第2話 魔神様はお姫様に惚れられた
「何言ってんの……?」
リグルは目の前の少女の言っていることを理解はしていた。このマリンという少女は、リグルに一目惚れした。ただそれだけなのだが……。
「よし、お父様まだ起きているわよね……。行こう」
「え……ちょ……」
「ご無事で……」
リグルはマリンに王の前に連れて行かれることとなった。兵は立場上マリンを止めることができない。
まるで、リグルを止められない天使のようだ。
力では勝てるはずなのに勝てないことをおかしく思いながらもリグルはマリンに王のもとへ連れてかれている。
お城のなかはリグルの部屋ほどじゃないものの、高級な調度品で溢れていた。これぞお城といった感じだ。
リグルは大きな扉の前に連れてこられた。ここが王のいる部屋だろう。
王に会うことに緊張などはしない。リグルは魔神で、人間なんかよりもっと高位な存在なのだから。だが、面倒くさいのだ。
マリンがリグルのことをカレだと紹介して、どう話をつければよいのだ。
リグルは人間界で楽しみたいのだから、お城に縛り付けられるのは避けたい。どうやって言い訳をして断ろうか。
「お父様、失礼します」
「……はぁ」
扉の中にいたのは比較的若い王のだった。マリンと目元がそっくりで、すぐに親子だとわかる。
マリンがリグルを連れているのを見て、兵と同じく察してくれた。
この様子を見る限り、マリンの突然の行動などは日常的に起こっていることと考えられる。姫であるマリンが護衛もなしに王都の外にいる時点でおかしかったのだ。
王はリグルのことを隅々まで見た。突然のことではあるが、マリンの連れてきた人物なのだ。
品定めをしているのだろう。
「少年、名前は?」
「リグル=ユリール、です」
「マリンとはどこで出会った?」
「王都の門で、です」
それからしばらくの間王とリグルの質疑応答が続いた。その間マリンは放っておかれた。
やっとのことで質疑応答は終わった。
「リグル様」
「お父様……どうしたの?え?」
今度はマリンが驚く側だった。
王である父親がリグルのことを様付で呼んでいる。しかも、どこか狂信めいたものを感じる。
リグルの方を見ると、気まずそうにしているのが見えた。
「……ねぇ、王様」
「私に様付など!アレクと呼び捨てください」
「いや、だからね……?」
「お父様、リグルもなんなの……?なにこれ?」
王――アレクは質疑応答をしている間に気づいてしまったのだ。マリンの連れてきた少年は神様であると。名前から推測するに、魔神だと。
そっちの知識がないマリンはわかっていなかったためこうなっているのだが。
「本当にやめてよ、アレク。オレは暇をなくしたいだけなの……。そんな目で見ないで……」
「暇をなくしたい……。なら、王立学園に行ってはどうでしょう。そこならば暇をなくすことができるかもしれません」
「学園か……悪くはない」
「すぐに手配させます。今夜はお泊りください」
成り行きでリグルは学園に通うこととなった。暇がなくなって楽しめるのならそれでもいいかなとリグルはこのとき楽観視しすぎていた。
学園こそが、暇を少しも与えず、創造神と同じように仕事に追われるようにリグルをするとはこのとき誰が予想できただろうか。
王の隣の部屋に案内されたリグルはベットに倒れ込んだ。
思いの外、マリンとアレクが個性的で疲れてしまったのだ。仕事があればこんな感じなのかと創造神をすごいと思いつつ、リグルは思い出した。
創造神にいくつか仕事を押し付けられていたのだった。
その内容を神限定の力で立体的に投影をすると、リグルはその内容を読み始めた。
読み終わったリグルは嫌そうな顔をしていた。
リグルが創造神にもらった仕事は、神子を探せというものだった。
神子というのは、神が人間との間につくる子のことをいい、神子は強い力を持つ。そんな神子は認知されることで力が安定して暴走などをしなくなる。しかし、認知をされていないと力が暴走して人間に被害を及ぼす。
本来なら神子をつくった神本人が認知をするのだが、面倒くさいといって認知することをサボる輩が時々いるのだ。
神なら神子を存在で判断することができる。創造神は誰が手が開いている神を派遣する予定だったが、ちょうどリグルが来たのだ。
リグルは役割が今はないに等しく、人間界に行きたがっている。そして、神としての力も強い。
うってつけだったのだ。
「はぁ……まぁ、いいか。学園生活を楽しもうか」
◇
天使は上司がいないということで、他の神の手伝いをしていた。これまでにも、魔神であるリグルに仕事がないため手伝いをすることはあったが、ここまで長い時間することはなかった。
天使が今回手伝っていたのは魔法神。創造神、恋愛神に続いて三番目くらいに忙しい神である。
「魔神のとこの天使ちゃん、魔神はどう?楽しそうにしてる?」
「え、魔神様ですか?今のところ何も連絡がないので、楽しくやっているんじゃないですかね」
「そう、ならいいんだ」
魔法神は安心したような表情を浮かべて、一旦止めていた手を再び動かすのだった。
その様子を不思議そうに天使は見つめていた。
リグルに昔、何があったのかを知らないから、天使は魔法神がそんなことを聞いた理由がわからないのだった。
天使にも魔法神の手伝いという仕事があるため、そうそうに仕事に戻るのだった。
◇
リグルが出ていったアレクの部屋では、アレクと教王が話し込んでいた。
「魔神様が人間界にいらっしゃったというのは本当ですかな?王よ」
「おそらく……。真偽は教王自らお確かめになられればよろしいと思いますよ」
「そうだな。学園に通われるんだろう?」
「ええ。暇をなくしたいとおっしゃっていたので」
「ほう……」
二人の会話は朝まで続いたのだった。
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