動乱2 今月は北町奉行所の月番で新太郎達南町奉行所は非番になっていましたが、訴訟その物を受け付けるのが代わるだけで、2日勤務して1日休みとなっており、非番の月でも
動乱2
今月は北町奉行所の月番で新太郎達南町奉行所は非番になっていましたが、訴訟その物を受け付けるのが代わるだけで、2日勤務して1日休みとなっており、非番の月でも持ち場の巡回は、
しており、休みの日でも何かあれば現場にかけつけて捜査をしていたのです、相模屋は日本橋小網町にあり廻船問屋で千石船を5隻持ち東北、大阪、四国、九州への荷運びと金貸しも、
やっており、
大店だったのです、昨日の事もあったので立寄ると、奥から相模屋の主人吉衛門が出て来て、これは新太郎様に文蔵親分どうぞ、お上がり下さいと言って奥に通すので、桟敷に座ると、
女中がやかんに入った酒を湯のみについだので、これはすまんと一口飲んで、昨日はこころずけをもろうたそうじあが済まんなと言うと、この前助けていただいて、傷がすっかり治っ、
た祝いですよと言うので、
まわりくどい事はよせ、何かを頼みたいのだろうと聞くと、これは恐れ入りますと言って、実は大阪から江戸に荷を運んでいました船が紀州沖で漂流している小船を見つけて、そばに、
行き確認しましたら、誰も乗っておらず木の箱が置いてあったのだそうです、それがこの箱ですと言うので見ると、たて一尺横一尺の杉の木の箱です、蓋を取ったので中を見ると本が、
3冊入っており、
手に取ってみると、西洋の本らしく、何語なのかはわかりません、奉行所に届けようと思いましたが、わたしが抜荷をやっている、と疑われてはいけない、と思い困っているのですと、
言うので、絵が入っているのでみると、何かの機械の図面らしいのです、キリスト教関連は禁止だが西洋の本総てが禁止されているのではない、医師の元徳先生に調べてもらおうと、
言って預かったのです、
その本をもって神田で医師をやっている元徳の診療所に行くと、あと1人を治療するので待ってくだされと言うので、座ってまっていると、治療が終り怪我人がかえると、何か御用か、
なと言うのだ、本を風呂敷包みからだして見せると、これはエゲレス語ですな、一冊は辞書と言う英語をオランダへ、又オランダ後をエゲレス語に変える手引き書ですな、もう一冊、
はエゲレスの蒸気船と船の解説書に図面ですな、
この機械が蒸気釜の図面です、もう一冊は百貨辞典と言ってエゲレスの事がすべてまとめたものです、禁制品ではありませんな、これと同じ物をたしか、蘭学者の佐久間像山先生が持、
っていたのを、みた事があります、しかし、貴重なものですどこでと聞くので、事情を話すと、それでは長崎から江戸に向かう途中で難破したのかもしれませんな、あの海域は黒潮が、
流れているそうですと言ったのです、
さつそく相模屋に戻り話をすると、そうでしたか、どうか新太郎様が処分してくださいと言うので、わかった一応与力の郷田様に渡そう、禁制品でないのなら抜荷にはならんと言うと、
お手数をお掛けしましたと紙に包んで渡すので、いらぬよと言うと、いいえ、いつもお世話になっていますと袖口に差し込んだのです、それでは失敬すると言うと、席を立ち店を出て、
文蔵昼飯でも食おうと言って、
飯屋に入ると、いらっしゃいと言うので、今日は何があるんだと聞くと、ハイ、イワシ焼き、酢蛸、味噌汁、漬物ですと言うので、小上がりに座り、それを二つと頼んだのです、袖口、
から紙を取り出して5両も入っている、ケチな相模屋にしては大判振る舞いだなと言って2両を文蔵に渡すと、ありがとう御座いますと言うので、下ッ匹の仙吉にもおすそ分けしてやれ、
と言うと、
ヘイ、わかりやしたと言ったのです、文蔵がやっぱり遭難したのですかねと言うので、こんな物を持っている奴は学者か南蛮医師だろう、長崎に勉学に行っている医師を当たってくれ、
しまった元徳先生に聞けばよかったなと言うと、先生に聞いて当たってみますといったのです、一通り巡回して奉行所に戻り、与力の郷田に渡すと、禁制品でないならそなたが処分す、
れば良いと、
中をめくって返したので受取り役宅に戻ったのです、風呂敷包みをもっているので、何ですかと聞くので、もらい物だと渡すと、広げて西洋の本ですね、これを読みなさるのでと聞く、
ので、読めるはずがないじあろうというと、元徳先生に翻訳してもらえば良いではないですかと言うので、そうじあな、元徳先生にやろうと言ったのです、兄上も少しは南蛮の事を、
学ばれた方が良いですよと言うので、
わしは勉学は苦手じあと言うと、メリケンの船が来たと言う事は、メリケン人とも渡り合わなければ、ならなくなるでしょうと言うので、そうじあな、メリケン語でも覚えるかと言う、
と、そうなさいませと笑ったのです、翌日元徳の元に行き、わしが処分する事になったので、先生に進呈しますと言うと、こんな貴重な物を書物問屋に持ち込めば一冊20両にはなる、
代物ですよと言うので、
先生に持ってもらえば、役に立つでしょう、それがしにもメリケン語とやらを、教えてもらえませんかと聞くと、そうですな、ペリーが来たと言う事は、これからはオランダ語ではなく、
メリケン語が必要になるかも知れませんな、メリケン語はエゲレス語と同じですよ、まずメリケン語から日本語に変える字引を作りましょう、それで、この本を翻訳してみますオランダ、
語から日本語の字引はありますから、
このエゲレス語からオランダ語にかえる字引があれば、簡単に作れます、二月あれば翻訳できますよ、絵は誰かに頼みましょう、写本すれば高値で売れますよ、売れたら新太郎殿にも、
おすそ分けしましょう、これで蒸気釜が作れれば面白いですよと喜んだのです、蒸気はエゲレス語ではスチームと言います、船はボートですので、スチーム、ボートが蒸気船と言う事、
になりますと言ったのです、
なる程スチーム、ボートですかと言うと、おはようはグッド、モーニング、ありがとうはサンキュ、こんばんわはグッド、イブニング、わたしはアイ、あなたはユー、行くはゴー、へは、
ツウ、元気ですかはハウ、ア、ユーとこんな所ですかと言って、紙に書いて渡したのです、これはすまんと受取り、ならば、神田に行くと言うのは、アイ、ゴー、ツー、神田で良いので、
御座るかと言うと、
ハイ、漢語と同じで動作を先に言います、日本語とは少し違いますが、漢語を読めるなら分かり易いですよ、出来あがったらお知らせしましょう、わたしも、楽しみが増えましたと言っ、
たのです、それから昨日文蔵親分が医師で長崎に勉学に行っている者を聞いていきましたが、知っている者は総て江戸に帰ってきていますよ、この本の持ち主をお探しなのでしょう見つ、
かるまでお預かりして置きますといったのです、
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