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【アルカトピアについて】

【歴史】

 アルカトピアが建国されたのは約三十年前、当時の元号が変わったタイミングである。


 当時の国は人口増加に伸び悩み、将来的に人口減少及び少子高齢化が起こるという予測への対応策に追われていた。

 当時の内閣総理大臣である白沼源造は、与野党の制止を聴かず、ある奇策に打って出た。急進的なグローバル戦略によって、各国からの移民や難民への永住許可を乱発したのだ。


 当時の国の人口の三分の二程度の永住希望者が殺到し、政府は急速なインフラの再整備を余儀なくされた。

 それまで首都に一極集中していた企業や省庁を全国に分散させ、各地方自治体の自治権をある程度認めた。いわゆる合衆国化である。

 住宅地の面積が足りなければ海を埋め立て、交通渋滞が起こる予測がされれば多くの車線のある幹線道路を造った。当時の好景気に裏打ちされたかのような公共事業の大量発注を快く快諾したのは、その当時一ゼネコンに過ぎなかった帝亜建設工業(現:帝亜重工)である。


 しかし、好景気は長くは続かなかった。泡沫の夢のように消え去り、多くの失業者を産んだのである。

 焦った政府は公共事業をさらに発注し、世話になっていた帝亜グループに便宜を図った。「今後の経済政策への優先的な干渉を許可する代わりに、それまでの工事費の支払いを免除してくれ」というものだ。(後に関与した官僚のリークによってこの事実が明らかになりかけたが、取材をした記者の死体が港から上がってきたことで有耶無耶になった)。

 その後、失業率が改善しなかったことによる内閣総辞職及び解散総選挙によって、新たに初代大統領としてハロルド・カーターが就任。彼は内閣を解体し、新たな元号として理想郷や桃源郷といった単語を組み合わせた造語である『アルカトピア』を採択。後の国民投票によって国名もそれに準ずる。


 カーター大統領は新自由主義者であり、政府の市場への介入を良しとしなかった。先の好景気からの転落は政府の経済政策の失敗だと分析し、市場が自由競争となるように敢えて放任した。

 その際、前政権と交わした契約によって、帝亜重工は当時市場の一翼を担っていた情報機器や国産車を製造していた草薙製作所や、今でも冷凍食品やインスタント食品が国内シェア65%の玉手食品(現:タマテフーズ)と共にアルカトピア経済連合(通称:亜経連)を設立。法人税と所得税の廃止を提案し、当時検討されていた消費税の実施を消費の停滞という理由から否認。その代わり、国民一人一人から定額を徴収できる『人頭税』の実行を提案。

 この改革を機に国中で数多の企業が起業され、徐々に格差と歪みを生み出しながら今に至る。


【国土】

 アルカトピアは島国である。かつて存在した本州と他の島の間は埋め立てられ、現在は一つの島となった。

 大量の人口流入に伴い、地域間格差は過去のものとなり、全地域が首都と称されるほどの統一化が進んだ。あらゆる土地は開拓と再開発が進められ、建国前に栄えていた大都市圏のベッドタウン的都市は老朽化の問題を抱えている。


【産業】

 サービス業が中心であり、農林漁業は衰退しつつある。ほとんどの食物は外国産に頼らざるを得ない現状にあり、アシタバ製薬が開発したバイオ技術やクローン技術が新たな波を起こすのではないかと期待されている。


【教育制度】

 企業の参入による競争が解禁され、義務教育は規模縮小化に進んでいる。旧時代の学歴社会的な傾向は徐々に改善されつつあるが、大企業に入るためには未だ有名大学を卒業することが求められる。


【セーフティネット】

 かつては生活保護や福祉政策も実施されていたが、人頭税の導入によって「納税義務によって手に入れる権利」という考え方が浸透しつつある。人頭税そのものが人口拡大によって低負担化したため、税を払えない人は減った。その代わり、「非納税者に生活保護を与えるな」という意見が増えた。そのため、納税者と非納税者の軋轢が発生することは多々ある。


【治安】

 約十年前までは土着のヤクザ『龍醒会』と移住マフィアの『ヴェルディゴ一家』との抗争が多発していたが、アルカトピア警察による抗争途中の一斉検挙により半ば壊滅状態に。

 現在は監視カメラの導入や表通りの清掃の徹底などで犯罪件数そのものは減少したが、薬物犯罪及び行方不明者数は依然変わらない。原因として、裏路地に屯する下層労働者や廃墟化した建造物に住むホームレスやストリートチルドレン、過去を捨てた者や社会からドロップアウトした者が集まるスラム『ガラクタ街』の存在が挙げられている。

 また、人間の願いを叶える魔物の存在が報告されているが、限られた者にしか認知されていない為に都市伝説として広まっている。

 

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