第3話 1歩
飛び出してきたはいいものの…奈央は授業中だった…!!
—オレ、アホだな。奈央に会いたいばっかりに…。その辺で時間潰すか…。
小遣い使ってねーし、服でも買いに行こう。
ファストファッションのショップに来た利斗。
「いらっしゃいませー」
—オレも中1なんだし、自分で服くらい買わないとな。
今まで、適当に親が買ってきた服着てたし。
「お客様、大学生ですか?今日はどのような感じのモノをお探しですか?」
女の店員が話しかけてきた。
「お、大人の男に見えるような服を探してまず」
—なんかこういうの照れるな…。しかも大学生とか言われた!嬉しすぎる!
「クスッ。充分大人の男性じゃないですか。今、着てらっしゃるモノも結構大人っぽいですよね。オシャレですねー」
「あ、ありがとうございます…」
—父さんのだけど…オレのコーディネートがイケてるんだな。
「こんな感じのはいかがですか?もう夏ですし、爽やかな感じのモノがお似合いかと」
「あ、じゃあこれにします」
買い物を済ませ、店を出た利斗。
「ありがとうございましたぁ」
「今の人、めっちゃかっこよくなかった?
また、来るかなー。なんか、見た目チャラそうだけど、照れてて可愛かったよー!」
「たしかにー!ギャップ萌ー!身長も高いし、言うことないねー」
店では女の店員達が騒いでいた。
—早く奈央に会いてーなぁ。でも、なんて声かけよ…。オレの事わかるわけないしなー。
「お兄さん…。お兄さん?」
「え、オレ…?」
「そう!君!今、読者モデル探してるんだけど、興味ないかな?お小遣い稼ぎにどう?バイトしてるなら掛け持ちでも構わないよ」
—モ、モデルーー!?オレが?でも…奈央にアピールできるチャンスかも…。
「夏休みだけならできなくはないですけど…」
「夏休みだけかー。もったいないなぁ…
まぁ、その間に気が変われば続けてよ!
とりあえずスナップ一枚いいかな?」
「は、はい」
カシャ。カシャ。
「とりあえず、編集部に君の事話してみるよ!連絡するから携帯番号教えてくれる?」
名刺をもらい、番号を教えた利斗。
—ヤバイ!オレ、モデルできるほど身長伸びたんだ!
なんだかんだ喜んでいるうちに、そろそろ下校の時間になっていた。
—あ、そろそろ奈央のところ行かなきゃ。
奈央の高校へ向かう利斗。
—今日は年上の女からの視線を感じる…。いつもは同年代か小学生だが。
奈央の高校の校門前で待つ利斗。
生徒達が続々と出てくる。
校門前に立ってる人だれ?
かっこいいんだけどー!誰か待ってるのかなー?
女子達が騒ぐ。
「あのー、誰か待ってるんですか?」
女子達が群がってきた。
「まぁ。2年生の…あっ!」
いつもの爽やかスマイルを振りまいていた利斗は奈央を見つけた。
奈央が蘭子とこっちに歩いて来る。
利斗と目が合うが、不思議そうな顔をして通り過ぎて行く。
「ちょ、ごめんなさい!オレ行かなきゃ」
「えー、もう行っちゃうのー!」
女子達の群れを掻き分け奈央のあとを追った利斗。
「校門にいた人かっこよかったねー!」
蘭子が言った。
「たしかに!でも、今のところ私は先輩一筋なんで!」
「はいはい…」
「な、奈央!!」
利斗が追いながら叫んだ。
びっくりして振り返る奈央。
「え、知り合い?」
蘭子が驚いてる。
「し、知らないけど…」
—やべー。とっさに名前呼んじゃったよ…。
困ってるし…。あーでも、なんか話さなきゃ。
「どこかで会いました?」
「あ、ごめん。とっさに名前呼んじゃって…。下の名前しか知らなくて…。オレの事覚えてないよね?西中の2個上なんだけど…」
—とっさに出たこの下手なウソ。やっちまったな…。名前とかどうすんだよ!バカだ。
「ごめんなさい。別の中学の人はわからなくて…蘭子知ってる?」
「西中の2個上か。でも、こんなイケメン見逃すわけないわ!名前教えてもらえませんか?」
「ほ、星野宮 リョウタです…。中学のとき、テニス部の試合で見かけて…」
「変わった名前ですね。でも、3年じゃあすぐに引退しちゃいましたもんね。わかるはずないか!」
「あははは。確かにそうだよね…」
—蘭子もアホでよかったー。
「で?奈央になんか用ですか?」
「あー、いや…そのー友達になりません?」
—絶対、断られるよー。終わった…。
「いいですよ!友達になりましょう!ね、蘭子!」
「え?初対面で?珍しいね。ま、まぁ奈央が言うならいいけど…」
「ホントに?やったぁ!ありがとう!
じゃ、またねー!」
走り去って行く利斗。
—よっしゃ!第1歩を踏み出せた!よし、この調子で行くぞ。
「ねー。連絡先とか聞かれなかったけど、いいのかな?また来る気か?」
「なんか、子供みたいな人だったね…」
「でも、珍しいじゃん!恋の相手以外を受け入れるなんて!」
「嬉しかったの!友達になってって言われて
…。初めてなんだもん。男の人って付き合ってとか、やらせてとかしか言わないもんだと思ってたから…それに…」
「あんたに欲情しない男がいたらビックリするけど、さっきの人はそんな下心ないかもね」
連絡先を知っていたので聞かなかった利斗。
でも、それが“利斗”からの連絡になってしまう事に浮かれ過ぎて気づいてない利斗でした。
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