Chapter4 『不器用』 4-8

(彩もそれに続いた。)


キイッ


(少し先のバスルームの前に、部屋がある。)


(ドアを開き、彩が夏樹に微笑んだ。)


「先に診てしまいましょう。 すぐ済むわ。」


「うん。」


「これ持ってて。」


バッ


(そう言うと、夏樹は薄い上着を脱ぎ、菖蒲に預けた。)


「はい。」


パタンッ


(菖蒲は、ドアに背を向け。 二人の入った部屋の前で待った。)


(手に触れる、着ていたばかりのはずの服は、寒い日に干した洗濯物のように

まったく夏樹の体温を感じなかった。)


「大丈夫かな? 夏樹様・・。」


「このところ、調子が悪いのでしょうか。」


(菖蒲は、ゆがんだガラス窓から見える、緑の森と、

青い空を見上げた。)


「・・心配しなくて・・大丈夫だよ・・。」

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