205話 “魔神”との交渉


 さて、どこから話したものか。私達の目的としては第五大陸に渡ることだが、初っ端正直にそう言っていいものだろうか。


「アタシ達は第五大陸に行きたいんだ」


 あ、言っちゃった。まぁサティはこういうのキッパリ言っちゃうタイプだからしょうがない。それに、先ほどまでのやり取りでどうやら緊張もほぐれたようだし、ここはなるべくサティの任せてみてもいいかもしれない。


「……なぜ、それを我に頼む」


 言葉は少ないが一言一言に重みが感じられ、思わず身を引いてしまいそうになる。

 だが、私達もここで引くわけにはいかない。私達をここまで送り出してくれた者達のためにも。


「第五大陸と、第六大陸の間じゃ今大きな戦いが起きようとしている。普通の手段じゃまず渡れない。だから、転移術が使えるあんたの話が挙がった……ってわけだよ」


 相変わらずしっかりと目を合わせようとはしないものの、いつもの調子が戻ってきたみたいだな。


「ふむ……別に構わん」


「! そ、そうかい……そりゃ、ありがたい」


 なんと、二つ返事でOKとは……てっきり突っ張り返されるかと思ったがこんなにあっさりでいいのか。

 そういえば、ベルフェゴルの話が会議で出た時にルイファンが「娘の頼みなら聞いてくれる」と言っていたな。あの時はルイファンの楽天的な頭による考えなしの発言のように考えていたが、あながち間違いでもないのかもしれない。


「それで、魔王ベルフェゴル……俺達が聞いたのは、あくまであんたが転移術を使え、第五大陸にも飛べるという話だけだ。できるなら、今ここでそれを見せてほしい……」


「昔、アタシを連れてノーリアスまで飛んだことがあったじゃないか……。あれが転移術……なんだろ」


 おっと……そうか、私達はあくまでベルフェゴルが転移術を使えるという噂を頼りにここまでやってきたにすぎず、まず実際に確認しておきたいという二人の意見はもっともだ。

 ただ……。


「いんや、その必要はないな。ベルフェゴルには確かに私達を簡単に転移させる力を持っているはずだ」


「なに? どういうことだムゲン。なぜ貴様にそんなことがわかる」


「そうだよ、一度体験したアタシだってまだ半信半疑だし、そもそもムゲンだってあいつの転移術を見たこともないじゃないか。なんでそんなことが言えるんだい?」


 確かに、私は今までの人生で一度もベルフェゴルに会ったこともない。

 そう、あの男には会ったことがない……だが、それ以外、ベルフェゴルという男以外の要素において私には確信を持てる理由がある。


「それは……ベルフェゴルが纏っている、神器“アーリュスワイズ”に空間を操る力、空間を飛び越える力が備わっていることを私はしっているからだ」


「なんだって!?」


「神器……お前がヴォリンレクスで俺達に説明したあれか」


 すでに数ヶ月前の会議においてヴォリンレクスに集まった仲間には神器の存在を周知させてある。ディーオにステュルヴァノフの力の実演をしてもらい、その脅威さも認識済みだ。


「あのボロそうな布にそんな力が備わってるっていうのかい?」


「ああ、前にサティが話してくれただろう。ベルフェゴルが纏っていたマントに包まれて空間を移動したと。それは私の知るアーリュスワイズの性能の一端に類似していたからもしやとも思ったが……。まさか本当に神器を所持していたとは思わなかった」


 アーリュスワイズはサティの言うように一見ただのボロボロの布だ。だがその見た目が真実の形ではない、あの布は使用者の魔力によって大きさや形を変化させる。それにペラペラのように見えて実は神器の中でも一、二を誇る頑丈さのため、使い方によっては強力な防壁にも武器にもなり得るのだ。

 加えてアーリュスワイズにのマントの内側は異空へと繋がっており、『飲み込んだ対象を異空へ飛ばす』力がある。それは所持者の知る場所に飛ばすことも可能だし、何もない無の空間へと消し去ることも不可能ではない……。


 アルフレドはこの力で自分の全身を覆い、闇の根源精霊を押さえつけることに成功した。最終決戦時に神器の力で根源精霊と完全に一体化したこともあり、あの時のあいつは私達の誰よりも強かった。


 っと、話が脱線したな。


「つまり、あの空間移動はあんた自身の力じゃなかったってことかい……」


「そうだ……我にはもとよりそんな力を持ち合わせてなどいない。我自身の力はすべて……何かを壊すことしかできぬのだからな……」


 表情や声色は変わらないものの、そう自分を卑下するベルフェゴルはどこか……悲しそうに見えた。

 サティも相変わらず顔を合わせないものの、今のベルフェゴルの言葉を聞いてうつむいてしまう。そうだったな、サティもリア達と出会う前はただ壊すことしかできず、そのことを後悔もしている。


 サティの気持ちは今、複雑なんだろうな。


「一つ聞きたい……ベルフェゴル、あんたはそれをどこで見つけた、どうやって手に入れた」


 私としても急ぎたいところではあるが、これだけは聞いておいた方がいいだろう。

 ただ、ベルフェゴルが素直に話してくれるかどうかわからないが。


「話したくないのなら、それでもかまわない」


「……あの湖だ。お前達と出会った……あの。それ以上は、悪いが黙秘させてもらう」


「そうか……いや、それだけで十分だ」


 つまり、メリクリウスのやつがあそこに沈め封印したということか。しかしあんなに見つかりやすそうな場所に隠すとは……まてよ、第一大陸の隠し研究所も面倒くさいセキュリティがかかっていたからな、もしかしたら他の神器にも何かしら条件を課していた可能性は高いか。

 あの変態のことだからまた変な制約なんだろうが……。


「おいムゲン、あれが神器で空間を飛ぶ力があるのはわかった。ならのんびりしてないですぐにでも向かうべきじゃないのか」


「そうだったね、急ぐんだろ?」


「っと、そうだったな。スマンスマン」


 元々二人は私の助っ人という立場であり、実際急いでいるのは私の個人的な理由だけなのだが、こうして真剣に強力してくれる。

 本当にありがたいことだ……。


「というわけでベルフェゴル、早速そのアーリュスワイズで私達を第五大陸の……できれば女神政権や人族主義が集まりそうな町か都市に連れてってもらえると助かるんだが」


「女神……それに人族中心の考え方を持つ者達が集まる場所か……。心当たりは……ある。そして、飛ぶことも可能だ」


 やった、本来ならこんな短期間で第五大陸へたどり着くのは難しく、さらに各大陸が紛争中の今では不可能に近かった問題をついに解決することができた。

 あとはリオウ達が魔導師ギルドを抑え、私達が女神政権の上層部を引っ掻き回せば新魔族との戦争どころではなくなるはずだ。


 魔導師ギルドか……よほどのことがない限りあいつらなら大丈夫だとは思うが、上手くやっているだろうか。


「一つ……いや二つほどこちらからも質問させてもらうが……いいか」


「ん? ああ、別に構わないが……」


 ここでこちらに対して質問か。まぁあちらとしても無償でこちらに協力するのだから、それによって何かしらの不利益が生じる可能性もなくはないだろうしな。

 こういうお互いの確認というのは大事だ。


「それで、質問とは」


「お前達は……お前はその地で何をしようとしている」


 そう、私をまっすぐみて静かに告げてくる。今回の件が私達三人ではなく私一人が主体となって動いてることには流石に気付くか。

 そして、この質問の意図はなんだろうか。確かに移動手段だけとはいえ協力する身なのだから当然の質問のようにも思える……が、それを聞いたところでベルフェゴルに何か影響があるだろうか?


 ……なんにせよ、質問に答えないという選択肢はないだろう。すべてはベルフェゴルの出方しだいだ。


「私達は、女神政権と新魔族の戦争を止めに行く……というのは建前で、人族側の“女神”に用があるだけだ。事と次第によっちゃ、それだけじゃ済まないかもしれないけどな」


 この言葉に特に嘘も偽りもない。ただ一つだけ、答えの中にベルフェゴルの認識を探ろうと意図した言い方はしたがな。


「……そうか、こちら側でなくあちらの“女神”を……か」


(この反応は……ビンゴか)


 やはりベルフェゴルは両陣営の“女神”について他の誰よりも詳しい知識を持っている。別世界から渡ってきた最古の始原族の一人だからそんな気はしていたが。

 おそらくはあのベルゼブルに近い認識は持っているはずだ。どうにかしてそれも聞き出したいところではあるが……。


「つまりお前達はベルゼブルと真っ向から対立するつもりのようだな」


「……ん?」


 何かの聞き間違いだろうか? 今ベルフェゴルは、私達がベルゼブルと対立すると言ったように聞こえたのだが。


「おいおい、ちょっとおかしくないかい? アタシらは女神政権に文句を言いに行くんだろ、ベルゼブルの奴なんてまったく関係ないじゃないか」


 私の疑問を代わりにサティが代弁してくれた。そう、その言葉の通り私達にはベルゼブルとなど対立する理由などまったくない。むしろ戦争を止めようとすることであちらへの被害を抑えようとしているほどだ。


 ……いや待て、ベルフェゴルが私の答えに反応したのは女神という部分だ。

 もしや、女神と関わること自体に何かベルゼブルと繋がるものがあるのか?


「もしやベルゼブルは両陣営の女神と何か繋がりがあるのか? それともまだ別の何かがあの男には存在しているというのか」


「そういや、以前あんたは「ベルゼブルには気をつけろ」って言ってたね。あと「アタシ達とは違う存在だ」とかも言ってたっけ? それが関係してたりするのかい……」


 私とサティが質問を投げかけるが、ベルフェゴルはそれに応えず沈黙している。いや、何かを考え込んでるようにも見える……。


「……今、我の口からはこれ以上のことを話すことはできない」


「ッ……そうかい、やっぱりあんたはそう言って何も話してやくれないんだね」


 そう言って自分との会話はこれっきりとでも言わんばかりにサティはそっぽを向いてしまう。こりゃ、親子の関係もギクシャクしたままなわけだ……。


 しかし、今自分の口から言えないとはどういう意味だ? 話すことに何か制約でもあるのか、それとも……その内容を知ること自体がマズいことに繋がるとでもいうのか。


「この話はここまでだ。次の質問にいかせてもらう」


「……わかった」


 ベルフェゴルの真意はわからない。だが、これ以上踏み込むことも今はできないしやるべきことでもないのは確かだ。

 今はただベルフェゴルの質問を聞き答えるだけだ。


「次の質問だが……これはお前ではなく、お前の仲間に対してのものとなる」


 その言葉にそっぽを向いていたサティがピクッと反応する。

 私の仲間ということはつまり、サティとレイということだ。もしかしたらサティ一人に対する質問でもあるかもしれないが。


「……」


 サティは未だベルフェゴルと向き合おうとせずだんまりを続けたままだ。だが、そんなことは関係ないとばかりにベルフェゴルは話を続けていく。


「お前達は……どうしてこの者に手を貸す」


 二人が私に手を貸す理由か……。私はそれを当然知っている……いや、もしかしたらベルフェゴルの態度からその答えは薄々は感づいている気がする。

 その口から答えを聞きたい、ということなのか。


「答える気がないのなら……無理にとは言わん」


「……ホント、ずりぃ奴だよ。自分は何も答えないくせにこっちのことは根掘り葉掘り聞いてくるんだからさ」


 そう言うとサティはくるりと振り返り、父親と再会して初めてまっすぐと向き合う。

 そして、その顔つきは私達のよく知る仲間のために戦う凛々しいものへと変わっていた。


「答えてやるよ……アタシが戦うのは"家族"のためだ。ムゲンやレイ、そして第二大陸の皆はもうアタシの大切な家族なんだ。その家族が困ってるから助ける……それ以外に理由なんてないよ」


 リアをはじめ第二大陸での様々な出会いがサティを変えた。彼女にとっての新しい"家族"との日々こそが最も大切なことだと私もレイも知っている。

 そしてそのことを、サティは打ち明けた……血を分けた実の父親へと。


「家族……か」


「ああ、アタシにはもう血のつながりよりも大切な家族ができたんだ。だから……悪いけど以前あんたに宣言した"親子の縁を切る"ことを撤回する気はないよ」


 ヴォリンレクスを出発する前、この地へ再び訪れることが決まった時、口には出さなかったがサティはまだ「もしかしたら父親と縁を戻せるかもしれない」という風に考えていたはずだ。

 しかし、結局それが達されることはなかったか。


「ならば、我が口出しできることではない。お前の自由にしろ、サティアン」


「ふん、あんたに言われなくても自由にやらせてもらうよ」


 だがどうしてだろう……先ほどよりもどこかサティもベルフェゴルも表情が柔らかくなったような気がするのは。


(気のせい……か?)


 とにかく、これでベルフェゴルの質問も終わりだ。早速転移の準備を……。


「それで、貴様の方はどうだ」


「ん?」

「あ?」


「……お、俺……か?」


「そうだ、次は貴様の番だ……エルフ族の少年よ」


 ありゃ? サティの答えを聞いたからベルフェゴルとしては満足なのかと思ったがどうやら違うらしい。

 その視線は隣のレイへと向いている。うーん……視線を向けているというよりは睨んでいる、ようにも感じるがこれも気のせいだろうか……。


 まぁそれはそれとして、肝心のレイの答えはいかに。


「俺は……守るためだ。大切なものを、大切な存在を。ただ、それだけだ」


「……そうか」


 聞きたがってた割にはなんともあっさりとした返事だなぁ。

 しかしレイのやつ、守るためか……昔大切なものを護れなかったあいつだからこその答えだな。


「さて、聞きたいことはすべて聞き終わった。早速飛ぶぞ」


「え?」

「ん?」

「なんだって?」


 ベルフェゴルがおもむろに立ち上がると、私達の気持ちの準備などまったくお構いなしに魔力を高めはじめ……。


「包み込め、アーリュスワイズよ」


「ちょま……!?」


ギュルリ!


 その言葉に応えるようにアーリュスワイズが私達を一瞬で包み込み、視界が漆黒に染まった瞬間……私達の意識は一瞬途切れることとなった。






「っぷはぁ!?」


 視界に再び光が戻ると、そこはもう先ほどまでの薄暗い古城の中ではなく、晴れ晴れとした青空と草木が茂る地面の上だった。


「ワ、ワウワウ!?(ちょ、ちょっと今何が起きたっすか!?)」


 一緒に包まれた犬も足元にちゃんといる。突然起きた出来事に驚き戸惑っているが。まぁ私も驚いたがな、あの男いきなりアーリュスワイズを使いやがって。

 しかしあの精度とスピードは流石選ばれた所有者と言うべきか。ベルフェゴルと戦いにでもなれば無事では済まないだろうな、つくづく敵対関係じゃなくてよかったと思うぜ。


「はっ!? お、俺はいったい……」


「っとと、どうやら転移したみたいだね。まったくあいつは、もちっと配慮ってもんを考えられないのかってんだ」


 お、どうやらサティとレイも無事転移してきたみたいだな。

 んで、肝心の転移させた本人はというと……。よく目を凝らせば何もない空間からマントの先がにゅっと生えると、次の瞬間には勢い良く全体が現れる。


「到着した、ここでいいのだろう」


 その中からはまるで何事もなかったかのようにベルフェゴルが姿を現し私達の前に立つ。


「つかここって言われても私達にはどこだかわから……」


 うむ、わからない……と思ったんだが。なんか目の前に白い城壁に囲まれながら白い建物が立ち並ぶ都市を目の当たりにして、なんとなくここがどういう場所なのか理解する。


「ここが、第五大陸の女神政権本拠地ってとこか」


「ワウン(というかご主人、ぼくこんな光景に見覚えがあるっす)」


 どうやら犬も私と同じ疑問を抱いていたらしい。いや、私は思い出したぞ、これに似た光景をどこで見たのかを。


「中央大陸のシント王国に似ている。なるほど、わかりやすいこって」


 都市の中心には似たような神殿も建ってるしな。これらは女神政権、そして人族主義に染まった国の特徴と言ったところか。上辺だけ白く見せて真っ黒な中身を隠す人族主義の根幹が透けて見えるようだぜまったく。


「ムゲン、あの国の方から強い魔力の反応をいくつも感じるぞ」


「新魔族との戦争のために戦力が集められてるんだろうな。魔導師ギルドの元ゴールドランクも混じってるって話だ」


 魔導師ギルドか……リオウ達が順調に奪還してくれてもここへその報告が届くには数日はかかるはずだ。だから、そちらからの援護は期待できない。


「……とりあえず、頼みを聞いてくれたことには礼を言っておくよ」


「無理に礼など言わなくてもいい。それと、ここまで来たからには一つお前に伝えておくことがある」


「ん? な、なんだい藪から棒に……」


「この国はお前の母の故郷だった」


 その驚愕の事実に当事者のサティだけでなく私やレイもビックリして声も出ない程に固まってしまった。

 つまり、サティの母は人族主義だったのか? いや、しかしサティの母親は少なくとも五百年以上は前の人間、その時もこの国が完全に人族主義に染まっていたかどうかはわからない。

 仮に人族主義だったとして、それがどうして敵対関係にあるはずのベルフェゴルとの間に子供ができて……。


(やべぇ複雑すぎて情報が足らん)


 ベルフェゴルが口下手すぎて詳しいことが一切わからず事実だけが浮き彫り状態だ。


「そして、このアーリュスワイズはお前の母……ナリーシアが死んだ時に、あの湖から現れたものだ」


「なんで……そんなこと」


「裏切り者であり多くの秘密に気付いた我はベルゼブルに命を狙われていた。だが、アーリュスワイズを手にしてから奴は我を狙うのをやめた」


「どうして今更……」


「それからは……お前の知ってる通りだ」


「どうして今更そんなこと言いやがんだ! もうあんたとの縁は切ったって言っただろう!」


 そうだ、それが事実ならどうして今までベルフェゴルはそれを誰にも伝えなかったのだろう。


「別に、アタシの生みの親の故郷がここだからって……もうアタシには関係のないことだよ」


「待てサティ、一人で行動するな。ムゲン、俺はサティのところへ行かせてもらうぞ」


 サティは怒るようにベルフェゴルから背を向けこの場から離れていき、レイもそれを追うように小走りで向かっていく。サティとしても今の気持ちをどう表現していいかわからないんだろうな。


 しかし、アーリュスワイズの出どころがあの湖だったとは。そして、現れたということは神器が自ら姿を現したということだ。

 それに……


「ベルフェゴル……あんたアーリュスワイズを手にしたらベルゼブルから狙われなくなったって言ったよな。もしかして、あんたはその理由もわかってるんじゃないか……」


 『神器』と『ベルゼブル』、この二つにいったい何の関係があるのか。これはきっと、私の前世の知識だけではたどり着けない"真実"へと繋がっている気がする。


「……その時が来るまで、我は話せない。行くがいい魔導師よ、お前にも成すべきことがあるのだろう」


 そう言ってベルフェゴルも振り返り、サティ達とは別方向に去っていく。その背中に何かとてつもない"重み"のようなもを感じさせながら……。


「あ! ちょっと待った! 一つだけ訂正してもらいたいとこがある!」


「……なんだ?」


「私はただの魔導師じゃない。これから世界を変える“魔導神”だ。そこんとこ、よろしく!」


 これ大事なことよ、この先私の存在を世に知らしめるために知名度は重要だからな。一人ひとりに布教していかんとな!


「ふっ……そうか」


 なんか笑われた気がするが……ま、今はこれでいいさ。ベルフェゴルのこれからも気になるが、今は私のやるべきことをやる時だ!


 だから待ってろよ……セフィラ!


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