Chapter9 『行くぞ』 9-6

“闇化”が起こりやすくなる状態は、分析できているそうです。」


「そのタイミングが今なんだと思います。」


「この街に、FOTが必要な時が来た。 ということでしょう。」


「ふ~ん・・。 なるほどな。」


(夏樹は車窓に視線を戻した。)


『出来れば、このまま眠っていてくれ。』


『僕らが、失業するくらいが望ましいんだ。』


(そう思いながら、街を吹き抜ける風に乗って。

夏樹のもとに、重い気配が届く事を。 気づかずにはいられなかった。)


『感じる。』


『“闇”の気配だ・・。』


(夏樹は一層、瞳に力を込め。 窓の外の行き交う人々に注意を向けた。)


『どの人も、今を楽しんでいる。』


(鞄を持った仕事中のサラリーマン、OL達。 小さな子供の手を引く、お母さん。)


(孫と買い物するおばあちゃん。 賑やかに通り過ぎる人々を、

逃さないように。 愛しむように瞳に映した。)


『何気ない、一日が。 どんなに大切か。』


『僕は、分かっていた。』


(菖蒲は、夏樹が通り過ぎる人々を見ていると気づき。 ゆっくりと、

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