第8話:人形師の戦い方



中にはもっと用心棒がたくさんいた。


「お出迎えご苦労様。だが生憎お前たちと遊ぶ時間は、ない」


ロコは右手の小指を飾る指輪抜くと、指でピンと弾いた。


「《ラール(踊れ)》」


瞬間、指輪が光り出したかと思うと、ロコの目の前に小柄な影が舞い降りた。


それはアケとそっくりな少年人形だった。少年は両手の甲から鋭い刃を出すと、突然人形とは思えないスピードで用心棒たちに向かって駆け出した。人形は体勢を低くしてたちまち彼らの足を切り次々と戦闘不能に陥れていく。


その人形の攻撃をかわしきった用心棒たちがロコに襲いかかってくる。ロコはまず一人目を軽くいなすと、その横っ腹を激しく蹴りつけた。怪力を発揮した一撃は何人か他の用心棒を巻き込みながらふっ飛ばす。


「おっと、失礼。そちらにいるとは思わなかった」


ニヤリと笑いながら挑発するように言うロコ。さらに襲いかかってくる二人目は容赦なく顔面に拳を叩き込む。


「お前はムカつく奴の顔を思い出すからなぁ、つい殴ってしまったよ」


「この…っ」


三人目は少しできる奴だった。無駄のない激しい剣撃がロコを襲う。彼はそれらを皮一枚のところでかわしながら少しずつ後ろに下がっていく。たちまち壁際まで追いつめられたロコはわずかに悔しそうな表情をした。


「調子に乗りすぎたな、小僧!さあ、死ね!!」


用心棒が大きく振り上げた剣を叩き落とす。


ガキィン。


固い音と共に用心棒の剣が砕けた。彼が瞠目していると目の前にはニヤリと余裕の笑みのロコが迫る。彼の剣を折ったロコの腕は何やら印のたくさん書かれた義手―。


「…なんてね。ふふ、その言葉そっくり君に返してやるよ。ヨイ!」


ロコの凛とした声と共に用心棒の両足を切り刻む少年人形。ロコは満足げに笑むと、呻き声に支配された玄関ホールを通り過ぎ階段を昇った。ヨイと呼ばれた少年人形も続く。


階段をあがりきって左右に伸びる廊下を見る。豪華な絨毯に壁には名だたる絵描きの絵画、趣向を凝らした壺が並んでいる。こんなに芸術品があるのにゴンドラの優雅さを理解できないとは聞いて呆れる。


「さてと、弟子二号が行ったのはこっちか…」


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