すいりゅうさん【瑠璃】
ねえ。すいりゅうさん。
私の
ぐしゃぐしゃの顔で私に手を伸ばしてきた蜥蜴の子は、いつものように背に放るときょとんとしたあと笑みを零した。けれどそれはほんの一瞬のことで、私の鬣にぎゅっとしがみついて嗚咽を漏らす。
この子が何故泣いているのか。心の機微に疎い私でもおおよそ察しは付く。しかしその胸の内まで量ることは出来ない。私は願うだけだ。どうか笑ってくれ。
夜が明ける頃、ぽつぽつと蜥蜴の子が語り始めた。
ねえ、すいりゅうさん。
ぼくはこれからどうしたらいいんだろう。
こんな姿じゃ、きっとみんなに嫌われちゃうよ。
すいりゅうさん。
すいりゅうさんは変わらないんだね。
ぼくがこんなでも、おんなじように背中に乗せてくれるんだね。
ぼく、すいりゅうさんにも嫌われちゃうって思っちゃった。
ごめんなさい。
変わらないでいてくれてありがとう。
ぼくは何にも知らなかった。
それで、何にも分からないんだ。
ねえ、すいりゅうさん。
ぼくはどうしたらいいと思う?
山の
すいりゅうさんは、とってもきれいだねえ。
いつものようにうっとりと呟いて、しかし蜥蜴の子はいつものようにえへへと笑わない。そして、意を決したように背中の
大好き。
縋るようにぎゅっとしがみついて。
そんなに必死に掴まずとも、私は消えたりしない。お前を嫌ったりしない。
輝く冬の光は蜥蜴の子にも降り注ぐ。
お前はいつも、私をきれいだと言う。煌めく鱗を誉めてくれる。そして変わってしまった自分を醜いと言う。だが、見てみろ。
私が
煌めく藍の何と美しいことか。
蜥蜴だと思うから異形なのだ。
恥じることはない。嘆くことはない。
しかし、失うものもあるだろう。
ぼく、決めたよ。
顎髭に顔を
私はそっと蜥蜴の子の頬を撫でた。
ただ。
この子の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます