第4.5章

これまでのあらすじ(第1章~第4章)

第一章『ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル』


 魔人『混沌のディプス』の手によって異界と化したロサンゼルス。

 街は支配者層の住まう『ハイヤーグラウンド』と、異形と化した人間たちが暴力と喧騒に満ちた日々を送る煉獄『アンダーグラウンド』に分かたれていた。


 少女――シャーロット・アーチャー……シャーリーは、十年前行方不明になった幼馴染、エスタ・フレミングを探すため、ハイヤーグラウンドからアンダーグラウンドへと降り立つ。

 エスタを探す中で、彼女はアンダーグラウンドの異形<アウトレイス>により引き起こされた騒ぎに巻き込まれる。そんなシャーリーを偶然救ったのは、アンダーグラウンドにて街のトラブル解決を生業とする、自称”正義の味方”、『第八機関』の女たちだった。


 彼女たちの力を目の当たりにしたシャーリーは、その仕事を手伝う代わりに、彼女たちにエスタの捜索を依頼することに成功した。そして、一癖も二癖もある第八機関メンバーと触れ合ううち、とうとうエスタが発見された。

 しかし、十年という月日により、かつての幼馴染は変わり果てていた。アンダーで荒んだ暮らしを送る中で、二人の間の溝は深まっていた。

 エスタはシャーリーを拒絶し、シャーリーは絶望する。


 そんな中、『混沌のディプス』は、彼女たち二人の関係性に興味を惹かれた。

 そして、エスタを利用し、シャーリーの力を引き出すことを考えたのである。結果、エスタはディプスの用意した『怪物』に取り込まれ、街で暴れまわることになる。それは連鎖的に、街に多くの混乱をもたらした。

 かくしてアンダーグラウンドは、ディプスの狙い通り『混沌』の坩堝と化した。自らの力が及ばず、幼馴染を救えなかったことに絶望するシャーリー。しかし、第八機関は諦めず、街を救うべく奔走する。


 彼女たちの行動、言葉に勇気づけられたシャーリーは立ち上がり、エスタを目覚めさせるために行動を開始する。

 問いかけても、もはやその言葉は届かない。その時シャーリーがとった行動は、自らもアンダーグラウンドの人々と同様に、人を超えた力を持つ『異形の存在』となることであった。そして彼女は覚醒――ディプスも予想がつかないほどの強力な力を手にすることになった。そしてシャーリーと第八機関メンバーは力を合わせて街の騒動をおさめ、エスタを怪物の手から救い出すことに成功する。


 互いの気持ちを再確認したエスタとシャーリー。しかし、ディプスはさらなる企みを実行に移した。シャーリーの力が、街にさらなる『混沌』をもたらすことを期待した彼の手により、エスタはディプスの住まう混沌の時空へ幽閉されてしまう。


 ディプスは、シャーリーが力を高めていくたび、少しずつエスタの魂を開放すると持ちかける。シャーリーは激しく苦悩するが、覚悟を決める。そして、第八機関とともに戦い、いつしかエスタを取り戻すことに決める。

 その覚悟と力を認められたシャーリーは、大事な幼馴染のために、第八機関メンバーに加入することになったのだった。



第二章『フールズ・ゴールド』


 晴れて第八機関の一員となったシャーリーであったが、未だその苦悩は続いていた。果たして自分はこのまま、戦うことが出来るのだろうか。半端な覚悟でここに来てしまったのではないだろうか――。そう考えていた矢先、彼女は一人の『破天荒な女』と出会う。

 彼女の名はキーラ・アストン。ロサンゼルス市警特殊部隊の隊長であった。迷いなく自らの道を進む彼女の姿に憧れを感じるシャーリー。しかし、ある時突然キーラは、第八の事務所に殴り込んでくる。彼女は、第八機関室長『フェイ・リー』と旧知の間柄なのであった。


 キーラは、第八に『知った顔』が居ることに驚愕する。それはシャーリーであった。彼女のことを、キーラはハイヤーグラウンドで見たことがあったのだ。彼女がアンダーに来ていることを問い詰め、本当にここで戦う覚悟があるのかと詰問するキーラ。シャーリーは答えることが出来なかった。

 キーラが去った後、シャーリー達は仲間の提案で気晴らしに外出するが、そこで事件が起こる。とある悪党が、幼い少女を攫おうとしているところを目撃したのだ。すぐさま救出に向かったシャーリーだったが、『自分を信じる心』を失っていた彼女は、本来の実力を発揮できず、少女を助ける代わりに、とらえられてしまう。


 その悪党の企みとは、人質を材料にしてキーラをアジトにおびき寄せ、そこで彼女を殺害するというものだった。悪党『オデール』は、かつてキーラに恨みがあったのである。更に、彼女が単独でアジトに来ざるを得ないようにするため、ディプスの協力を得て街のアウトレイス達を『暴走』させ、街を騒乱状態に陥れたのである。


 自らの無力感に打ちひしがれ、後悔すら感じはじめていたシャーリーだったが、そこにキーラがやってきた。オデールの雇ったアウトレイスに圧倒されていくキーラであったが、彼女は『ある言葉』をシャーリーに伝える。それは、道中彼女が出会った少女の言葉だった。その少女こそ、とっさにシャーリーが救った少女だったのである。彼女からの感謝と、街のあらゆる場所で奔走している第八機関の様子を伝え、鼓舞するキーラ。


 警察も、第八と協力して戦っていた。そんな彼らの奮起に、シャーリーは再び『自分を信じる力』を取り戻す。そして形勢逆転。力を取り戻したシャーリーはあっさりと悪党を打ち倒し、その企みを打倒した。同時に、シャーリーの再起を目にし、これ以上オデールに力を貸しても無意味だと悟ったディプスは、あっさりと彼を見限る。彼はキーラにより逮捕され、街の混乱も沈静化した。仲間たちと、ボロボロの状態で再会するシャーリー。

 今度こそ、自分の信じた道――エスタを救うために戦うことを彼女たちの前で宣誓するのだった。



第三章『シンギング・イン・ザ・レイン』


 心に深い傷を抱えた第八機関メンバー『ミランダ・ベイカー』は、定期的に通っているグループセラピーで出会ったイアンという青年と心を通わせていた。

 互いに拭い去れない過去を抱えながらも、交流を深めていく二人。しかしイアンには、ミランダの知らない秘密があった。彼は街の暗部から依頼を受けて殺しを行う、

凄腕の殺し屋だったのである。そうとは知らないミランダたちに、ある日指令が下る。アンダーグラウンドにアメリカ合衆国大統領が訪問するため、その護衛をせよとの命令だったのである。


 その矢先にミランダは、イアンの裏の顔を知ってしまう。彼女を遠ざけたいあまり、激しく拒絶するイアン。それにより深く傷ついたミランダは、作戦の決行が近い中、雨の中をさまよう。同じ頃、イアンもまた、荒んだ心を抱えたまま、最後の仕事の準備にかかる――『大統領の暗殺』に。


 失意の中にあったミランダに声をかけたのは、かつて彼女の言葉に救われたシャーリーだった。喫茶店でお互いの境遇について語り合う二人。その中でミランダはなんとか再起し、任務に向かうための気力を取り戻す。『決行日』が目前に迫ったある日、イアンとミランダは、最後の逢瀬を重ね、互いの気持ちを確かめる。

 そして当日――それは簡単な任務のはずだった。街中に警察が展開していたし、他の第八機関メンバーもバックアップしていた。

 しかしその護衛任務は、ディプスの部下が行った妨害工作によって、大きく乱されてしまう。スキが生まれ、暗殺者=イアンにより、大統領が殺されるまさにその時、

彼と交戦に入ったのが、ミランダだった。異形と化し、互いの正体を知らぬまま殺し合う二人。雨の中での死闘は続き、互いに追い詰められていく。


 その中でイアンは自らの変わらぬ運命を嘆き、なかば自棄気味に戦いを続けることを決めるが、ミランダは違った。彼女には仲間が居た。もう昔の自分とは違ったのである。

 決定的なところで違ってしまっていた二人はまもなく決着する。最後の銃声が響き、その意識が刈り取られる一瞬前、イアンは、敵対者がミランダであることを知ったのだった。

 任務は成功し、アメリカとロサンゼルスが未曾有の危機に陥る事態は避けられた。

その後ミランダはイアンと出会うことはなかったが、彼女の中にもうわだかまりはなかった。どこか晴れやかな表情で、彼女は仲間のもとへ戻っていくのだった。



第四章『ゴールデンタイム・ラバー』


 シャーリーが加入してからしばらくの時が経過。第八機関は目下、金欠に喘いでいた。そこにあらたな任務が舞い降りる。

 それはアンダーグラウンドの地下で『殺人オセロ』賭博を開いているとある男を調査せよとの指令だった。その男はゲームを仕掛け、相手を敗北させることでその支配を地下から街全体に拡大しようと企んでいるのだった。巨大なマネーが動いていることを察知し、あわよくばそのおこぼれに預かれることを期待した第八機関は二つ返事で任務を了承する。


 しかしその時、予期せぬしらせがあった。それは以前から第八機関をサポートしていた『処理部隊』の人員が交代したというもの。それに伴い、新たな人員は、近頃の第八の怠慢を指摘し、今度の任務に失敗した場合は機関ごと解散するという通達をくだした。彼らが『ハイヤーグラウンド』出身であることもあってか、激しく反発するメンバーだったが、第八機関室長『フェイ・リー』は、理由も告げず、彼らの指示に従うよう告げる。自分たちのリーダーである彼女の、度を越した秘密主義に不信感を露わにする仲間たち。明らかにフェイは、自分たちの知り得ぬ多くのことを知っているにも関わらず、それを言おうとしなかったからである。


 不協和音が第八内部に響くなか、任務は実行に移される。敵のアジトへの潜入を決行したメンバーは、その動きをなぜか事前に察知され、地下に捕らえられる。

 そして自らも『勝負』に挑まざるを得なくなる。圧倒的不利な状況で勝負に名乗りを上げたのは、第八メンバーである『キンバリー・ジンダル』、通称キムであった。

明らかに勝ち目のない戦いに挑む彼女には、どうやら秘策があるようだった。しかし、彼女もはやり、他の犠牲者たちと同様に追い詰められていき、廃人寸前の窮地に立たされる。


 その時、地下アジトにフェイが合流する。キムと交代し、敵――『スキャッターブレイン』に勝負を挑む彼女。なかば投げやりに戦う彼女を疑問に思ったメンバーは真相を問う。そこで返ってきたのは、フェイの過去と関係する、仲間への切実な思いだった。


 その吐露を受けて愕然とする仲間。しかしその時彼女の説得に動いたのは、自身を第八に救われたと語るシャーリーだった。彼女の言葉に突き動かされ、フェイはそれまでの突き放したような態度を捨てる決意を固める。そして、仲間たちへの思いを新たにし、過去ではなく今を生きていくことを決意する。立ち直った彼女はスキャッターブレインを圧倒、その『秘策』により、ついに彼を倒すことに成功する。任務は成功し、敵の企みもついえた。


 しかし、今回の事件の裏側では、ディプス達によるとある陰謀が動いているのだった――。

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