第04夜 私の夢が始まりの標になる日!

告白します。


私、真白香澄ましろかすみは、夢を愛しています。

明晰夢が得意です。(省略)

夢渡りみたいなのが出来るようになりました。(重要)

そして、シロが男の子になりました!(超超重要)



「どっちにしろ頭おかしい人よね!!」

『どうしたのだ?かすみ姫?』

「その首をかしげるのはワザとなのかな?かわいいんだけど…」

創造したバクが、創造で?それとも勝手に?進化した。男の子に。


「動物好きは罪ではないけど、ショタを好きになるのは犯罪なのよ…」

『この姿が嫌いなら、かすみ姫が創造したバクに戻ることもできるぞ』

「うーん…」

初めて見たときはじっくり見なかったが、しっかり見るとすごく女の子らしい顔立ちをした少年だった。

肌は透き通る白さで、まつげは白く長く、目の色は深海の様に濃い藍色が広がり、香澄の顔が写り込む。


「このオプションは私の創造なのかな…?」

象牙色の髪の毛から黒色のバクらしき耳と、薄い黄色い角が2本。

角の周りにモフモフのファーらしき物が生えてるが、きっとたてがみであろう。

『この生えてるのは角でなく、牙である』と、シロは主張した。


「あれ?でも、夢の中に居るときは目が赤色だったような」

『うむ。力を使う際に赤色になる習性がある。自由に行動でき、自在に力を扱える…はずなのだが』

「…なのだが…?」

『夫婦の契約には制限があるようだな…』

「夫婦になった覚えはありません」

キッパリ述べた香澄の言葉をまたスルーし、シロは淡々と語る。

『わしの本来の力を発揮できたのは、夢の中でかすみ姫がわしを信じてくれたからだ』

「納得できるような、納得できないような…」

『-信じる力は創造を超える-、であろう?』

「君、文字も読めるようになったの?生意気ね…」

がしがしっと香澄はシロの頭を撫でた。


「後、聞いて良いか迷ったけど…。君の仲間は、何故消えてしまったの?」

『ああ…夢に飲まれてしまった末路だな』

「…末路」

『わしらバク族は、人間の夢を無差別に食う。しかし、昨日の輩のように、夢が膨大すぎて食べきれず、夢に飲まれてしまう事があるのだ』

「なるほど…」


『飲まれる期間が長ければ長いほど、わしらは薄れ、そして消え行く存在になる。人の記憶と言うのはそうゆうモノであろう』

「確かに、夢は記憶の整理とも言うわね…」

『貴女方人間が夢を見ない日があるのは、バクが食べていると思って良い。見たくない夢も、思い出したくない事も、全て夢で葬ってあげよう』


その時香澄は一瞬ズキンッと頭痛が走ったが、何も気に留めなかった。


「君の仲間は、他に何人…何匹?いたの?」

『わしとかすみ姫、昨日の奴の他に、あと9匹おるな』

「私も匹扱いなんだ…。と言うか、案外少ないのね…」

『他のバク達は皆、消え行く存在となった』

「う…なんかごめん」

『貴女が気にすることはない。かすみ姫よ』

逆に頭をなでなでされた。


『かすみ姫、その書物はなんだ?』

「ん、夢占いの本かな」

テーブルの上に置かれていた付箋びっしりの本にシロは興味を示した。

「これまでに見た夢の分析をしたりとかね。私の愛用品」

『これは良い武器だな』

「武器…まぁそうね」

ふふっと笑みがこぼれてしまった香澄は、シロに勉強がてら夢占いを教えてあげた。



                        *   +   *



「――ん、あれ…いつの間にか寝ちゃったみたいね」


目覚めた先は、どこかの舞台の上だった。

両脇には赤色のカーテンが垂れ下がり、ステージの上だけライトアップされていた。

香澄が立ち上がるのに合わせて、暗がりの会場はゆっくりと明るさを取り戻していく。

「…パレ・ガルニエ?」

オペラ座の舞台、パレ・ガルニエに似たその場所に1人立っていた。

創造が既に出来上がって、自分の夢ではないことに香澄は気が付く。


「おねえさん、一緒に踊りましょう」

「…!」

黒色の蝶マスクをつけた6歳くらいの女の子が後ろから現れ、赤色の煌びやかな衣装を纏い、丁寧にお辞儀をしてきた。

舞台袖から1人、また1人と計10名の老若男女が手を取り合い登場してきた。

いつの間にか白色のドレスを着た香澄は、まるで操り人形の様に踊りだす。


「君は誰なの?」

「…………」

キラキラと光る舞台の上で無言し続ける少女と踊り、1曲の協奏曲が終盤を迎えたときそれは起こった。


――ガキィィィンッ!

けたたましく鳴り響く金属音が聞こえた方向に視線を上げると、少女はにっこり微笑み、口を開いた。

「みんな、道連れ…嬉しい」

「………ッギャア!!」

とてつもなく大きなシャンデリアが落下してきて舞台に居た全員を突き刺し、押し潰し、冷たい床に磔られた。

一緒に潰された香澄は朦朧とする意識の中、隣で踊っていた少女の顔を見た。



                        *   +   *



「―うああ!はぁ…はぁ…」

『かすみ姫…!漸く目が覚めたか…』

「私、潰されて…」

『わしは…自分の不甲斐無さに心底腹を立ててたところだ…』

「シロ…」

起き上がりシロに視線を向ける時に、つけっぱなしにしていたテレビから、今日の特集が聞こえてきた。

<密着!少女の壮絶なる過去と恐怖体験を徹底取材!>


「この子だわ…!出会った事も話した事も一切無いのに…」

『夢渡りは出会ったことが無くても、強い夢に引き寄せられ、いつの間にか他人の夢を見ることが出来る』

「なるほど…これで他のバクが囚われてしまうのね」

放映中女の子の名前が分かったが、入院中の病院にはプライバシーの問題かモザイクが掛かっていた。

「この病院…たぶん会社の近くの病院だわ…」

『行ってみるのか?』

「ええ、明日仕事終わったら行ってみる。赤石雪子あかいしゆきこちゃんに会いに…」


思い出した様に香澄はスマホを取り出し、メモ帳を開いた。


赤石雪子ちゃんの夢のタイトルは

― 舞台に上がる、キラキラおどる ―


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