Chapter2 『窮屈な日常』 2-10

(説得できないとわかり、ふてくされて、受付カウンターへ足を向けた。)


***


「「おはようございます、夏樹様! 彩先生。」」


(受付カウンターの、受付嬢。 カスミとスミレの双子が笑顔で迎えた。)


「おはよう。」


(明るい気持ちになり、夏樹も微笑んだ。)


「すぐにお屋敷に向かわれますか?」


「新しい空間の扉を手配いたしますか?」


「いや、苦手だから、少し遠くても、いつもの緑の道から歩いて行く。」


「「かしこまりました。 聖様にお伝えいたします。」」


(フロアの空気が、先ほどより少し温かくなったような気が、カスミとスミレにはしていた。)


(夏樹が訪れたからだ。 なぜかわからないが、黒服の執事と、灰色のスーツの男性たちであふれたフロアで、そこだけがより強く、朝の光を集めているような気がした。)


「夏樹様、今日も素敵でいらっしゃいます。///」


「いつも綺麗でいらっしゃいます。///」


(それより、二人の、そろいの桜色のスカーフを首元に飾り、水色のブラウスを身につける様子が、春を思わせるようだと夏樹は思った。)


「僕が? こんな格好なのに、何言ってるの。」

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