Chapter4 『不器用』 4-11

(四角い眼鏡の奥で、菖蒲の瞳が、微かに揺らめいた。)


「・・存じております。」


(菖蒲は、自分の襟元の赤いピンバッジの存在を痛いように感じた。)


「私が・・、自由に力を使えれば。 そんな心配必要ないのに。」


「くすっ、菖蒲ちゃん・・、菖蒲ちゃんのは~・・全部の~・・記憶を~・・


戻しちゃうんでしょう~・・。 それじゃあ~・・。 消したい所だけ~


消えたままに~・・


出来ないから~・・。」


「国の人に~・・力使うの~・・禁止されて~るんだよね~・・。」


(白は、トロンとした瞳で、ゆったりと話した。)


「大切な記憶を一つ~・・巻き込むのはしかたないけど~・・、


橘さんは~・・消したい


一部を消せるし~・・。 時雨さんは~・・、覚えたい一部を~・・


強く覚えられる~・・。


他の~・・執事さんたちは~・・記憶を部分操作できるのに~・・。」


(白は、菖蒲を、今にも眠りそうな瞳で見つめた。)


「よりによって~・・、何で~・・、記憶を戻す~・・菖蒲ちゃんだけ~・・。


部分操作~・・できないんだろうね~・・。 ぐぅ・・。」


(菖蒲は頭をかかえた。)


「・・っ、長い寝言ですね!」


「もうっ、本当に寝て下さいっ。///」

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