動乱

村上俊介

動乱1 太平の眠りほ覚ます蒸気船、長く続いた太平の世も、ペリーが艦隊を率いて江戸湾に姿を現した時より眠りから覚めて慌しい世の中になって来たのです、ペリーはアメリカ大統領の親書、


動乱1


太平の眠りほ覚ます蒸気船、長く続いた太平の世も、ペリーが艦隊を率いて江戸湾に姿を現した時より眠りから覚めて慌しい世の中になって来たのです、ペリーはアメリカ大統領の親書、

と開国の要求を突きつけて、来年返事を聞きに来ると言うと、帰っていったのです、幕府は動転して対策を検討しましたが、一向に結論はでなかったのです、南町奉行所、定町廻り同心、

神埼新太郎は何時ものとおり、


岡っ引きの文蔵を連れて持ち場である神田、日本橋を、巡回していたのです、ペリーが来てからは世情が不安になり、不貞な浪人者の悪さが目立つようになり、町方の捕り物の数も増え、

ていったのです、新太郎は千葉道場の北辰一刀流の目録持ちで同僚からは一目おかれ、捕り物には度々助っ人を頼まれていたのです、特に相手が浪人となると腕の立つ者もおおくへたす、

ると自分が殺される可能性があり、


30俵2人扶持の安い俸禄で割に合わない職業だったのですが、担当区域の大名や大店から付け届けもあり、比較的裕福な暮らしをしていたのです、八丁堀の役宅に住み、広さは約100坪に、

屋敷が立っており、すでに両親はなく今年20になる妹と2人暮らししていたのです、非番の日にはお玉が池の千葉道場に代稽古に行き、金寸を貰っていたのです、千葉道場にはペリーが、

来る前に、


四国の土佐から坂本竜馬と言う郷士が剣術の修行に来ており、江戸の土佐藩邸の長屋に暮らし、道場に通ってきていたのです、剣の腕も中々のもので、新太郎と立ち会えば二回に一回は、

打ち込まれる腕をもっており、歳が近いこともあり、たまには居酒屋で一献傾けることもあり、竜馬はペリーの黒船を、品川で見てからは新太郎に盛んに、剣をもってあの異人に立ち向、

かっても、


とうてい勝てないだろう、あの船は鉄で出来ており、千石船の5倍もあると言って、度々見に行こうと誘うので、見に行って、その大きさに新太郎も驚いたのです、稽古が終わり一緒に、

居酒屋で杯を傾けて、あの蒸気船はどうやって走るのだと聞くと、釜で火をたき蒸気で外についている水車を回して進むそうだ、風がなくても進めるのだぞ凄いではないか、あんな物、

を作れる技術が西洋にはあると言うことだ、それに大砲を24門も供えており、


我が国の大砲の倍は飛ぶのだそうだ、これでは戦にならんだろうと言って、来年ペリーが来たら開国せざるを得ないだろう、長州、薩摩、土佐の若い連中は打ち払うべしと気勢を上げ、

ているが、刀で勝てるはずがないと言っていたのです、幕府はどうする積もりなんだと聞くので、わしみたいな下っ端にわかるはずがない、それなら開港するしかないだろうと言うと、


そうなると異人が江戸の町を闊歩することになるぞと言うので、同じ人間だろうと言うと、色々と問題が起こり、新太郎も大変だなと言うので、それが役目だから仕方ないよと笑った、

のです、よしわしは蘭学所にはいろう、蘭学を学べば奴らに勝てる方法が見つかるだろうと言うので、剣術はどうするのだと聞くと、やめたと言うので、剣術の修行に来たのだろうと、

言うと、


わしは自費で来ているのでやめるても良いのさと言うので、江戸に自費でくるなんぞは金持ちなんだなと言うと、祖父が城下で質屋と金貸しをやっているんだ、この祖父が出してくれ、

ているのだよ、だから困らないわけだと笑ったのです、竜馬がおまえは勝麟太郎を、知っているかと聞くので、何回か立ち会った事がある、直心陰流の目録持ちだと言うと、屋敷はと、

聞くので、本所に住んでいると言うと、


蘭学にも詳しいと聞いておる、紹介しろと言うので、両国橋の近くだ、非番の日に連れて行ってやろうと約束したのです、暫くは道場には来んと言うので、何をする積もりだと聞くと、

佐久間像山と言う、蘭学者が塾を開いているそこに行ってみようと思うと言ったのです、竜馬と別れて家に帰ると、妹の雪がもう直ぐ夕餉が出来ます、湯にでも行ってくだされと言う、

ので、


銭湯に行き汗を流してサツパリして二階に座ると、銭湯の娘の鈴が上がり酒を注いで今日は非番ですねと言うので、ああ、道場で汗を流してきたと言うと、千葉道場では町人も剣術を、

習っていると聞きましたがと言うので、文蔵も習っているではないか、身を守る為の剣を教えていると言うと、女子はダメなのですかと聞くので、指南料さえ払えば誰でも教えるぞと、

言うと、でも叩かれると痛いですねと言うので、


優しく教えるから大丈夫だよと笑うと、今度行ってみます、新太郎様が教えてくれるのですかと聞くので、ああ、いいぞと言うと、ハイと言ったのです、父親の平吉が女子は剣術等、

ならわんでも良いと言うと、襲われた時の用心よ、最近江戸の町も物騒だわと言ったのです、文蔵はと聞くと平吉が目黒村の親戚の家にあっしの変わりに法事で言っていますと言っ、

たのです、


この富士湯の平吉は文蔵の父親で、長らく新太郎の父親の岡っ引きを勤めていたが、父親の引退と同時に息子の文蔵に任せて自分も引退して、家業の風呂屋に精を出していたのです、

文蔵も千葉道場に通い、町人の割りには中々剣の筋がよく、捕り物では十手で浪人と渡り合う程の腕をもっていのです、岡っ引きはお上から手当てがでるわけでは無いので、使って、

いる同心が面倒をる仕組みになっており、


必ず別の職業をもっていたのです、文蔵は実家が風呂屋の為に新太郎がわたす給金でもやっていけたのです、この頃は剣術を習う者も少なくなり、経営に困った千葉道場をみかねた、

竜馬が町人、百姓にも、身を守る程度の剣術と読み書きを教えれば、少しは良くなるだろうと提案したので、募集したところ思いのほか人が集まり、経営も順調に行き新太郎達、

師範代にもそれなりの手当てを渡す事が出来たのです、


湯を上がり役宅に戻ると、雪が夕餉の膳を出したので雪と夕餉を囲むと、膳にハマチと蛸の刺し身がのっているので、これは油が載っていて美味いと言うと、この前のお礼にと相模屋、

さんの番頭が持って来たのですと言うので、そうか、それで相模屋の怪我はと聞くと、兄上が助けてくださったのでほんのかすり傷だったそうです、もうすっかり治ったそうで、その、

お礼だと言っていましたと言ったのです、


それで相模屋さんに、乱暴を働いたやくざ者はどうなったのですかと聞くので、殺したわけではないので石川島の人足寄せ場で半年の労役についている、最初から因縁をつけて酒代を、

せびるつもりだったのさ、普通は仕方ないので少しの酒代くらい恵むのだが、相模屋はケチだから絶対に出さんのだよ、たまたま通りかかったので良いが、あのままだと刺されていた、

だろうと言うと、


それにしても、2回目のお礼ですよ、今回は、米一俵とぶり一匹、蛸一匹と酒トックリを持ってきましたよ、ブリと蛸はおすそ分けしました、と言うので、多分わしに何かを頼みたい、

のだよと言うと、ああそれで機嫌を取っておこうと言うわけですかと言ったのです、ところでそろそろお雪の嫁ぎ先を探さねばならぬなと言うと、私が嫁に行くとこの家はどうなるの、

です、兄上の嫁の方が先ですよと笑ったのです、


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