ! もー、星夜ったらずっとあたしに『姿を見せずに魔力の解析を頼む』とかいうんだもん。そのせいでちょっとフラストレーションたまっちゃってるんだからね!」


 こ、こいつは……精霊! なのか?

 実際に姿が肉眼で捉えられ実態を持つ精霊なんて聞いたことも……いや、あるな。

 そう、それは今回ムゲンから依頼された人物に宿っていると聞かされていた……。


「とりあえず、ちゃっちゃとこっちのエルフくんは回復させとくね。あ、星夜は怪我してない?」


「目立つ負傷はない。それと、お前が話すとややこしいことになるからここはオレが直接説明する」


「えーつまんなーい」


「……結局どういうことなんだい。アタシには状況がまったく飲み込めないんだけどね」


 サティはなんだか不服そうな表情だな。無理もないか、こいつらの言い方からしてどうやら俺達の正体を知りながらあんな戦いをさせられたんだからな。


「どういうことって言われても……あなた達ゲンちゃんのお友達でしょ? 一目見た瞬間にわかっちゃったよ。あなた達の魔力からたっくさんゲンちゃんの魔力の残滓がくっついてるもん」


「なるほど……つまり戦いの最中に俺の魔術の性質を見抜いてたのもお前というわけか」


「レイ! もう起き上がって大丈夫なのかい?」


 すさまじい回復魔術だ。いや、これは魔術の力だけではなく空気中のマナに直接干渉することで俺の魔力回路そのものに影響を与えたのか。


「むー、"お前"じゃないよ! あたしにはフローラっていうとってもプリティーな名前があるんだから。そしてそして、このあたしが宿って一緒に旅してるこの人こそがー……」


佰手 星夜はくしゅ せいやだ。こっちはドワーフ族のミーコだ。済まなかったな、試すような真似をして」


「ども……です」


「それと、フローラが宿っているのは正確にはオレではなくこの『スターダスト』だろう」


「それは間違いなのー!」


 兜を脱ぎ、その顔をやっと晒したか。そして同時に紹介されたドワーフ族の少女の名も……やはりそうか。


「まぁ別に名前なんて今更どうでも……あれ? レイ、こいつらの名前どっかで聞いたことないかい?」


「どこかも何も……ムゲンから捜索を頼まれていた人物がこいつらだろう」


「あーそっかぁ……ってええええええええええええ!?」


 思った通りサティは混乱したな。

 さて、こいつらの様子からこのまま俺達の事情を説明すれば理解はしてくれるだろう。だが、その前に……俺は聞きたいことがある。


「なぜ……俺を挑発し、試すようなことをした。そこの精霊は俺の迷いすらも見通す力があるのか」


「フローラにそんな力はない。ただ……出会った瞬間、俺の目にはお前の中に強い迷いがあると感じた」


「理由になってないな」


「迷いに振り回されて自分を見失いそうなやつを放っておけなかった。ただそれだけのことだ」


 つまり、最初からすべてこいつの手のひらの上で踊らされていたということか……。


「今回の決着はいつか必ずつけさせてもらう……」


「いいだろう。だがそれはすべてが終わってから……そうだな? そろそろムゲンがお前達をよこした理由を教えてもらうとしようか」


 この男……セイヤ、本当になんでも見通しているな。フッ、気に食わない奴だ……。


「ええっと……ムゲンがあんた達と友達で、アタシらはあんた達と戦って、それは別にわざとじゃないけどワザとで……ああもうわけわかんないね!」


「違うよー。ゲンちゃんはあたし達の友達であなた達もゲンちゃんの友達。だから皆仲良しでハッピーハッピーってこと」


「それも……ちがと……おもます」


 あちらはあちらで何やらややこしいことになっているようだ。

 とにかく、これで俺達の任務は終了だ。アーリュスワイズも俺を認め、すべてがムゲンの想定した通りに進んでいる。


 あとは、ここから戻るだけ……。


「ヒャッハー! テメェらが俺様の部下の邪魔をした用心棒かぁ!?」

「おうアニキ、あいつらですぜ……ってあれ?」

「な、なんか人増えてね?」


 ……やれやれ、そういえばいたな、こんな奴らも。俺達が勘違いしてただけだが、どうやらあれが本来の"助っ人"ということだろう。


「休んでていい。あれはオレ達で対処しておく」


「その必要はない。あの程度の連中ならこの体でも全力を出すまでもないからな」


 こうして俺達の第四大陸捜索は幕を閉じ、新たな戦いへ向け再びヴォリンレクスへと集結することとなるのだった。


「「「ほぎゃああああああああああああ!!?」」」


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