153話 疑わしきは…
さてさて、あれから二日経った。どうやらカロフ達は現在ディーオの指示の下、発足したスパイ捜しについて話し合っているようだが……容疑者をルディオに限定し、徹底的にあらを探すことを決定したのはいい。
ただ疑わしいとはいえ、まだまだ確信には至らない。そこで、ここからは本当に相手に気づかれずに日々の行動を観察や家探しを行わなくてはならないという結論に至ったようだが……。
「だが相手は仮にもこの国の重役……流石に四六時中気づかれないよう観察するのは難しい……ということだな」
てなわけで私も話し合いに参加することに。現在私達は情報が外へと漏れないようディーオの私室で作戦会議の真っ最中である。
「じゃあどうすんだよ? このままじゃ八方塞がりだぜ」
「お、よい案を思いついたぞ! 仕事の見学と称してあ奴の行動を監視するのだ!」
「お、そいつはなかなかいい案じゃねぇか皇子さん。それならなんの怪しさもなく見張れるぜ」
「ド阿呆共、今更そんなことできるわけないだろうが」
相手に警戒心がなければ別にそれでも構わないが、すでに私達がルディオを疑っているということは相手側も重々承知のはず。そんな奴がボロをだすなんてよほどのマヌケでもない限りあり得ない。
「そうね……それにこの前の出来事も踏まえると、私達が彼に取り次ぐのだって難しいと思うの」
リィナの言う通りだ。カロフ達の一件であの男は私達のことを完全に"敵"とみなしている可能性が高いと考えるべきだろう。
「ぬぐぐ……じゃあどうするってんだよ。あのヤロウが怪しいのはわかってるってのにこのまま手をこまねいてるだけだってのか?」
「となれば、どうにかあ奴の近くに張り付いて行動を観察するしかないということかの」
確かにディーオの言う通り、奴がいつどこで何をしているかを観察できればいつかボロをだす可能性はなくもないが……。
「それはやめておいた方がいいでしょう。城内は常に誰かが徘徊しております。人をコソコソ追い回す怪しい行動をしていれば必ず誰かが見ており、たちまち噂となってルディオ様の耳にも届くでしょう」
サロマの的確な回答にディーオの案はバッサリと打ち捨てられる。
それに相手を四六時中追い回すにしてもこの人数じゃ限界があるという点でも問題があるだろう。
「ぬぬぬ、ではどうするというのだーっ! このままでは埒が明かんぞ!」
ディーオの焦りもわかる。せっかく次にやるべきことが決まったというのに進む道が見えずに立ち尽くしてしまうのはなんとも歯がゆいものがある。
「まぁそう焦るな。何もまったく手がないというわけでもない」
「なぬ!? それは本当かムゲンよ!」
解決策というものは思考を止めない限り必ず現れるものだ。問題は限られた時間の中でそこに辿り着けるかという話だが。
人によっては辿り着く前に諦めたり心が折れたりする場合もあるが……その点は人間性と経験でカバーするしかないな。
「だがこれ以外私もいい案が浮かんでいないからな……もう少し別の意見も欲しかったところではあるが」
「おいムゲン、いいからもったいぶらずに言えよ、その案ってやつをよ」
急かすなまったく。これでも捻りに捻ってたというのに、成功確率がかなり不安定な作戦しか思いつかなかったというのに。
しかし、そこまで聞きたいというのならいいだろう……後悔させてやるぞカロフよ。
「確かにルディオ自身の警戒心はかなり高い、それゆえ近づくことすら困難な状況と言ってもいい。だがその周りの者……つまりルディオに近しい人物に近づくというのならどうだ?」
「ん? それがどうだってんだ?」
これだけの説明ではカロフはまだ理解できないらしい。
「それって、ルディオ参謀に直接近づくんじゃなくて、誰かを通して間接的に近づくってこと?」
お、流石にリィナは気づくか。いちいち0から100まで長々と説明しなければならないのは面倒くさいので、少しでも理解してくれる人間がいるというのはありがたい。
「作戦はこうだ……まず、偶然にもルディオと親しい人間と私達の誰かが出会う。そしてたまたまルディオがその親しい人物に会いに来る」
「なんか偶然とかたまたまとか曖昧な表現が多くねぇか」
「それにただルディオ参謀と鉢合わせるだけじゃ意味がないんじゃない?」
ま、確かにこの説明だけじゃルディオの行動を監視し秘密を暴くという当初の目的には程遠い。
「そこから先は私の仕事だ。要は奴の居場所さえ常に確認できるようにさえなればいい。その点に関してこちらにはちょっとした秘策があってな」
だが秘策を使うためには相手に気づかれずに仕掛ける必要がある。そのため私以外の誰かが先の作戦を実行し、注意を惹きつけておかなければならない。
「つまり、それさえ仕掛けることができれば後は機を待つだけ……ということでしょうか?」
「Exactly(そのとおりでございます)」
「ワウ……(なんでちょっとカッコつけた言い方したんすか……)」
ってなわけで問題なのはこの詳細不明の私の秘策にこいつらが乗ってくれるかということなのだが。
「ようし! 皆ここはムゲンの作戦に乗ってみようではないか! ほかに手も思いつかんわけだしな!」
と、そんな私の不安をぶっ飛ばすかのように現チームリーダーと言えるであろうディーオがなんの反論もなしに私の案を採用する。
そして、そんなディーオに呼応するかのように……。
「しゃあねぇな、皇子さんがそういうなら俺らは従うしかねぇっての」
「そうだね、これからどうなるかまだ未知数だけど、今は行動あるのみだと思うし」
「わたくしはディーオ様の決定に従うまでです」
立て続けに私の作戦に賛同していく。カロフもセリフにしてみれば渋々といった風に聞こえはするが、声の波長や表情からはディーオへの信頼が感じられる。
これもディーオの魅力ってやつなのかね。確かに他を圧倒するようなカリスマはないものの、誰かに信用される人徳というのも王に必要なものと言えるはずだ。
あとは、ディーオ自身の自覚ってところか。
「んでよムゲン。作戦内容はわかったんだが、んな都合よく事が運ぶもんか? そもそもあのヤロウと親しい人物に偶然近づくってのがまず難しい気がすんだけどその点は大丈夫なのかよ?」
おっと、そういえばその部分の具体的な説明がまだだったな。それじゃあそろそろカロフに後悔してもらうことにするか。
「いやぁカロフくん。キミあのお嬢様となんともいい雰囲気だったそうじゃあないか……」
こうして、カロフの憤慨とリィナの冷たい視線と共に私達の作戦は開始されることとなった。
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……えーこちら中継のムゲンです。ただいま私は『
さて、この作戦の肝はまずは何であれルディオに接触しなければならないというところだ。
そしてそのために私達が用意した囮役が……。
「ったくよぉ……なんで俺がこんな役を……」
あそこでなにやらブツクサ愚痴を呟いているカロフくんでございます。
んであいつが今何をしてるのかというと……。
「ねぇムゲン君、ほんとに来るのかな」
「サロマの情報では今日この時間のはずだ」
そう、カロフは今現在ある人物が通りかかるのを待っている。
でもってそんなカロフを私はリィナと共に隠れながら監視しているという構図だ。
ちなみにディーオとサロマはお留守番だ。あまり大人数で動くとバレる可能性が増えるからな。
「ムゲンのヤロウ……俺にこんなことやらせやがって。後でただじゃおかねぇぞ……」
……あいつ、今ああしてグチグチ呟いてるのも全部こちらに丸聞こえだってのを理解してないのか……。
この作戦を遂行するにあたって、事前にカロフには私のスマホ能力の一つである[wiretap]を仕込んである。これで私達が離れていようとカロフの近くで起こった会話が私達にも聞こえ、状況の把握がより正確になるわけだ。
それなら別に[telephone]でもいいんじゃないかと思われるかもしれないが、カロフと会話をするためには通話するためのモーションが必要となってしまう上に、誤ってこちらの声が相手側に聞こえてしまう可能性も無くはない。
それに……。
「あークソ、しっかしこっからどうすりゃいいんだか。とりあえずなるようにしかなんねぇか」
カロフにはこちらから逐一指示を与えるよりも自分の思うままに行動した方がいいと判断した。
演技なんてできないだろうからな……絶対に怪しまれる。ま、何事も自然体であることが無難ってわけだ。
さて、作戦の概要についてはそんなところなのだが……肝心の目的の人物がまだ現れないな。
「サロマさんの話だと、今日の王宮内にある庭園の一つで令嬢方が集まるお茶会に参加するって話だったよね」
そうだ、そしてその時間は刻一刻と迫っている。もしかしたら来ないのでは? などとも思いはじめていたいたが……。
「む、貴様は」
突如スマホから聞きなれない声がカロフに向かって話しかける声が聞こえてくる。
私達が慌ててカロフの方を確認すると、そこには一人の女性がカロフと対峙していた。
「あれはカトレアさんね」
以前カロフと戦った女騎士だな。カロフの話ではなんだかとんでもない変態性癖があるということだが……。今はそのことについては置いておき、観察を続けよう。
「また会ったな騎士カロフよ。貴様からはこの前の案内したことの礼をもらいたいところだが……生憎と今は相手をしている暇がなくてな」
「まだ言ってんのかよ……。てかお前のご主人様は姿が見えねぇがどうしたよ?」
「わたくしがどうかしましたか?」
きたな……。カロフの質問に答えるように現れたのは、以前私達……というよりもディーオに因縁をふっかけてきたお嬢様のアリステルだ。だが、その顔は以前私が見た自信満々なものとは打って変わって憂鬱そうに見える。
やはりルディオとの一件が響いてると思っていいだろう。
さて、ここからだな……上手くやれよカロフ。
「あなたは……」
「おう、この間ぶりだなお嬢さん」
「どうしてこんなところにいるんですの。この辺りは女性のための施設が多く令嬢達以外あまり近づかない場所ですのよ。……あなた、まさかのぞき見に……へ、変態ですわ!」
「バッ……!? ちげーよ!」
おっと、そうだったんですかい。ならば私は絶対に見つからないようにしなければな……。
カロフには悪いが犠牲になってもらうしかない。
「俺はただ、あー……そう、散歩してただけだ。そうしたらたまたまこんな場所に出ちまったってだけだよ」
「……ふん、また迷子というわけですのね。よくもまあ飽きもせず彷徨えるものですわ」
おやおや、さっきまでどこか沈んだ雰囲気だったアリステルだったが、カロフと会話することでいつの間にか元の調子に戻ってるご様子で。
「けっ、こっちだって好きで彷徨ってるわけじゃねぇよ。こうしてまだぜんぜん本調子じゃないお嬢さんに出会っちまったりするしよ」
あら、カロフには今のアリステルでも以前とは調子が違っていると感じられるらしい。
「カロフってそういうとこには敏感だから……。気づいてほしいことには気づかないクセにね」
「ワン……(ご主人にはまったくない要素っすね……)」
「……」
なんだろうこの敗北感は。今私の中の何かが直球に否定された気がする。
次回から『成り上がりの獣騎士』が始まります、ご期待ください……。
※始まりません
「ちょっとムゲン君、ぼーっとしてないで」
はっ! 今一瞬変なことを考えていた気がする。いかんいかん、作戦に集中しなくては。
とにかくカロフにはこのままアリステルの足止めをしてもらわねば。おそらくもう少しで……。
「その様子じゃ、まだあん時のことを気にしてるみてーだな」
「……あなたと話などしていても時間の無駄ですわ。わたくしはお茶会に行かねばならないのでこれで失礼」
マズイ、このままアリステルにこの場を退却されてはせっかくのチャンスが無駄になってしまう。
なんとかしろカロフ!
「待てよ……そんな顔でお茶会に行くつもりか」
ここからではアリステルがどんな顔をしているかはわからないが、その一言によってカロフの隣でピタリと止まるアリステル。
「立ち直れてねーのに強がんなよ……。女同士の茶会ってもんは俺にはわかんねーけどよ、少なからず恋バナってもんをするのは知ってる」
「っ! だったらなんだっていうの!」
「あのヤロウの話題が出た時に冷静じゃいられねぇだろってことだよ」
少しづつ口論に熱がこもっていく。結果的に私達の作戦通りには進んではいるが……もう少し落ち着いてもいいんだぞカロフよ。
「別にっ……あなたには関係のないことじゃない! そうやってわたくしを罵れてあなたはさぞや気分のいいことでしょうね!」
「てめ……人が心配してやってるってのになんだその言い草はよ!」
「え……し、心配って。う、嘘ですわ! あなたはこの前の決闘に腹を立てていて、その仕返しをしているだけでしょう!」
「んな昔のことなんざとっくに忘れちまったっつーの!」
カロフの場合本当に忘れてそうだよな。
こう言っちゃ悪いが基本的にカロフはアホだ……本能のままに生きているといってもいい。まぁそれが良い結果にも悪い結果にも繋がるわけだが。
「な、なら、どうしてあなたがわたくしのことを気にするの……。わたくしとあなたは赤の他人じゃないの、もう放っておいて……」
「はっ、お嬢さんにとっちゃ他人かもしれねぇが、俺はそう思っちゃいねぇぜ。だからこそ、俺はあんたが心配なんだよ」
「え、そ、それって……」
なんだろう、これが本当にカロフなのかと疑ってしまうほど手際の良さだ。アリステルの否定的な対応にもものともしないパーフェクトコミュニケーション。
「また女性の扱いが上手くなってる……。カロフにとっては普通に話してるだけのつもりなんだよねアレ……。どうして女性がらみになると口が達者になるんだろうね……」
なんだか呪詛のように隣から呟く声が聞こえてくるので、チラッと横を見るとリィナの目に光が宿っていない……。
え、ちょっと待って、リィナこれヤン属性とか追加されないよね? こわい……。
「も、もしかして……あなたがここにいたのって、偶然じゃなくてわたくしのことを心配して……」
「あ? 何言ってんだお嬢さん?」
「ふっ、貴様も罪づくりな男ということだ騎士カロフよ」
「いやわけわかんねーよ」
「駄目よ……わたくしにはルディオ様が。でも、あの人はもう……。いいえ! でも……」
だんだん収集つかなくなってきたな。しかし今ここで私達が飛び出すわけにもいかんし。
ほんとそろそろ本命が来てくれないと……。
「おや? キミは確か殿下の……。どうしてキミのような下世話な人間が女性達の花園であるこの区画にいるのかな?」
現れた! この男、ルディオこそが我々の今回のターゲットであり、今までの行動はすべてこの時のためにしてきたことともいえる重要人物だ。
さあ、ここからが本番だぞカロフ。
「テメェこそ男だってのにここにいるじゃねぇか。その隣の女はなんだぁ……前の奴とも違うみてぇだが」
カロフの言う通りルディオの隣には女性がいることがここからでもハッキリとわかる。
ここまで露骨だとその女性がルディオとどんな関係なのか、なんとなーく察しは付くが……。
「私は特別だよ、ふふ。さて、残念だがこれ以上私がキミと話すことなど何もない。私は忙しい身なのだ、失礼させてもらうよ」
お前が忙しいのは下半身だけだと思うがな。
それよりも、予想通りというべきかルディオはまったくと言っていいほど私達と関わり合いになろうとしない。
このまま立ち去られては私が仕掛ける時間がないが……。
「お、お待ち下さいルディオ様!」
それをアリステルが静止する。この状況……アリステルにとっても聞きたいことは山ほど存在するはずだ。
「アリステル嬢? なぜここに、本日はお茶会のはずでは?」
「そ、それは……」
「ああ、そこの下民に因縁でもつけられたのかな。可哀想に……」
一見冷静を装って状況を判断してるように見えるルディオだが、あの様子から見るにカロフとアリステルの関係が気になっているな。
よし、これでルディオの注意はあの二人に集中した……私は静かに行動を開始する。
「ルディオ様! それよりも……その、そちらの、女性は……?」
「ああ、彼女かい? なに、道に迷っていたようなのでね、道案内をしてあげていたのだよ」
と、ニッコリとした笑顔で噓八百を並べ立てるルディオ。
私はサロマから聞いて知っているんだぞ……この"女性の園"の先には人があまり立ち寄らない、高位な貴族のための"そういうための部屋"があることはなぁ!
さらに、ルディオは様々な女性をとっかえひっかえしながらその部屋をしょっちゅう利用してることも調査済みじゃい!
しかもアリステルの行動時間と被らないよう注意してるということも聞いている。
「苦しい言い訳だなぁ、テメェのやってることは完璧な不貞行為だぜ」
「キミは黙っていることだな。そんな証拠など一つもないのだから」
と、いけしゃあしゃあとなんの悪気もない様子でルディオは語り続ける。
「アリステル嬢、キミならわかってくれるだろう?」
「おいお嬢さん! ここまできてまだこいつのことを信じるってのか!」
わかってる……カロフとしてはまじめにアリステルのことを心配していることはよくわかる。
だが、この構図はどう見ても男二人が一人の女性を取り合ってるように見えてしまうのは私の心が汚れているからなんだろうか……。
「なんでカロフはいっつもあんな……。わかってるけど……」
私だけではなかったようだ。
っと、そんなことよりも私はやることをさっさとやってしまわねば。どうやらあちらの事もそろそろ済みそうだからな。
「ルディオ様……一つだけ聞かせてくださいませ。あなたはわたくしを……愛してくださいますか?」
「もちろん、愛してるよアリステル」
なんと薄っぺらい"愛してる"だろうか。だが、それをどう感じるかは人それぞれだ。
しかしそれが昔感じていたものと同じかどうかも人それぞれなのだ。
「ありがとうございます、ルディオ様。では、わたくしはお茶会に行って参りますわ」
「ああ、いってらっしゃい」
そうルディオに言い残しアリステルはこの場を立ち去るように歩みを進め始める。
「お、おいお嬢さん! あんた本当にそれで……!」
「関わらないでと言ったはずですわ。もう……あなたになんて心配される所以なんてありませんもの」
その言葉にカロフも何も言えずに立ち尽くしてしまう。
彼女の顔を見たからだろう。私達も|近くで(・・・)見ていたが、寂しそうだがどこかスッキリしたような……そんな顔をしていたのだから。
(ルディオ様の言葉がこんなにも遠く感じてしまう日が来るだなんて……思ってもみませんでしたわ。でも、だからこそ、わたくしは……)
彼女が最後に何を思っていたか……そんなことは、私達にはわからないが。
「ふっ……では私もこれで失礼させてもらうよ。そうそう、殿下には子供の遊びなどやめるように言っておくのだね。ハハハハハ!」
まるで勝ちを確信したような高笑いで去っていくルディオ。そしてその後に残されたのはたった一人の亜人の騎士……だけではなく、私とリィナも一緒だぜ!
「うーっす、お疲れお疲れー。いやー名演技お疲れ様ー」
「あ、なんだ演技って? 俺はだな……!」
「演技……お疲れ様、カロフ」
こうでもしとかないと後が怖いんだよ! カロフもそこは察してるようで、だんだんと大人しくなっていく。
「でもよ……あの男への怒りは本物だぜ。あいつは許せねぇ、これは譲れねぇ」
「わかってるよ。仕方ないことだっていうのもわかる。……けど、ヤキモチは焼いちゃうんだからね」
「へいへい、埋め合わせは今度するっての」
チクショウ……作戦中だろうと作戦が終わろうとなんでこいつらはこんなにも私の心にダメージを与えてくるんだ。
「あ、それよりもムゲン、テメェちゃんと仕掛けてきやがったんだよな! 俺がこんなに頑張ったってのに失敗したじゃすまさねぇぞ」
「そんなにいきり立つな、キチンと仕掛けてきた……抜かりはない」
そう、この作戦の真の目的……。それはこのスマホから放たれる二つのアプリをルディオに仕掛けることにあった。
一つは言わずと知れた二章からおなじみの犯罪アプリである[wiretap]だ。
そしてもう一つが……。
[tracer]追跡子
消費魔力:10~100 10単位で魔力を装填し、先端からエネルギーを射出する
[map]と連動しエネルギー着弾した物体、人物を表示し続ける 表示時間は装填した魔力量に依存する
この新アプリである。……うん、例のごとくいつの間にか追加されてたよね。
しかし、使えるものは遠慮なく使うのが私の流儀。なので早速有効活用させてもらうことにした。
スマホの魔力もいつの間にか上限が300%になっていたし、たっぷりMAXまでぶち込ませてもらったぜ。
「さぁ、ここからが反撃の時間だ」
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