とかげくん【お父さんとお母さん】
ぼくにはお父さんとお母さんがいない。
うんと小さい頃からいなかったから、あんまり寂しいとかは思わないよ。ぼくにはおばさんがいてくれるもの。
だけどね。それは恥ずかしいことだって言う子がいるんだ。
どうしてお父さんとお母さんがいないと恥ずかしいのかな。
ぼくにはよく分からない。
なんだかおばさんを恥ずかしいって言われているみたいで、ぼくはたんびに嫌な気分になる。だから、ぼくはそう言ってくる子たちが嫌いだよ。
お父さんがいたらいいなって思うことはあるな。
肩車してくれたり、一緒に遊んでくれたりするんだって。それっていいよね。
お母さんは、どうかな。やっぱりおばさんとは違うのかな?
ぼくは、意地悪言ってくる子たちのお母さんよりおばさんの方がずっと素敵だって思う。だって、おばさんは若くてきれいだもの。それに、うんと優しいよ。
ある日神様がお父さんとお母さんを連れて来て、おばさんと替えっこしてあげるよ、って言ったら、ぼくは困っちゃうよ。
今日もうっかり町に出たらみんなに囲まれちゃった。
やーい、チビ。
やーい、貰いっ子。
ぼくより大きい子たちが何人も。寄って
初めの頃、ぼくはどうしてそんなことを言われるのか分からなくて、悲しくて泣いた。
暫くすると、ぼくはどうしてそんなことを言われるのかと腹が立って、みんなと喧嘩になった。
だけど今は、もう平気。
言いたい奴には言わせておけばいいと思う。ぼくはもう分かったから。
ぼくはとっても小さいけれど、小さいから大変なこともあるけれど、元気いっぱいだ。
ぼくは確かに貰いっ子だけど、ぼくを貰ってくれたおばさんが、ぼくは大好きだ。
チビなことも、貰いっ子なことも、悲しいことじゃない。
ぼくは幸せだ。チビでいい。貰いっ子でいい。
だから、からかわれても全然平気。
そんな子たちの言うことだから、お父さんとお母さんがいないと恥ずかしい、っていうのもきっと嘘なんだと思う。
だけど、ぼくは変わるんだ。
ちっちゃくても平気、って思ってたけど、ぼくは大きくなりたい。
大きくなって、あのひとに見つけてもらうんだ。
強くなって、おばさんを守ってあげるんだ。
お父さんって、家族を守ってくれるひとなんだって。
うちにはお父さんがいないから、ぼくがお父さんの代わりになろうと思う。だってぼくは男だからね。
そうなると、おばさんはお母さんみたいだし、うちにはお父さんもお母さんもいることになるね。
やっぱり、神様が来たらごめんなさいって言おう。
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